エピローグ
ペトラ「いよいよ最終回ですわね。」
パトリシア「はてさて、どのようなラストを迎えるのか、楽しみですね。」
ララ「どんなラストでも、アンと一緒なら怖くないよね!」
アン「博士ー!ファッキンラブデス!」
ルージュ「おめえら、最後まで暑苦しいな!」
スクリーム「キャプテン、うちらもハグとかするっすか?」
キスカ「ソニアはどうです?」
ソニア「誰が貴様とハグなどするか!この悪の化身め!成敗してくれる!」
ペトラ「ああもう!最後まではちゃめちゃですわね!」
パトリシア「それがいいのではありませんか。あ、それでは、本編スタートですよ。」
フローラが目を開けた時、そこは七日前と同じ一面中が真っ白な空間だった。そして、目の前には、あの時と同じように仮面を被った神がその不気味な仮面の顔でこちらを見つめており、そして・・隣には、こちらもまた仮面のように無表情のピティーが立っていた。
「神・・これはいったいどういうことですか?なんで、一日目に脱落したはずのピティーが生きているんですか?」
フローラは、早速その疑問を神にぶつける。その問いに対する神の答えはなんともあっさりとしたものだった。
『え?ああ、あれ、嘘だよ。』
「・・は?」
フローラは、あまりにもあっさりとそう答えられてしまったため、思わず間抜けな声が出てしまった。そんなフローラに対し、神は呆れたように大きなため息をつく。
『はあ・・ほんと、君たちって間抜けだよね。ちょっと血が飛び散る映像を見せただけで、勝手にピティーが死んだと勘違いしてくれるんだもん。まあ、四日目に脱落者のアナウンスがなかったのに私からのお仕置きがなかったから、ララは少しおかしいってことに気付いていたみたいだけれどねー。』
「いったい何のためにそんなことを・・!?」
フローラが未だ混乱している中、今度は、神はフローラをあからさまに馬鹿にしてきた。
『え!?そんなことも分からないわけ?そんなの、ゲームを面白くするために決まってるじゃーん?他人を殺さないと自分が死ぬって思っていた方が、皆もやる気になってくれるし。』
フローラは、神のそのあまりにも身勝手な理由に戦慄した。そして、ピティーの脱落が殺し合いゲームの火付けが目的なのだとしたら、つまりピティーは・・
『薄々感づいているとは思うけれど、ピティーは私が造り上げた人形。つまり、最初からこっちサイドだったってわけ。あ、言っとくけれど、一日目に言った、ピティーの能力が身体を透明にする能力だっていうのだけは、本当だから、信用してくれていいよ~?』
いったいどの口がそんなことを言うのか。しかし、神にもう嘘をつく理由はないので、この情報は真実の可能性が高いと思える。
フローラは、初日にピティーにペアの申請をした時、ピティーに言われた言葉を思い出していた。『私は、戦うつもりはないし、その必要もない。』ピティーはそう言っていた。あの時はその言葉の意味がよく分からなかったが、ピティーが最初から神の手先だと分かれば納得できた。
「・・すいませんマスター。参加者を殺してはいけないと勅命を受けておきながら、姿を見られたため魔物に食い殺させるという手段をとりました。」
その時、それまで黙っていたピティーが急に口を開いた。フローラは、ピティーが喋ったことよりも、その内容に驚いて言葉を失った。この子は、いったい何を言っているんだ?なんでもないような顔でとんでもなく残酷なことをしている。
『いや、それは不可抗力でいいっしょ!ララに姿見られるとは私も予想してなかったし、おかげで面白いものも見れたしね!何回かこのゲームをやってきたけれど、あそこまで惨い死に様は久しぶりに見たよ!』
そして、それに対する神の反応も、とても正気とは思えない。フローラは、我慢できなくなり思わず声を張り上げていた。
「・・お前たちは、いったい私たちのことを何だと思ってるんだ!」
そんなフローラに対し、神はまるで当然のことを口にしているように、自然な口調でこう答えた。
『何って・・ただの遊び道具?それ以外に何か君たちを表現する言葉がある?実際、君たちはこの七日間、ずっと私の遊戯盤の上で遊ばれていただけに過ぎないじゃないか!』
神のその人を人とも思わない言葉に、フローラはただただ唖然とした。いや、実際神にとってはフローラたちなど本当にただのゲームの駒にしか過ぎないのだろう。
そして、神はそんなフローラを見て、なぜか突然笑い声をあげた。
『それにしても、君たちペアは本当に見ていて滑稽だったよ!二人で生き残った後の話とか始めちゃってさ!ピティーがいるから、最初から一人しか生き残ることができないのにね!あはははは!そうなれば、最終日のアナウンスの時にどっちかをお仕置きしてあげようとか考えていたけれど・・良かったねフローラ!そうなっていたら、君が死んでいたかもしれないよ!パトリシアには感謝しないとね!』
神のその言葉に、フローラの視界は一瞬で怒りにより真っ赤に染め上げられた。
