第八話
このお話は作者が二ヶ月前百万人のあーさーが出てくるソシャゲに約一万円近くガチャにつぎ込み、出した必須キャラと呼ばれる程強いキャラが今では産廃と罵られているのを知ってショックを受けて書いたものである。
英雄達は波乱を望まない第8話
柏野歌火視点
今日は部室を紹介してくれると言って放課後、早乙女さん達に案内してもらっていた。休み時間や昼休みは、さすがのクラスメイト達も自重したのか数人の生徒達が質問をして、他の人たちは遠巻きに見てくるだけだった。そこではあらぬ噂が広がっていた。
「ねぇねぇ、柏野くんが早乙女さんに連れてかれたってほんとう?」
「ほんとほんと。まじあんときすごかったんだから」
「ヤンキーみたいで周りとは距離を置く早乙女さんが無理やり近づいた転校生の関係。うーん!きになる!」
「カツアゲ…じゃないよね。」
「きっとあれだよ!早乙女さんは転校生に一目惚れして、無理やり連れて人目のないところでファーストキスを奪ったんだよ。」
「きゃー!あっ、でも見た目てきには完全に百合なんですけどそれ。」
という会話が休み時間や昼休みに行われていた。僕も早乙女さんも顔が真っ赤だった。ブランさんだけニヤニヤしてたけど。
☆☆☆
そして、今放課後で部室で説明すると言ってたのだが……
「ここが部室につながる部屋だ。」
「え、ここが部室じゃないんですか?」
僕たちは生徒会室の横にあった相談室に来ている。相談室は、テーブルと、テーブルを挟むようにソファが二つ並んでいる。そしてその奥にキッチンがあり、部屋のドアからは直接見えない位置にあった2つある掃除用具入れの前に立っている。
「?」
「基本的にはここの相談室で活動を行いますけど部室はまた違うんですのよ?」
「えっ、じゃあどこで……」
と僕が言おうとしたときに、変化が訪れた。
ウイィィィィン
と、まるでエレベーターのような音がした後
パシュウウウゥゥゥゥ
と左の掃除用具入れから煙が出た後二人の女性と一人の男性が出てきた。え、なにこの近未来的装置。
「おぉ。ほんとに時間通りだ。」
「ていうかワタクシ達は来ることしか言ってませんのによく来る時間帯が正確にわかりますのね。」
「当たり前だ。あたしを誰だとおもっている。」
「部下の動向をわからずして大将としてやっていけないもんさ。」
「我々3年の実力を甘く見てもらっては困るな。」
早乙女さんとブランさんは目の前にいる人たちと話しているが、僕は今の出来事で頭がフリーズしていた。
「え…なにが、どうなって?掃除用具入れから3人も出てきて、あれ?」
混乱している僕に、現れた3人の人たちが声をかけてくれた。
「あー、混乱しているようで悪いが、とりあえず自己紹介をしよう。あたしの名はスカアハ・スカラフだ。一応『お悩み相談部』の部長だ。気軽にスカアハ先輩とでも呼んでくれ。」
「次はわたしだな。わたしはオイフェ・スカラフ。そこのスカアハとは双子の姉妹だ。スカアハが姉でわたしが妹だ。これからわたしたちが卒業するまでの約半年間だが、よろしくな。」
「最後は俺か。俺の名は空歩凛だ。空歩が苗字で凛が名前だ。よろしくな。転校生。」
僕は今聞いた名前に耳を疑った。スカアハも、オイフェも、空歩凛も、僕の知ってるソロモンの記憶にあったケルト神話に出てくる名前だからだ。スカアハは影の国と呼ばれる場所の女王であり、オイフェはそのスカアハの双子の妹である。空歩凛はクー・ホリンもしくはクー・フーリンと呼ばれる槍使いだ。ケルト神話の逸話は誰でも知っているレベルで特にクー・フーリンは大英雄であり、彼の持つ槍、もしくは技にあるゲイボルグという名は知らぬものがいない程。
僕はショートしそうになる頭をなんとか押さえ込み、自分の自己紹介をした。
「えっと、僕の名前は柏野歌火です。昨日転校したばかりで何かとわからないことが多いと思うので、その都度助けていただけると嬉しいです。」
