幼馴染みの苦労人
学校に向かう途中の道。
僕の世界に、変化が訪れた日の朝。
全力で、走っていた。
それはもう、走っていた。
顔がにやける。
疲れを感じない。
寒さを感じない。
むしろ、気分は高揚して、暑いくらいだ。
しかし、1つの違和感に気がつく。
「そういえば、コレって、誰が・・・?」
おそらく、昨日のゾンビのとき、ポストに入れられたのだろうけど、いかんせん、僕はその人物のことを見ていない。
「まあ、いっか。」
しかし、そんなことは僕には些細なことだった。
今、僕の手には『フィルムクラブ』のチラシがあるので十分。
そして、そうこう(走行?)しているうちに学校についてしまった。
早く着きすぎた。
普段はグダグダと二人で話ながら歩く道なのだから、結構時間がかかっていたはずの通学路も、一人で走ると大分短く感じる。
まだこの時間だと教室には誰もいないかなぁ。
冷静になって考えてみると、今日いきなりフィルム・クラブに一人で行くと言うのも少し気が引ける。
誰か誘うにしてもなぁ。
朝練をしている人の声を聞きながら、教室にはいる。
「あれ?河瀬?」
教室には、予想外の、でも、見馴れた人影があった。
「あ、石井くんおはよう。」
「部活の朝練あるんじゃなかったっけ?」
「それは、あると思ったんだけど、なくて。。。」
どうやら勘違いで早く来てしまったらしい。
ああ、紹介が遅れたけど、彼女は河瀬。
僕の幼馴染み。
普段は一緒に登下校してるけど、お互いの都合ーー主に河瀬の部活で別々になることも良くある。
性格は、努力家で真面目かな?
成績は結構良い優等生だったはず。
正直、うちみたいな学校よりももっと高いレベルのところに行けたと思うけど、まあいいか。
まあ、それはさておき。
河瀬と軽く挨拶を交わしたあと、自分の席についてフィルム・クラブのチラシを取り出す。
「はぁ。」
ため息の理由は、さっき言った通りだ。
「どうしたの?」
僕のため息に河瀬が反応する。
二人しかいない教室だから、まあ目立つのかな。
「ん、いや別に・・・」
行きたいんだけどなぁ。でもなぁ。。。
「なあに?それ。」
河瀬が、僕の持っているチラシに気が付いてこちらによって来た。
「なんかね、うちのポストに入っててさ。」
河瀬にチラシを渡すと、一読して、
「ふぅん。面白そうだね。これ。」
と言った。
「行こうとは思うんだけど、一人じゃちょっと・・・」
そこまで言って、僕はあることを思い付く。
そして、すぐさま行動に写した。
「あ、さっき、面白そうって言ってたよね。」
「え?う、うん。」
「じゃあさじゃあさ、これ、行ってみたいと思う?」
「そうだねー、でも「よし!一緒に行こうよ!今日行こう!」
我ながらだいぶグイグイといったので、河瀬は少し戸惑っている。
「え、き、今日?ほ、ホントに?」
「今日、今日は、部活が・・・部活が、、、、な、無い!」
その河瀬の言葉を僕は肯定と判断した。
「決定!」
今日、さっそくフィルム・クラブへ!