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英雄達は波乱を望まない  作者: 樫尾格
学園一年生編
10/18

第十話



 これは作者が最近になって始めたモン◯ンクロ◯で保険金詐欺と防御大の飯を食ったにもかかわらずアマ◯のダイソンで4乙したときに「理不尽だ!」と叫びながら書いた作品である。

英雄達は波乱を望まない第10話




 柏野歌火視点



「ダンジョン島の説明用に撮影したビデオを見せるから足りないところは停止しながら進めていくから。」


 スカアハ先輩はそう言ってスクリーンに映し出された映像を再生する。


『あー、あー、あー。撮れてるかー?撮れてたら返事をしてくれー。』

『撮れてるからそう声を張るな。音声が乱れる。』



 聞こえてきた声は画面に映るスカアハ先輩の声とおそらく撮影主である空歩先輩のものだった。撮っている場所は船の上で、そこから鬼ヶ島がはっきりと見える位置にいる。


『とまぁ。言葉で説明するのが面倒臭いから映像でやろうとか思ったが…面倒だからやめないか?』

『おまえが言い出した事だろう?新入生の紹介なんだからしっかりやってくれ。』

『わーってますよ、ったく。新入生には今から鬼ヶ島の説明を聞いてもらう。準備はいいかな?』


 そこでスカアハ先輩が映像を止めた。


「基本的に新入生に対しての映像だからな。そこは知っといてくれよ?」

「あっ、はい。」


 この学校には転校生がほぼいないのだから当然であろう。むしろ僕用に作られていたらどこまで仕組んでたのか少し怖くなる。スタートを押してまた映像は動き出す。


『まず、目の前に見えるのが鬼ヶ島。正式名称は【未確認生物生成洞窟】危険度はSS級で滅亡させる事が絶対にできない存在であることから災害指定怪物となっている。じゃあ実際に近くに行ってみよう。』


 そこで映像は編集されて洞窟の入り口までカットされていた。


『さてここが、あたしたちの仕事場にして資金源となるダンジョンの入り口だ。ダンジョンには魔物という怪物がいて、地下に行けば行くほど強い奴が出てくる。基本はそこで発生した魔物はその階層を徘徊するが、中には例外として太陽の光に導かれる奴や、悪意を好物としている奴なんかは人間の無限に蔓延る憎悪を頼りに上層に上がってくる事もある。そいつらは……』

『ギシャアアァァ。』


 スカアハ先輩が次の説明に入ろうとしたときにダンジョンから緑色の皮膚に覆われた大人の腰ほどの身長を持つ、長い耳と真っ赤な目をした特徴のある二足歩行の生物が出てきた。そいつは棍棒を持っていて、それでスカアハ先輩に殴りかかろうとしたのだろう。僕が「危ない」と声を上げようとした。だが


『ひとの説明してっときに割り込んでくるんじゃねぇぇぇ!!』

『グハァ!?』


 スカアハ先輩が即座に後ろに振り向きつつその回転を利用した回し蹴りを相手の頭と思われる部位の側頭部に決めていた。

 蹴られた生物はまともに受けた威力を流せず、そのまま横にバウンドしながら転がっていき、やがてついには大岩にぶつかって止まった。それでも大岩の方がへこんでいたが。


『今の生物はゴブリンという名前で、危険度はD−。見た目の特徴は後でじっくり見て覚えてもらうが、行動の特徴が〈敵を見つけたら見境なく襲い、捕食する。その中でも10代から20代の女性を優先的に狙い、捕まえようとする。こいつらはできるだけ獲物を多く見つけられるようにそれぞれがバラバラで移動していて集団でいることはない。獲物を捕らえた後は巣に持ち帰り仲間達と共有するらしい。捕まった女性は心と体が壊されるくらいの陵辱を受ける〉といったデータがある。新人向けの相手であり、五人チームであればそれと同数かそれ以下の集団であっても迎撃可能。あたし程度になれば何百体連続でかかってこようが脅威になる事なんてない。てな感じか。じゃあ今からそいつの死体を見に行くから心臓に悪い奴がいたらここで止めてく……』


