第十一話
___D・ホ◯ール
デュエルディスクを進化させたそのマシンを駆使し戦うラ◯ディング・デュエルは、スピードとスリルに溢れた最高のショーであり自由の象徴であった
※呼ばないし呼ばせない
バイクに乗った状態でデュエルするのは道路交通法に違反する行為であり、同時に大事なカードが風に吹っ飛ばされるので絶対にやってはいけません。
英雄達は波乱を望まない第11話
柏野歌火視点
「まあ。今日はこのくらいにして続き……というより2年生の自己紹介は明日だな。今日は2年生にちょっと仕事をしてもらっているからすぐには紹介できないんだ。」
スカアハ先輩は少し申し訳なさそうにそういってくる。
「てことは今日はここいらでお開きってことか?」
「あぁ、そうなるな。今日は特に依頼もないし、全校生徒はまだ転校生の話題で持ちきりだからな。たまに転校生の個人情報を教えてくれって輩もいるが、あたし達は犯罪に手を染めるようなことはしないと言ってるから実行に移すことはないしな。」
早乙女さんがスカアハ先輩と話し合っているが、学校にそんな奴がいるなんて聞いてな……いや、うちのクラスのテンションが他のクラスでの当たり前と考えたら当然のような気がしてきた。
「そういや、個人情報抜きにしても、柏野の家ってどのあたりなんだ?」
「えーっと、僕の住んでいるところは______ってところです。」
「あ、結構近いんだな。オレはその近くの寮でブランと生活してるんだ。っと、噂をすればきたな。」
そういって早乙女さんは部屋のある一室に視線を移した。そこには『休憩室』からツヤッツヤで出てきたブランさんとブランさんに足を引きずられながらカラッカラに干からびた赤髪の優男という印象が強い青年が出てきた。
「えっと、その人は……」
「ワタクシのフィアンセであり許嫁でもある、ワタクシの彼氏、1年K組のパーシヴァル・ペレディルですの。生徒会執行部、またの名を円卓の騎士とよばれている組織に所属している人物ですのよ。」
「……や、やぁ。……お、おれがそ……その、人物だ。よ、よろしく。」
パーシヴァルさんはヘロヘロになりながらも自己紹介してきた。足を引っ張られながらだから顔だけ起こしてこっちを向いている状態だ。まともに立つのも無理なのだろうか。
「ではみなさん。ワタクシはこれからダーリンとデートなのでこれで失礼します。」
「……デート!?嫌ダァ!もうおれはすっからかんなんだぁ!やめろぉ。やめてくれぇー!」
ツヤツヤな表情のままブランさんは叫ぶパーシヴァルさんを引きずっていく。……あぁ、えっと。その…なんだ。ご愁傷様、パーシヴァルさん。
「相変わらずだなブランは。柏野…その、なんだ……アレがあいつらの関係だから二人でいるときにはあんま声かけないようにな。」
「あっ、はい。」
僕もあんまり恋人とああいう関係になるのは好きじゃない。
☆☆☆☆☆
そんなこんなでお開きになって次の日、僕たちはまた地下施設に来ていた。
「今日の昼休みに早速依頼が入った。その様子をビデオで見せようと思う。」
そう言ってモニターを操作するスカアハ先輩。集まっていたのは3年生と1年生の昨日の面子だった。……2年生は?
