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英雄達は波乱を望まない  作者: 樫尾格
学園一年生編
1/18

第一話

 以前書いてた小説は内容がどん詰まりしてしまったため、エタりました。その間他の小説を読んで「あ、これならいける」と感じ、その場のノリで書いて投稿しました。こっちは削除しない予定です。



 作者は前回の失敗から何も学んでねぇな。

第1話


 この物語は作者が日本にとても良く似た世界で日本とはかけ離れた、でもどこか日本チックで日本じゃない世界の学び舎で生徒の英雄達が騒動を起こし、それに巻き込まれる主人公を描く物語である。




 ???視点



 これは地球という星の日本とはかけ離れた、それでいてどこか似通った別の世界のお話。


 その世界には魔法があり、魔術があり、特殊能力があったりと、ファンタジー作品を連想させるような力に満ちている


 しかし、よくあるファンタジー世界の、あの中世ヨーロッパの封建制度社会とは違い、見た目だけは完全に現代の社会で、行き交う人々もまた、普通と変わらないそんな世界。


 そんな世界のある都市の郊外に建つ広大な敷地を持つ学園…理想学園。初等部から大学部まであり、私立の学校のように…いや、それよりも設備が整っているまさに理想の学園。


 物語の主人公はつい最近まで普通の生活…魔法や魔術と縁遠い生活をしていて、親の都合で引っ越してきた16歳の男子高校生、柏野歌火(かしのうたか)。まるで女の子のような顔をしており中肉中背の女装させれば確実にナンパに声をかけられるなんの変哲もない普通の高校生だったはずの少年である。


 この物語はそんな彼の転校初日から卒業までの軌跡を辿ろうと思う。





 柏野歌火視点


 「はぁ、」


 今後のことを考えるとどうしてもため息が出てきてしまう。どうしてこんなことになったんだろう。

 前の学校で、ようやく友達ができそうかなと思ったときに父の転勤が決まってしまったのだ。父はこう言ってたっけ?


『実はな、父さん。会社で社長の失敗をカバーしてしまったら、その社長から取り入れられてある支店を任されることになったんだけど、その支店がまさかあの理想学園周辺に構えた店だったとは知らなかったんだ。それを社長に言って辞退しようとしたときにはもう全部事が終わってて…理想学園の関係者の情報漏らされたくないからとか今の暮らしより断然良くなるからって理由でその支店の近くに家族全員で引っ越さなくちゃならないんだ。もちろん歌火も歌流(うたる)も今通ってる学校から理想学園に転入する手はずにもうなってて……すまん!でも今より良い生活は保障するから!!』


 家族は僕と母親と父親と一つ違いの妹の歌流で生活していたから急にそんな話が入ってきてびっくりだった。

 僕の引っ越した家は理想学園高等部まで徒歩10分ってところで、自転車を使うと登校の諸々の検査で15分かかるっていうから徒歩で通っている。

 今日は転校初日だから職員室で挨拶を済ませた後に教室に案内してもらってっていう流れになっているから、少し早めに家を出てきた。


「はぁ。理想学園かぁ。」


 理想学園は小耳に挟んだくらいしか情報を聞かないけど、優秀な人材を育成するカリキュラムに加え、魔法や魔術の実践訓練もあるらしい……そこらへんは噂だけど。

 しばらく地図通りに歩いてきたら、地図にある情報と違うところに出てきた。


「あれ、ここって…公園?こんなところに公園ってあったっけ?」


 あれ?おかしいな。地図の通りに来たはずなのに。道に迷ったかな。今まで道に迷ったことなんてなかったのに。


「えーっと。確かこっちには__あっあれ?う、うわああああぁぁぁぁぁぁぁ」




 あの時のことは今でも覚えている。もしあそこで地図を見ながら歩いていなければ………前方不注意になっていなければ、僕の人生はここまで劇的に変化することはなかっただろう。結論からいうと僕はその時………奈落に落ちた。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



「う、うーん。あっ、あれ?ここは?僕はさっきまで学校に行ってたんじゃ」


 目の前に広がるのは広大な湖。後ろを振り返れば生い茂った木々が。一体僕はさっきまで何をしてたんだ?どうして道に迷った後こんなところにいるんだ?さっぱりわからない


 しばらくウンウン唸って悩んでいたらそれは起きた


「ようやくお会いできました。次代の英雄様…」


 湖から人が出てきた。淡い水色の髪を腰まで伸ばし、白いワンピースから覗く肌は白く、瞳は紅に染まっている。身長は僕と同じくらいかそれよりも高い。


 「え、えと。次代の英雄?な…何それ。ていうか、君誰?ここどこ?」


 僕はその女性に見惚れながらそう問いかけた。


「あっ、申し訳ございません歌火様。ここは現世と神界を隔てる空間に出来た選定の間。私は現世と湖を司る女神。エレインと申します。この場だけとは思いますが以後お見知り置きを」

「はぁ、なんで僕の名前を?」

「この世界の厄災を払い、人々を救い導く英雄様の名前を知らずとなれば現世の女神の恥にございます。」

「あっ、そう。」


 いまいち要領がつかめない。なんで僕が英雄なのか、僕に厄災を払える力は僕の知る限りではないはずだ。魔法が厄災を払う力だとすれば僕には当てはまらない。なんてったって僕は魔力がないのだから。

 魔力がない人はこの世界には珍しくない。魔術や魔法が使える人は軍や諜報機関、更には暗殺部隊に所属する割合が多いが、それだけで世界が成り立っているわけではない。

 生産職や教育機関など魔術などを使えなくても不自由しない職種など山ほどある。逆に魔力を持ってる人の割合の方が魔力を持ってない人より少ない方なのだ。


 そして僕は魔力を持たないため魔力を持ってる人より非力だ。なのになんで僕が英雄になるんだろうか?