「あぁ、よろしく。お前に教える係は俺が引き受けよう。他のものには務まらないからな。」
「あ、ありがとうございます。」
空歩先輩が色々と教えてくれるそうだ。正直空歩先輩以外は異性なので一緒にいると緊張して疲れてしまう。だから先輩といえど同性なのはありがたかった。でもなんでそういう係が必要なのだろうとか思ったけど、多分掃除用具入れの近未来技術の他にも何かあるのだろう。その説明がわかりやすく理解させやすい人が空歩先輩が適任だった…とかかな?わからないけど。
☆☆
あの後僕と空歩先輩を残してみんな掃除用具入れに入っていった。なんでも準備がまだなのと最低限驚かないために部活動のことについて教えてくれるそうだ。そして今僕は空歩先輩と向かい合わせで座っている。
「気になっているとは思うが、この二つある掃除用具入れだがな、一つは本物でもう一つは隠し通路なんだ。」
「隠し通路ですか?」
「なんでも、この学校は昔、秘密軍事施設だったらしくて国から目を向けられないために地上は普通の学び舎であり、地下には大規模施設を造ってそこで兵器開発をしていたらしい。」
「施設を造る際、どうしても造る人の出入りだとか金の動きとかでバレると思うんですけど。」
「まあこの学校の生徒は皆化け物と呼ばれるくらい才能があった奴らが集まってできたようなものだったからな。金もポケットマネーで工事などの土木作業や建築作業の人員も生徒だけで行ってたらしいぞ。」
「なんか、すごいアクティブだったんですね。」
「そうだな、普通は出来ないがデキる奴らは違かったんだろうな。今その施設は俺たちが使っていて、前の世代の人たちが施設を改良に改良した結果、まえよりも断然便利になり10年近く使われていない焼却炉の後ろにあった階段からの移動ではなくこうして部室からの移動となったしな。」
「えっと、その掃除用具入れからその施設に行ってるんですよね?どうやっていってるんですか?」
「聞いて驚くなよ。魔法陣を使った瞬間空間移動。別名ワープだ。」
「えっ、……ワープ?聞き間違えましたか僕。」
「いや、あってるぞ。前の世代の生徒の中に偶然。本当に偶然に空間移動の法則を見つけて極秘の実験としてここの二つある掃除用具入れの一つと施設の入り口にあたる部分につなげてみたら物の見事に成功して、それ以来使っている感じだな。」
もう僕は何を聞いても驚かないぞという自信が出てきた。もうどうにでもなーれだ。あれ、でも…
「音出したらばれたり怪しまれるんじゃあ…」
「普段は音が出ないが、今日は転校生がうちの部活に入ると喜んだ技術バカがいてな。そういう演出をしたんだ。次回からは音はもう出ないと思うぞ。」
才能の無駄遣いという言葉を初めて知ることができた気がする。
それからこんなことやそんなことを話しているうちに掃除用具入れ(ワープ装置と教えてもらった)が開き、中から早乙女さんとスカアハ先輩が出てきた。
「準備ができたぞー、ついでに部屋の掃除もさせといたー。」
「そうか。自分でしようとは思わないのか…もう案内してもいいのか?」
「準備は終わっているが、柏野が驚いてショック死しないか心配だな」
「なにそれ!」
早乙女さんがびっくりすることを言った。もしかして僕が死ぬと言っていた女神はこのことを言っていたのではなかろうか。
一緒にいたブランさんはどこに行ったのかを聞くとスカアハ先輩が
「休憩室にパーシヴァルがいたからそれを教えたら『搾り取ってきますのよー』と言ってパーシヴァルのもとへ走って行ったぞ。」
やっぱりいたんだパーシヴァルって人。
