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神様の遊戯盤の上で  作者: 赤葉忍
Final stage 『To be continued?』
102/110

再び起こる『キセキ』

ちょっと遅くなったね!ごめんね!!

 フローラ達の前に立ち塞がるのは、相変わらず仮面でその表情を伺うことの出来ないエンキ。しかし、何となく雰囲気でエンキがかなり余裕をみせていることは分かる。実際、先程の襲撃でフローラ達はエンキに着ず一つ付けることが出来ていないのだから、この余裕はある意味当然のものだといえよう。

 その上、エンキはあのムイムイに、フローラ達に対する殺意を抱かせた。これで、実質フローラ達はエンキとムイムイ、二人を相手にして戦わなければいけなくなってしまった。


『はっはっは! さあムイムイ、お前の手でこいつらを全員殺してしまえ!』


 エンキが再び高笑いと共にムイムイにそう呼びかけ、全員が警戒態勢をとる。しかし、予想に反し、ムイムイが動くことはなく、濁った瞳で宙を睨み付けるだけで何も行動する気配がない。


「一体どういうことなの? 確かさっきムイムイはエンキに殺意を与えられていたよね? あのムイムイなら真っ先にこっち殺しに来ると思ってばりばり警戒していたんだけれど⋯⋯」


「いや、確かにムイムイはエンキに殺意を与えられてはいるのだろう。だが、彼女は今自分の中の殺意を必死で抑え込んでいるのだと思われるよ。ほら、あの手を見たまえ」


 ラモーネがぽつりと漏らした疑問に、シャーロットがムイムイを指さしつつそう答える。そして、確かにムイムイは自分の中の衝動を必死で抑え込むように拳をギュッと握りしめていた。


「エンキの能力では、殺意を与えることしか出来ない。つまり、ムイムイが我々⋯⋯特にクロとクリスタに抱いている感情、親愛や友情といった感情を消すことは出来なかった。ムイムイは決してエンキに操られているわけではない⋯⋯シャーロット・ノックスはそう推理する」


 シャーロットのその推理を聞いたクロとクリスタは、お互いに顔を見合わせて頷くと、クロがクリスタの車椅子を押して皆の前に進み出た。


「⋯⋯ムイムイは、私とお嬢様で何とか正気に戻します。ですから、他の皆さんはエンキに集中してください!」


「ちょーっと待ってよクロちゃん! 二人が戦うっていうのなら私も協力しちゃうよ! あの時と同じようにね!!」


「⋯⋯それでは、僭越ながら私も加わらせてもらえると嬉しいですね。先代の遺志を守るためにも、ここは戦うべき時でしょう。ただし、今度は一人も死なせません。勿論、ムイムイを含めて⋯⋯!」


 クロの言葉に、自分たちもムイムイと戦うと言い出したのは、過去に共闘し、ムイムイと戦ったことのあるメアリとロロだった。ロロに関しては実際にムイムイと戦ったのは先代のロロだが、頼もしい同士の協力をクロも喜んだ。


「それは助かります! それでは、まず⋯⋯ムイムイ、私はこっちです!! 殺すなら、まずこの私から殺しなさい!!」


 クロは、ムイムイの注意をひくため、わざと大声でムイムイにそう伝えるクロ。すると、クロの声にはっと反応を示したムイムイが、ハサミを構え、猛スピードでクロの元へと向かってくる。


「え、ちょ、なんか凄い殺意むき出しなんだけれど大丈夫なのこれ!?」


 思わず口調を崩し、全速力で逃げるクロ。メアリとロロも必死でその後を追う。クリスタを押しながら逃げるクロの負担は半端ないだろうが、おかげでフローラ達はエンキ一人に集中することが出来るようになった。


『ちぇ、つまんないなー。理性を失って大暴れしてくれるのを期待してたのに、とんだ期待外れってわけか。使えない奴ってホントとことん使えないよねー』


 はぁ⋯⋯とわざとらしくため息を吐くエンキに、フローラが無言で斬りかかるも、その攻撃はまたしてもエンキには届かない。


『だからぁ~お前らじゃ私に指一本触れることはできないんだって⋯⋯って、ん? これは⋯⋯』


 エンキの周囲を滝のように流れ、渦巻く金色の糸⋯⋯いや、無数の髪の毛。たちまちにしてエンキの視界は金一色に染め上げられ、凛とした声だけがエンキの耳に届く。


「攻撃が通じないなら、結界ごと閉じ込めてしまいますわ!! 『髪縛り・”塊”』!!」


 ペトラは、自分の操ることのできる髪の毛ほぼ全てをもって、巨大な球状の塊の中にエンキを封じ込める。


「さすがだなペトラ。シャーロット・ノックスはこの隙にエンキの像の場所をギフトで探るとしよう。誰か手伝う気のある者は?」


「はいはーい! じゃあスターちゃんも一緒に探すよー!!」


「⋯⋯正直不安しかないのだよ」


 エンキの視界がふさがっている隙にと、シャーロットとスターは像がある場所を探しに向かう。シャーロットとスターの二人は、見るからに怪しげな扉を破壊し、その中へと入りこんでいった。

 そして、同じ頃、クロたちもフローラたちの視界から消える。まるで空間が捻じ曲げられたかのように、その姿が見えなくなったのは突然であった。


「ふ、フローラ⋯⋯、これ以上は、流石にもう⋯⋯!!」


 ペトラが苦し気にそう訴える。その額からは汗が流れ出ていて、相当必死でエンキを抑え込んでいるのが分かった。


『⋯⋯宣告。「破壊」を、与える!!』


 吐き捨てるように紡がれたその宣告により、エンキを封じ込めていたペトラの髪の毛の塊がパァン! と音を立てて粉々にはじけ飛んだ。そのショックにより吹き飛ばされたペトラは、自慢のドリルヘアーまで破壊され、ショートカットになってしまっていた。しかし、慌てて駆け寄ったロロによる治療で、すぐに元に戻り、立ち上がるペトラ。その様子を見てほっと息を吐くフローラであったが、エンキから感じられる敵意が急速に膨らむのを感じてはっとエンキの方を振り向く。


『だーかーらー⋯⋯何をしても無駄なんだってば。お前ら、いい加減⋯⋯さっさと死ね。宣告、お前らに、「破滅」を与え⋯⋯』


 しかし、エンキがその宣告を行うことはできなかった。何故なら、その途中でエンキの胸に深々と剣が突き刺されたのだから。


『⋯⋯は?』


 思わずそう声を漏らすエンキ。その視線の先には、先程までとは明らかに異なる雰囲気をまとった少女⋯⋯ナナの姿があった。


「⋯⋯神殺し、それは、『キセキ』が起こらなければなし得ない行為でしょう。しかし、私にはそれが出来る。なぜなら⋯⋯私が、『キセキ』そのものなのだから!!」


 

次回は、クロチームside、シャーロット&スターside、フローラsideの三つに分かれて話を進めるよー。

え、なんでこいつら同じ空間に居るのにばらばらに戦っているのかって?

⋯⋯それはほら、あれだよ。エンキがいろいろ空間いじって変な感じにしてるんだよ!!決して、大人数での戦闘書くのが面倒だから分散させたとかそういうのじゃないから!!

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