「あの、僕…魔力持ってないんだけど…」

「存じております」

「じゃあなんで僕が英雄になるの?」

「そう世界が成り立っております。」

「他の人じゃダメなの?」

「他の人では務まることができません」


 謎だ。全くもって謎だ。どうして一般人である僕がそんな絵物語のような英雄になれるのだろうか。ん?絵物語?

 この世界には物語はあるけれどそれはここ最近の出来事を書籍化されてあるだけで、英雄なんてものは出てこない。じゃあどうして僕がその絵物語を連想することができたのだろう。頭の中にモヤモヤとした霧のような物がかかる。自覚してつかめそうなのにつかめない。そんなもどかしさ。


「ようやく封印が解けてきましたね」

「えっ、封印?」

「はい。あなたには前世より古い、いにしえの記憶が封印されているのです。今、その封印を解いて差し上げますね。」


 女神が両手をふわりと前に出すと、その手に淡い光が立ち込めた。いつもよく見た魔法の片鱗。


「あっ、ぐぁぁ、ガア”ア”ァァァァァァ‼︎」


 突然入ってきた情報に僕はたまらず声を上げてしまった。その苦痛は言葉にするのも考えるのも遠く及ばないほどだ。なぜ平家物語が出てきたかは僕にもわからない。


「ア”ア”ア”ア”ァァァァァァ。ハァ、ハァ、はぁ。」


 ようやく収まった時には、いま僕が生きてきた約16年の記憶と、遠く別の世界の記憶が混同した、とても気持ちの悪い状況になっている。


「痛みは引きましたか?」

「あっ、あぁ。」

「では、あなたにこれを返還したいと思います。受け取ってください。」


 そう言って女神が一冊のノートを取り出す。16年の記憶ではあのノートに心当たりはないが、別の記憶ではあれは相棒とまで呼んでいた僕の大詩篇集だ。その名も…「ソロモンの小さな鍵(レメゲトン)!」

「そう。これはあなたが私に残した最後の預かり物。ようやくお会いすることができましたね。ソロモン様……」


 急にこの女神が変質した。より正確に言うと性格が変わった。

 今までの女神を体現したような出で立ちから普通の女の子のように変わった。そしてそのまま僕に覆いかぶさるように抱きついてきた。


「えっ、ちょっ。あの!」

「ハァ〜、ソロモン様〜。ソロモンさまぁ〜。わたくし、もう一度お会いしたかったです。もう一度お会いできて嬉しゅうございますぅ〜。クンクン。ハァハァ。」


 女神…だったものはおれの胸板に顔を擦り付けて涙を流しながら僕の昔の名前を連呼している。というか匂いを嗅がないでほしい。


「えっ、えっとー…ごめん。記憶は戻ったんだけど人の名前とかは思い出せないんだ。」

「ふぇ?」


 女神が間抜けな声を上げた。僕は女神に記憶が戻った時の話をした。


「僕の昔の記憶は、各地を転々としながら国々を裕福にしようとしてたんだ。」

「はい。それは存じております。」

「でも…僕にはその事実の記憶だけがあって、自分が何者であるかとか、誰と会って誰と話した記憶が一切ないんだ。」

「えっ、つまりそれは」


「うん。君に会った記憶も、もちろん覚えてない。」

「そ…そんな……」


 女神はくずおれるようにその場にへたり込んだ。僕がどう声をかけていいのか迷っていると女神がガバッと急に前を向き出した。


「いいえ。ここであきらめるわけにはいきません。何か方法があるのでは…」

「ていうか、僕はこれからどうなるの?」

「あっ、そうでした。これからソロモン様。いえ、歌火様にはその詩篇集を使って学園を過ごしてもらいます。」

「えとー。なんで?」

「その詩篇集の使い方はご存知ですよね?では詳細を省きますが、あなたは将来世界を救う英雄になることが運命で決まっていますが、学園在学中に何者かに狙われて命を落とすことになるのです。」

「ふーん、そうなんだ。ソロモンの小さな鍵の使い方はわかるけど…って、えぇぇぇぇ!?」

「どうかされましたか?」

「いや!英雄になるのもちょっと気後れしてたけど、僕学園にいる間に殺されるの!?」

「はい。なぜ運命で決まっている因果に割り込むことができたのか甚だ疑問ではございますが、あのまま普通に学園を生活していれば確実に殺されてしまいます。」

「えー!!じゃあどうすれば…」

「ですから、ソロモンの小さな鍵をお渡しになられたではありませんか。それがあれば運命を覆すことができる可能性を出すことができるのですから。」

「こ、これで、なんとかなるの?使い方とかはわかるけど、こっちでも通用するかは……」

「やってみなければわからないでしょう。何事も自分から進んで道を作らなければ運命なんてものに流されてしまうのですから。」


 最初の頃の厳格とした女神はもう僕の目の前から消え失せてしまった。僕は一体何をしているんだろう?

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