 スカアハ先輩がここで映像を止める。


「転校生は死体とか見るの初めてか?」

「逆に見る機会なんてあるんですか?」

「……そうか。気持ちが悪くなったら言ってくれ。」

「はい。分かりました。」


 そしてまた映像は動き出す。


『れ。………大丈夫そうだな。じゃあさっきのゴブリンから資金源を取り出す作業を見せる。』


 そういった後、画面はスカアハ先輩が先ほど飛ばしたゴブリンを映し出した。白目を剥いて鼻から血を、口からよだれを垂れ流しながらピクピクと痙攣し、仰向けに倒れていた。そしてその頭に画面のスカアハ先輩は片足を置き………


『……ッ、セイヤ!』


 グシャッ!!ベチョッ!



 一拍置いてためらいなく踏み潰した。いわゆるスタンプ攻撃である。その光景にさしもの僕も


「……ウェッ」


 吐きそうになってしまった。吐かなかったけど。


 踏み潰されたゴブリンは踏み潰してから3秒位経った後に一瞬にして霧のようになって小石のようなものを残して消えた。頭を踏み潰したときに出た血や骨までもが霧となって消えていた。その光景に驚いていた僕にスカアハ先輩が説明してくれた。


「魔物は生きている限り現実のように血を出したり骨が折れたりする。だが殺してしまえば落し物以外何も残らなくなる。先ほどまでそこにいたという事実が当事者しか証明できなくなる。武器も同じく霧になって消えてしまう。不思議なものだな。」

「えーっと。落し物って何ですか?」

「落し物は落し物。『ドロップアイテム』と呼ばれているそれらは魔物の動力源と呼ばれている魔石が頻繁にドロップし、ごく稀にそいつの特徴を持った道具や武器。さらには素材や食料といった具合にいろんなものを落とす。ゴブリンからは手に持っていた棍棒を落とす場合もある。全くと言っていいほど使えないがな。」

「魔石って何ですか?」

「魔石は魔物の動力源。魔力を溜めることができ、電池のような働きをすることが出来る。世の中に出回っている使い捨ての電化製品の中にも弱い奴らから取れた魔石が使われている。弱い魔石は魔力を人間が充填することが不可能に近い。内部に残された魔力を使い切ってしまえばただの濁った宝石ほどの価値にもならなくなる。

 魔力が人間でも充填出来る魔石が手に入るのが10階層からで、そこでも効率は最悪だけどな。魔力を1入れようとすると1000必要になるくらいだ。まぁ、充填出来るのと出来ないことでは価値が天と地の差があるからなー。ただ10階層はそれまでの9階層と違った趣向があるから、『初心者殺し』と呼ばれる奴があるからそこで挫折するやつや殺される奴が出てくるから行ける奴は9階層の半分もいないくらいだ。そうなると需要も増えるから価値が跳ね上がって金欲しさに挑む馬鹿が増えて人が減っての悪循環となる。」


 そこで説明が終わって映像が再開される。


『では中に入っていくか。』


 そう言って画面の中のスカアハ先輩が洞窟内に入る。すると景色は一瞬にして変わり、洞窟内だというのにどこかの森のような緑が生い茂って、光源の太陽もどきもあって普通の森と大差ない光景がそこには広がっていた。


『さて。ここが!ダンジョンだ!!

 驚いただろう?洞窟内だというのに太陽があって森が広がっていて、まるで別世界に来たみたいな感覚に陥ってしまう。だが後ろを見れば外の世界があり、この1階層にも現代人がウジャウジャと数体の魔物に対して群がっている。……さて、感傷はこのくらいにして先に進むとするか。』


 スカアハ先輩は周りにいる人御構い無しにどんどん先に進んでいく。そして下に続く階段の前で止まりカメラに向かって説明してくれた。


『ココが、下の階層に続く階段だ。基本的にはここを降りてどんどん強くなる敵と戦いながら資金源となる魔石を取るんだが、一気に下の階層におりたいときは……』


 そう言って階段を迂回し、壁のようなものの前で止まり、壁に埋まってた逆三角形のようなスイッチを押した。すると逆三角形は橙色に光り、暫くすると隣の壁が真っ二つに割れて人が10人ギリギリ入れるスペースが出てきた。


