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高校生映画人~青春の監督達~  作者: Boukun0214
石井スクリーンプレイ
7/11

亀裂と敗北

「待ってください!!」



僕は立ち上がって、溝口さんの言葉を遮る。

それには伊丹さんが反応した。



「なんだ?まだ言うことがあるのか?」



僕はムキになって、溝口さんと本多さんに必死に頭を下げる。



「お願いします!あと一回、チャンスをください!」

「・・・そうはいってもだな、企画を決めるのは早いに越したことはないんだ。」



しかし、簡単には行かないようだ。

でも、僕は食い下がる。



「そこをなんとか、曲げてもらえないでしょうか・・・!」

「しかしだな・・・」

「いいんじゃない。別に。」



本多さんが口を挟む。

溝口さんは、驚いたような顔で本多さんのことを見る。



「お前、何言ってるんだ?これ以上時間をかけても、伊丹の優勢は変わらないぞ。」

「この程度でくたばってしまうようだと、一端の会員として認められないね。」



本多さんが、今までに聞いたことがないような真面目な声で言う。



「はあ・・・わかった。本多がここまで言うなら仕方がないが、お前はあと一週間で、伊丹の企画に並べられるように修正ができるのか?」



溝口さんと目が合う。

目には、厳しさがこもっている。



「はい。たぶん・・・いえ!必ず。」


「もし次の一週間で進展がないようなら、脱退もやむ無し。」



溝口さんの言葉に、伊丹さんを除く皆が立ち上がる。



「そ、それは流石にやりすぎですよっ!」

「確かに。ちょっと、重すぎじゃないですかね。」

「溝口、これは。。。」

「・・・っ。」



内田、宮川さん、本多さんが抗議をする。

河瀬は、何かを言おうと口を開くが、何も言わずに俯く。



「お前らは黙ってろ。これは決定事項だ。それに、だ。」



溝口さんは三人を座らせて、僕に向き直る。



「もし、その程度の覚悟もないようで・・・」

「やります!・・・それでも、構いません。」



ここまで来てしまっては、もう、あとに引けない。

真っ直ぐに溝口さんの目を見て、僕は答える。



「本当にいいんですか?せっかく入ったのに・・・。」

「石井が良いならいいだろう。」



内田が僕に話しかけるが、それは溝口さんが制する。



「じゃあ、二人とも。一週間後の企画会議でシナリオを提出しろ。それで決めよう。」



すると、急に伊丹さんが立ち上がり、信じられないと言ったように口を開いた。



「今日、決めないつもりですか・・・!?」

「伊丹さん、お願いします。」

「お前には、、、諦めってもんがないのか?一週間の喪失は、お前の思っている以上に大きいものなんだぞ!」



伊丹さんが珍しく声を荒げ、呆れたといいたげな表情で僕に反論する。



「・・・わかっているつもりです。」

「思えば君は、ずっとぼんやりしたことばかり繰り返していたが、今は自信たっぷりだね。」



伊丹さんがなじるように僕を睨み付ける。



「そんなぶれっぶれの軸を持った人間の世界観が形成する映画が面白いだなんて、俺はそうは思わないね。」



黙って聞いていれば・・・!!

そこまで言わなくてもいいじゃないか!


僕の頭にも血が昇ってしまう。



「伊丹さん!さっきから聞いていれば、心無いことを!」



いよいよ我慢が効かなくなり、伊丹さんに言い返す。



「もし、もしもそうだとしたら、伊丹さんの映画には冷酷と非常しかないですね!」



口が止まらなくなり、さらに悪口が雪崩になって出てくる。。



「僕の企画の世界観が映画じゃないとおっしゃるのなら!一度、映画を作るなんて辞めるべきですね!」

「君もなかなか言うね。そもそもだ・・・」

「そこまでだ!!」



伊丹さんが口を開いたとき、溝口さんが僕たちを止める。

すると、皆が口々に僕らの口喧嘩にモノを言う。



「ののしりあいというのは、賢明じゃないね。」

「そうですよ。お二人の企画はどちらも映画ですよ。」

「これは私の決めたことだ。これ以上の文句は私に言え!」



僕と伊丹さんは頭を冷やし、どさっと椅子に座る。



「・・・すみません。わかりました。」

「分かりましたよ。ええ。」



そして、伊丹さんはじとっとこちらを見た後に、こう言う。



「来週、しょうもないシナリオなんか持ってきたら、許さないからな。」

「そこは分かっていると、何度も言っています!」


「いいから!今日はもうお前たちは解散だ!」



再び喧嘩が勃発しそうになったところで、僕たち二人は溝口さんに追い出された。



「・・・ッ。」

「伊丹さん、その・・・」

「・・・一週間後。」

「え?」



伊丹さんは、それだけ言って僕から顔を背け、さっさと帰ってしまった。


一週間後。

その日までに、僕は彼に勝たなくちゃいけない。


今の僕に足りないものはなんだろうかと、少し考えてみる。

あいにく、出来の悪い頭にはなにも浮かんでこなくて、結論は出なかった。



これが、敗北の味なのだろうかなと、ただそれだけは思った。



「よしっ!」



頬を叩き、気合いを入れる。


乾いた音と僕の声が、廊下に響いた。

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