そんなことを考えているうちに空歩先輩に先導され、そのワープ装置の上に乗る。すると目の前が徐々に白くなり、最後に真っ白になった。驚いて目を瞑ると急に貧血のように頭がフラフラして倒れそうになった。すんでのところで誰かに支えられ、事なきを得た。治ったあたりに目を開けるとそこは先ほどまでいた相談室ではなく、長い廊下の端の方にいた。僕は支えてもらっていた誰かに礼を言おうと振り向くと早乙女さんが僕の肩を掴んでくれていた。
「あ、えーっと。早乙女さん。ありがとうございます。もう大丈夫です。」
「お、おう。ま、まーでもなんだ。ほら、オレも最初の頃はこの空間移動に慣れなかったからな。困った時はお互い様だ。」
「は、はぁ。えと、あの…もう大丈夫ですよ?」
「あ、あぁ。悪い。」
そう言って肩から手を離してくれる早乙女さん。触られてると異様に緊張しちゃうんだよね。それを見てた先輩たちは口々にはやし立ててきた。
「ヒューヒュー。お熱いねぇ。」
「あぁ。いつ見てもこういう新しい恋人同士ができるのは嬉しいもんだな。」
「だがあの堅物として有名な流火がこんなにテンパってねぇー。世の中なにが起こるか……」
「あ”あ”?」
早乙女さんが威圧してそれは終わった。ちょっと怖かった。それから廊下を歩くこと数歩、横にあった扉の前でみんな立ち止まった。その扉の上にあったプレートには『武器庫』と書かれていた。
「えっと、ここって…」
「あぁ。武器庫だ。毎年ヘパイトス金属株式会社の変人な社長が新しくできた武器とかを持ってきてここで管理しているんだ。」
「俺の使っている魔槍ゲイボルグもここにある。」
「そうだ!凛。せっかくだからあれを転校生に見せてやれ。」
「スカアハ。あれは刺激が強すぎると思うんだが。」
「大丈夫だ。これくらい乗り越えなきゃ、うちらの活動に差し支えがあるからな。」
「それならいいが」
そう言って空歩先輩はその武器庫に入っていく。みんな外で待っていたから僕も同じように待っていた。すると空歩先輩が身の丈ほどある、青色のコアに該当する部分以外が全部赤で塗装された槍を持ってきた。あれがゲイボルグなのだろうか。
「じゃあ早速移動するか。怪我だけはしないようにな。」
「わかってる。久々にこれを使うからな。ウォーミングアップは軽く済ませてある。」
次に訪れた場所は『演習場』と書かれた部屋だった。部屋の中はコロシアムのようになっていて観客席にはバリアの魔術が貼られており、空歩先輩は会場に、みんなは観客席に移動した。
空歩先輩は真ん中にポツンとある木人形から離れた位置を取り、槍を構え直した。
「それ、じゃっ……」
空歩先輩はそう言うと体の態勢を変えた。体を限界ギリギリまで低くし、意識を前方の人形に集める。みんなが固唾を飲んで見守る中、空歩先輩は動き出した。
「『刺し、穿ち、抉る。幾千の槍』!」
そう言い放った後、まるで弾丸のように飛び出した。空歩先輩がいた場所には半径1メートルはあろうかというクレーターができている。恐らくあれが空歩先輩の魔術だろう。
そして距離が半分になった時、右足を地面につけ、それを軸にして時計回りに回転し、木人形に槍が当たる直前、体を限界まで引き絞り、渾身の一撃を叩きつけた。
人形は地面に打ち付けてあった支えもろとも会場と観客席の間にある壁に派手に激突し、深々と槍が突き刺さっている光景がそこにはあった。
だがそこでは終わらなかった。
「爆ぜろ!『ゲイボルグ』!!」
ズバアァァァァァァン!!
そう空歩先輩が叫ぶと槍の穂先に該当する部分が弾け、人形を木っ端微塵にしながら飛び出してきた。そして、槍を引っこ抜くと飛んでいった破片が集まり元の槍に戻った。
「あれがあいつの得意魔術だ。惚れるだろー?」
とスカアハ先輩が自慢げに話しかけてくる。でも、あれは。
「やりすぎじゃないですか!?」
僕はそう叫ばずにはいられなかった。
ミリオ◯アーサーのアーサー達は生身で第10使徒と殴り合っている。もうこの時点で彼らに及ぶ者はいないんではないんだろうか。