「階段の他にも瞬間転移で階層をまたぐことが出来る装置がある。この装置の名は【エレベーター】と呼ばれていて、ショッピングモールやビルの階層移動に使われる奴の元だ。』


 ヘぇ〜。あの装置ってこれが元だったんだ。僕はエスカレーターの方が好きだけど。エレベーターは階層を移動する時ふわっとして驚くからあんまし好きじゃない。

 画面の中のスカアハ先輩はエレベーターに乗り10階層を指定してドアを閉じた。画面が一瞬光に包まれた後、


 チーン


 という音の後にドアが開き先程までと違う光景が出てきた。10センチ程の草が辺り一面に広がっていて、遮蔽物は枯れた木しかなく、霧が立ち込めていて10メートル先の近しい距離でも全くわからなくなっていた。


『10階層に来てはみたが、人が本当にいない。画面の中じゃあ誰も写っていないんじゃないか?霧のせいもあるけど。詳しく見たいときは『遠視(クレアボヤンス)』という魔術か『超感覚(スーパーセンサー)』の魔法が必要だな。今回はカメラに遠視をすることでどうなっているか見せてやるか。』


 画面の中のスカアハ先輩は呪文を唱えた後淡く光る指先を画面に押し付けた。するとさっきまで全く見えなかった先が鮮明とは程遠いものの見えるようになっていた。


『ここいらの魔物は

 大型の二足歩行する豚のような顔をしたオーク

 オークの上位種であり、知能が比較的高くそのデカさも半端ないキングオーク

 周りに擬態して獲物を狩る蛇のような見た目をしたアサシンスネーク

 その上位種でそいつらの指揮をとるスネークサーヴァント。


 主な奴らはこいつらだな。こいつらは集団で襲ってくることが多いし、その連携もなかなか馬鹿にできない。『ソロ殺し』や『初心者殺し』とよばれる連携はさしものあたしでも一桁階層と比べて数秒手こずっちまうくらいだ。

 まぁ。こんなダンジョンだが、ここで稼ぐには免許が必要になる。その免許は18歳にならないと取れなくて、それに加えて単独で稼ごうとすると色々な税が稼いだ額から差っ引かれて10分の1残れば儲けもんくらいだな。魔法や魔術、さらには魔道具を取り扱う会社なんかは魔術や魔法が使える人をここに派遣して魔石の供給、研究、運用している。会社によっては取った魔石の大きさや数で給料を上乗せする形だったり、毎月一定額の給料を出す代わりにノルマを決めたりと会社によって様々だ。

 あたし達理想学園の影の国は特例として18歳未満の段階でここで魔石を稼ぐことを認められて、夏休みと冬休み、更には春休みに3泊4日のダンジョン合宿を開催して取った魔石を日頃お世話になってるヘパイストスの社長に押し付けて自分専用の武器を作ってもらうのさ。卒業の後もここに来る機会があるやつなんかは卒業制作として作った武器を相棒として使っているくらいだからな。

 もちろんこれらは裏で行われていることだから表にはダンジョンのだの字も出てこない。魔道具一式は使い捨ての電化製品として世の中に浸透しているからな。電池も中には魔石が込められているタイプも存在する。その秘密を守る意味でも安全の意味でも電池の解体を行ってはならないと説明書に書いてあるし、専用の業者に回収してきてもらうのもそういった裏事情があるということさ。

 理想学園は魔術魔法に関してはトップクラスの成績を残しているから、そういった会社の求人がひっきりなしに続いている。


 とまぁ。説明は以上か。何か聞きたかったら直接あたしの元まで来るようにな。それじゃ新入生の諸君!。』



 そういって画面がフェードアウトする。あまりの新事実に開いた口が塞がらなかった。


「まぁ、なんだ……」

「はい?」


 スカアハ先輩が何かを言いたげな様子なので黙って聞く姿勢になる。


「このビデオは新入生用に作られたのであってお前のために作る暇がなかった。だから転校生に聞かせてるのに画面の中のあたしは新入生と連呼して、正直死ぬほど恥ずかしい。」


「他に言うことあるだろ!!なんで真っ先にそんなどうでもいいこと言うんだよ!!」




 そうツッコミを言わざるをえなかった。

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