「2年生はもう少ししたら来るらしいから、説明の途中で自己紹介となるが、かまわんな?」
「は、はい。」
そう言って説明に戻るスカアハ先輩。
映し出された映像には部室のソファに座ってるスカアハ先輩と、か弱い少女という言葉がぴったりの女の子がいた。
『それで。相談とはなんだ?詳しく説明を求める。』
『は、はひ!えっ、えっと。あの……』
画面内ではスカアハ先輩の言動にビクビクしながらしゃべる小動物がいた。
『そんなに慌てないでくれ。まずは深呼吸だ。』
『は、はひ!すぅー。はぁー。すぅー。はぁー。』
『落ち着いたか?』
『な、なんとか。』
落ち着きを取り戻した少女はポツポツと喋りだした。
『今回は、探し物をお願いしにきました。』
『探し物?』
『はい。まだ私が小さい頃に年の離れた兄からぬいぐるみを誕生日にプレゼントしてくれまして。今日の朝にはバックにあったのですが、お昼ご飯を食べようとしたらなくなっていて、心当たりとか全くないんで相談しにきました。』
『探し物の依頼か?まぁ。倉庫に確か……特徴を細かく入力すれば探知が発動する魔道具があったからな。放課後までには用意するからその時にもう一度ここまで来てくれないだろうか?』
『引き受けてくれるんですか!?』
『助けることがモットーだからな。……言いたくなければいいんだが、そこまでして探すものなのか?いや、うちの魔道具は正確だから確実に当てることができるが、友達には頼めない事情があるのか?』
『……はい。あれは私が5歳の時に故人となった兄からのプレゼントなんです。いつも肌身離さず持ち歩いていたので、そのことは友達には話し辛くて、だから相談しにしました。』
『……わかった。こちらの方で必ず見つけ出そう。』
そこから少女は退室して後にはスカアハ先輩のみとなって、画面がフェードアウトしていった。
「ということなんだが、協力してくれるな?」
スカアハ先輩はモニターの電源を落としてからこちらに振り返り聞いてきた。
「いいですけど、その魔道具はどこに?」
「今ちょうど上の方に用意したところだ。2年生がついでで用意したから上で自己紹介だな。」
「わかりました。」
そこから僕とスカアハ先輩と早乙女さんで上に行き、2年生と合流した。
「やぁ。君が噂の転校生だね?俺の名はゼウルス・ギリシア。特技は女性を口説くこと。趣味は女性と話すこと。男性に必要以上にスキンシップを取られると反吐がでるからそこんとこよろしく。」
金色の髪をオールバックにした高身長の青年が声をかけてきた。慌てて僕も自己紹介する。
「えと、初めまして。僕は柏野歌火といいます。一年生です。これでも一応男子です。よろしくお願いします。」
にじり寄ろうとしてきたゼウルスさんから後退しながらの自己紹介となった。
「ふむ。………男性とスキンシップを取るのは死んでもいやだが、歌火ならオーケーかな。」
「ひぇっ!」
気持ち悪い目で見られたので奇声を発してしまった。そこにすかさず早乙女さんとゼウルスさんの近くにいた女性3人が割って入る。
「おいゼウルス!柏野が嫌がってんじゃねぇか!やめろよ!」
「そうですよゼウルス!わたしという存在がありながら…!」
「欲求不満ならあたしたちで解消すべき。」
「そうですわ、わたくしたちでは不満だと、そう言いたいですの?」
「いやそういうわけじゃ……」
「「「「いいから下がって(ろ)(て)(くださいませ)」」」」
女子の心って変なところで一致するんだなぁー。そう思ってるとゼウルスさんの取り巻きの女性が3人とも前に出てきた。
「先ほどはわたしの不肖の弟が申し訳ございません。わたしの名前はヘーラ・ギリシアと申します。そこのゼウルスとは姉弟であり婚約者です。どうぞよしなに」
腰まで伸びた綺麗な紫がかった黒っぽい髪を揺らしながら頭をさげるヘーラさん。一言で言えばよくできた妻という印象だった。て、えっ?姉!?婚約者!?どういうこと!?
そのことを聞こうとしたらすかさず次の人が割って入ってくる。
「そしてあたしはゼウルス君の二人目の婚約者で第二夫人のメテイス・エウロス。ゼウルス以外の男性には知り合い以上の興味がないのでそこんとこよろしく。女性であれば可愛ければあたしの守備範囲に入るので是非紹介してね」
ピンク色の髪を肩まで伸ばした女性がそう言ってゼウルスさんに抱きつく。ゼウルスさんもまんざらじゃなさそうだ。
「最後はわたくしですわね。わたくしの名前はディメテル・テスポルですわ。ゼウルスの第三夫人でありこの歪な関係を維持する緩衝材といったところですわね。今後ともよしなに。」
緑色の髪をした女性が優雅に自己紹介してくる。一息つきたい気持ちを僕は抑え、ゼウルスさんに向きなおる。
「ん?なんだ?おれの側室に入る気にでもなったか?」
「永遠にないので期待しないでください。」
「ふはは。これは手厳しい。で、なんだい?」
「いえ、なんでもないです……」
ゼウルス・ギリシア。ギリシャ神話には天空神ゼウスがいる。そしてそのゼウスは無類の女好きで実の姉のヘラを正妻に、様々な女性と交わったと言われている。そんな人物が、今僕の目の前にいた。
「………はぁ。」
「なんだ?そのため息は。」
すごい人に会ったはずなのに僕はそれほど嬉しくなかった。
作者は決闘者を知っているだけで決闘者ではありません。あしからず