フローラは神に手を出したら不味いのではないかとかそんなことを考える余裕もなく、怒りの雄叫びと共に神に飛びかかる。
しかし、フローラの振り上げた剣は、神に当たる前に目に見えない壁のようなモノに阻まれ弾かれてしまう。
『アハハハハ!無駄無駄!人間ごときが神に触れるわけないでしょう?』
フローラは、神の言葉を無視し、ひたすら剣を振り続けた。その度に、剣は弾かれ、フローラの手には次第に血が滲んでいく。
フローラは、とうとう剣を捨て、拳を血で染めながら、見えない障壁を殴り始めた。
「お前だけは・・!お前だけは、絶対に許さない・・!殺してやる!」
『いやー、実に激しい怒りだね~?初日の君からは想像もつかない激情だよ。』
神は、フローラの怒りの叫びにも全く反応する様子すらなく、余裕の態度を崩さない。怒りの言葉を叫びながら、ひたすら障壁を殴り続けるフローラを見て、ピティーが腰に提げた棍棒に手をかけた。
「マスター。あの無礼者を始末いたしますか?」
『いや、その必要はないよ。彼女は一応このゲームの生存者だし、敬意は払っておかないとね~。』
フローラは、自分の拳の骨が砕けてもなお、必死の形相で神に殴りかかろうとしていたが、一時間弱ひたすら殴り続け、そのダメージで全身がボロボロになったところで、とうとう力尽きて倒れこんでしまった。そんなフローラを見て、神が呆れた声を出す。
『ようやく力尽きたのか。いい加減邪魔臭くなってきたし、そろそろ帰ってもらおうかな?』
神はそう言うと、倒れこんたフローラに無造作に手をかざす。すると、フローラを囲むようにして、光り輝く魔方陣のようなものが表れた。
フローラは、その間も、じっと逸らすことなく神の目を睨み付けていた。そんなフローラに、神が話しかける。
『さあ、そろそろお別れなわけだけど、何か言いたいことはあるかい?』
神にそう問いかけられたフローラは、吐き出すようにして神に言葉をぶつけた。
「私は、絶対に諦めない・・!必ずお前を引きずり下ろして、この手で殺してやる!人間の力を舐めるな!」
『そ。じゃあ頑張ってね。』
神はフローラの魂の叫びに、軽い調子でそう返し、パチンと指を鳴らした。その瞬間、フローラの身体は眩い光に包まれ、白い空間には神とピティーだけが残されたのだった。
▼▼▼▼▼
フローラが参加したあの殺し合いゲームが終了してから、二年の月日が経過した。
あるさびれた町の一角で、突然地面が輝き始め、その光が収まった時、そこには両手を地面に付き泣き崩れる一人の少女の姿が表れた。
少女は、何もない空間に向かって手を伸ばし、一人慟哭する。
「うう・・!皆、皆死んでしまった!あいつのせいで・・あの、ふざけた神のせいで・・!」
しばらく、そうして泣き続けていた少女であったが、七日間の殺し合いゲームですっかり鍛えられた聴覚が、猛スピードで近づいてくる八人の足音を捉えた。
少女が慌てて顔をあげた時、そこには既にフードを被った謎の集団が、少女を取り囲んでいた。
そして、そのうちの一人が、少女の方にゆっくりと近づいてくる。少女にあと一歩で触れられるという距離になったところで、その人物がフードを脱いだ。
驚くべきことに、フードの中身は女性だった。少女は、その女性を見て、思わず構えていたナイフを落としてしまう。目の前の女性は、それくらい強い衝撃を少女に与えた。
その女性は、別に物凄い美人というわけではなかった。顔も髪の毛の色も、どこにでもいる平民のそれだった。しかし、まずその髪形が変わっていた。女性は、まるで貴族のような巻き髪をしていたのだ。本来なら、平民の彼女には似合わないはずのその髪形は、なぜか少女に違和感を与えることはなく、むしろ魅力的に感じていた。
そして・・何よりも、その瞳。彼女の瞳は、内に物凄い信念を宿していることを象徴するように、ギラギラと強い光を放っていた。その瞳のあまりの力強さに、見つめられた少女の身体が震えるほどだ。
女性は、少女に向かっておもむろに手を差し出す。そして、戸惑う少女にこう告げた。
「私の名前は、フローラです。そして、ここにいる私を含めた八人は、貴女と同じ殺し合いゲームの生存者。通称『人間同盟』です。もし、貴女に神を殺す意志があるなら・・私の手を取り、共に戦いませんか?」
フローラと名乗ったその女性の問いかけに、少女はゆっくりとその小さな手を伸ばした。
ピティー
身体能力 4
知力 2
社会性 1
運 1
能力の強さ 2
ギフトの能力・・身体を透明にできる。
フローラ
身体能力 2→4(二年後)
知力 3→4(二年後)
社会性 2→4(二年後)
運 3
能力の強さ 1→4(二年後)
ギフトの能力・・地面から少しだけ浮くことができる(正確には、自分が足場と認識したものから浮くことができる能力。)
これにて、ファーストステージは終了です。キャラの解説や裏話などは、後程活動報告にてあげる予定です。




