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高校生映画人~青春の監督達~  作者: Boukun0214
石井スクリーンプレイ
6/11

二人の分岐点

企画会議からの一週間、僕は作品を膨らませ、プロットにしていった。


そして今僕は、フィルムクラブの席につき、会議が始まるのを一人待っていた。

ちなみに、今河瀬は、宮川さんと話している。



「だから、そんなことありませんって!」



ふと、急に河瀬の声が、室内に響き渡った。全員が川瀬と宮川さんの方を見る。

気まずい雰囲気の中、伊丹さんが急に、さっきの川瀬よりも大きな声で、茶化すように言葉を発した。



「おい宮川!お前、なにこそこそ口説こうとしてんだ?見損なったぞ!」



すると、それに続いて、溝口さんもシャドウボクシングのようなジェスチャーをしながら言う。



「河瀬、嫌だったら殴っていいんだぞ。」



二人の言葉で、場の空気はなんだか少しだけ和んだ。



「すみません、そういう訳じゃないです。」



誤魔化すように笑って、河瀬が僕のとなりの席につく。



「河瀬、どうしたんだ?」

「・・・いてよ。」

「え?なに?ホントにどうかしたのか?」

「だから、ほっといてよ!!私の気も知らないで!!」



河瀬がガタンと立ち上がり、大声で叫ぶ。また、メンバーの視線が河瀬に集まる。



「ご、ごめん・・・。」

「石井くんには、付いていけないよ。」



河瀬がとても小さな声で呟き、席に座り直したところで、溝口さんがパンパンと手を叩き、会議を始める。



「はい!じゃあ、始めるぞ。」



皆、自分の手元を見る。各々の手元には、僕、河瀬、そして伊丹さんのプロットが用意されていた。

しばらくの間、全員が手元のプロットを読む。

予定通りなら、この会議が最終となり誰の作品を作るかが決まる。

少しの沈黙のあと、溝口さんが口を開いた。



「・・・個人的にはな、プロットを見ても伊丹のがいいと思う。よく現代社会の人間というものが風刺されてるじゃないか。」



続いて、本多さんも意見を出す。



「そうだね。ただ、石井くんのはね、伸びしろがあると思うんだよね。」



そこで、会議が滞ってしまう。

少しすると、溝口さんが内田に話を振った。



「内田!なんか、無いか?」



内田が、あわあわっとして答える。



「ええ!?そんな、三人ともいい作品ですよぅ。」

「ぼんやりと包み隠さず自分の意見を言え。」

「うっ・・・」



伊丹さんがぴしゃりと内田につっこむ。内田は言葉に詰まって黙ってしまった。

つーか、伊丹さん怖ぇ・・・。


すると、河瀬があの、と話を切り出す。



「えっと、私のはどうですか?」

「そうだな、うーん、悪くはないんだが、いまひとつ、パンチが足りないなぁ。」

「世界観は面白いと思うよ。うん。ただ、所々詰めが甘いんだよね。」



溝口さんが本田さんの言葉にこくこくと頷く。その言葉を聞いて、河瀬がガックリと肩を落とす。



「俺のはどうです?良いって言っても、問題点はありますよね?」



伊丹さんが、三人に質問をする。



「ああ、それはだな、冒頭で起きる事件のことだが、これが大分重すぎる・・・。主人公の行動原理になっているのは解るんだがなぁ。」

「そうだね。あと、移動のときの描写をどうするかっていうのとかね。」

「撮影をするに当たっては、特にロケ場所さえ確保できれば問題はないと思いますよ。」



溝口さん、本多さん、宮川さんの順で伊丹さんに意見を言う。

伊丹さんは手帳にそれをメモしていく。


あの人って、結構真面目なのかも。人の助言はしっかりと聞くのか。。。第一印象よりは悪い人ではないかもしれない。



「技術をやろうかな・・・」



ふと、河瀬がポソリと、こんなことを言い、深呼吸をした。

手を高く、そして真っ直ぐ挙げる。



「どうした?」



溝口さんがそれに気がついて、河瀬に声をかける。



「私は、企画レースから降ります。」



河瀬の透き通った声が、メンバーの視線を引き付ける。

僕は、驚きのあまり思わず彼女にこう言った。



「なんで、いきなり・・・?」



河瀬は、溝口さんに説明を始める。



「私は、私は本当は、企画をやりたいです。でも・・・」



河瀬は、少し俯いて、言葉を繋げる。



「本多さんが言うように、随所の爪の甘さは自覚しています。だから、」



そして、前をキッと向いて、決意を固めたようにこう言う。



「だから、経験を積みます。他の人の作品に携わって、経験を積みます!」



僕はとても驚いた。

正直、河瀬がレースから降りるとは思っていなかったし、そんな可能性にすら気がついていなかった。

僕の反応とは裏腹に、溝口さんはとても冷静に答える。



「ああ、構わない。それでも。いいと思う。で、今回はこれから何をやるんだ?」



河瀬は、宮川さんの方に向き直る。



「宮川さん、その、さっきはすみませんでした。宮川さんの、おっしゃる通りでした。」



河瀬は、すぅっと息を吸って、言葉を吐き出す。



「・・・だから、私にカメラを教えてください!」



頭を大きく下げる。

しばらくの沈黙のあと、宮川さんはニッコリと笑って承諾する。



「わかりました。一緒に、カメラをやりましょう。」



宮川さんの言葉に再度深々と頭を下げる河瀬。宮川さんと握手をして、席に戻る。



「うん。これで、伊丹と石井の一騎討ちになったな。」



溝口さんが、話を先に進める。



「それで、二人のどちらになるんですか?」

「そうだな・・・本多、どう思う?」

「まあ、現時点じゃあ、伊丹君の方が優勢だね。」

「そうだな。今現在、紛れもなく伊丹の優勢だ。」



内田の質問に答えた溝口さんと本多さんに、僕はつい、声をあげてしまう。



「そんな・・・!僕の企画の、どこがダメなんですか?」



ふう。と、本多さんが答える。



「まずね、君の企画は、この国の暗部を描こうとしているようだから、社会派でシリアスなものを狙っているね?」

「はい。」

「それだと、伊丹君のものと被ってしまうんだよ。そうすると・・・キャリアもあるんだろうけど、それを多目に見たとしても、伊丹君の方が良い。」



何も、言い返せない。


本多さんはさらに僕に追い討ちをかける。



「あとね、オチがちょっと、よろしくないね。暗部を見て安心するということは、下には下がいることに甘んじるってことだからね。」

「いえ!決してそういうわけでは・・・」

「君はまだわからないのか?」



僕の言葉を、冷たい声が遮る。


伊丹さんだ。彼は、その言葉を続ける。



「作り手がどう考えていようが、受け取る側がそう受け取ってしまえば、その作品はそうなってしまうんだ。」

「・・・」

「そうだ。ほとんど二人の言う通りだ。」



納得がいかないと思っている僕に、溝口さんが説明をする。



「だから、こうやってみると、お前と伊丹の間には大きな差がある。大きな、作品への取り組み方の差がな。」



大きな、差。



「厳しいことを言うかもしれないが、制作者の説明がないと伝わらない映画なんて、いい映画になるわけがない。わかるな?」



でも、僕は・・・



「じゃあ。お二方とも、さっさと決めてしまいましょう。」

「そうだな。今回の作品は、伊丹の・・・」



「待ってください!!」



諦めきれない。

こういうのが往生際が悪いって言うのかもしれないけど、諦めたくなかった。



ここで、諦めたくなかった。

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