ショートケーキ裁判
「ただいま~」
私の名前はチカ。市内の高校に通う高校一年生。バスケ部に所属。
(今日も部活、きつかったなあ、お腹減った~)
玄関で靴をぬいで、そのまま台所へ直行する。ジュースジュース、っと♪
「…ん?」
ダイニングテーブルの上に、お皿にのったショートケーキがひとつ…
ママは…いないみたい。お姉ちゃんは二階で受験勉強中だろう(玄関に靴があった)
…食べ盛りの女子高生の前に、こんなもの、あったら、
食べるに、決まってる
「ぱくぱく…うん!美味しい~♪」
「美味しかった…苺も甘かった~♪」
きれいに食べ終わると、玄関の方からママの声がした。
「もう、となりの奥さんたら、話し出すと長いんだから…」
「あら、チカお帰り」
「うん、ただいま」
「ほんとにもう、回覧板届けにいっただけなのにねぇ」
「…?あれ、テーブルの上にあったケーキがない…!」
さて…
「チカ、あなた、ひょっとして、食べちゃった?」
むう…ここで素直に白状しても良いのだけれど、
「ううん、何を?」
しらばっくれた。あわよくば、またおやつが貰えるかもしれない…
確かにショートケーキは美味しかったが…私はお腹が減っている。
「お姉ちゃんじゃないの~?私、今帰ってきたばっかだし」
お姉ちゃんのせいにしよう。
「ふーん、ユカちゃんかねぇ…」
大丈夫だ、証拠は残してない。口周りのクリームだってきれいになめとったはず。
ばれてない、はず
というわけで、お姉ちゃん召喚。
「なに~?私、受験勉強で忙しいんだけど」
「ユカちゃん、テーブルにあったケーキ食べた?」
「ハア?なにそれ?食べてない、ってゆーかケーキ?超食べたいんだけど」
…そりゃあ、そうだよね。そう言うよ。食べたの私だし。
「変ねえ…でも誰かが、ていうか、怪しいのはここにいる2人しかいないんだけど」とママ。
「お姉ちゃん食べたんでしょ。ケーキ好きじゃん」と何食わぬ顔でつつく私。
「そりゃ好きだけど、帰ってきて今までずっと二階で勉強してたから、知らないわよ」
「アリバイ証明できる?」
「出来るわけないじゃない、あ、いや、ママ、私帰ってきてすぐ二階に上がったわよね?」
「うーん、でも、ママもお隣さんに回覧板届けにいってたから…」
「どのくらい~?」と私。
「長話しになっちゃたから…」
よし、いいぞ、ぐだぐだになってきた。
「ひょっとして…食べたのママ!?」
「チカちゃん!」
おっと、やばいやばい、ママを刺激しすぎた。
「てゆーかチカ、お前だろ!食べたの!」
遂に矛先が!これをかわしてうやむやにしてやる…おやつ、MORE ゲット!
「食べてないよ~!さっき帰ってきたばっかだし」
「どうだか…だいたい家で一番の大食いじゃん」
「あっ!ひどーい!バスケするとお腹が減るんですー」
「ほら、お前じゃん」
「だからー食べてないって」
「そう言うお姉ちゃんだって甘いもの大好きじゃん」
よし!反撃だ。
「それに、勉強で頭つかうと甘いものが欲しくなる~っていつも言ってるじゃん!」
「それはほんとだけど!食べてないったら!」
ママは腕組みして、私とお姉ちゃんの話をじっときいている。
「もう…疑いたくはないけど、正直に白状しなさい。怒らないから」
ママからの停戦協定だ
だが…いったん戦端を開いた以上、もう後にはひけない
やるか、やられるか
それが世の姉妹の定め
「私、食べてないよ~」
「私だって!食べてないわよ!」
「てゆうか、ママ、もうおやつないの?勉強の夜食、欲しいんだけど…」
お姉ちゃんがもううんざりだ、と言わんばかりにママに言う。
「しょうがないわね…お醤油切らしてるからついでに何か買ってくるわ。」
……勝った!うやむやになったぜ!ほくそ笑む私。
「お母さん、私も息抜きがてらついていくよ。」
お姉ちゃんは軽く背伸びをしながらついていく
上手くいった…さらにおやつ、ゲットだぜ!
「チカ、ほっぺについてんぞ」
不意のお姉ちゃんの逆襲!
あ、慌てない慌てない…大丈夫、そんなへまはしていない…
「ふふーん、べーっだ。クリームなんかついてないよ、」
「うん!?」
瞬間、お姉ちゃんとママがこちらを見る
「チカ…今、なんつった?」
「え…?だからクリームとかついてないって…」
お姉ちゃんは振り返り、「ママ、ケーキって何ケーキ?」
「チカちゃん…あなた…」
「え、えええ!だって!ショートケーキでしょ!ケーキって」
「誰もショートケーキって言ってない」
「だ、だってケーキっていったらほらショートケーキじゃん?」
暫く、静寂がこの場を支配した…
「ママ…犯人、チカだよ」
「ふぅ…そうね。まったく、チカちゃん、あなたは今日はもうおやつ抜き、ね」
しまった!私があうあうしていると、
「チカぁ…てめえわかってんのかぁ?」
ヤバい、お姉ちゃん、言葉使い、変わってる…
玄関で正座させられた…
うう…酷い。花の女子高生にする仕打ちか
まあ、ぶたれるよりましか…
とりあえず、この場はしおらしく…と。
「帰ってくるまで反省してろ!ばーか!」
「…はい。」
「じゃあいってくるわね」とママ。
くそう、後はママの温情措置に期待だ
「それにしても4つとも全部たべちゃうなんて。せっかくパパの分までもらってきたのに」と、靴を履きながらママ。
……ん!?よ、4つ!?…だと…?
先に玄関を出たママに、靴を履きながらお姉ちゃん「ほんと、チカの奴食い意地張ってるんだから。晩ごはんも抜きにしたら?」
は、はめられた…!4つとか食べてないッ!私が食べたのは一個だけ…!
だとすると…
他の何者かが、残り3つを食べたということ…だ
「ユカちゃん、行くわよー」
「はーい、ママ。待って待ってー」
と、お姉ちゃん、くるりと振り返り、
「チカぁ、ほーんと、反省しろよなっ」
とウィンクしやがった!てへぺろ、みたいな!
喰ったの、こいつ、だ!
だ、騙したつもりが、騙されていた!?だと!ぐぬぬ…
怒りが込み上げてくる(自分勝手なのは承知している)
志望校とか落ちちまえ…!そんで、第八志望校とかに受かればいいんだ!
「お、お、お姉ちゃんの、ぶぁかぁあ~!」
玄関が閉まると同時に号泣してやった
つ、次は、
次は必ず勝つんだからぁ…!
~FIN~