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73 〈幻夢(VR)〉で億万長者になる

「それでは、達者でな」

「お世話になりました。師匠もご壮健に」

 長らく留まったグリームニルの元を去り、俺は次の『試練』に向かうことにした。まだ三つ目の試練であるのに、随分と長い時を過ごしてしまった。

 無論、それだけ充実した日々ではあったのだが、外の世界とは時間の流れが違うとはいえ、ここで過ごした日々は、かけがえのないものであったのは確かだ。

「それでは、次の『試練』へと向かう『門』を開こう」

 グリームニルはそう言うと、俺の知らない言葉を紡ぎ出す。すると、俺の目の前に輝く門が現れた。スマラは影へと飛び込み、マグダレナとエメロードは合一する。すっかり大きくなった仔狼達を、〈安息の揺り篭〉に迎え入れた。

「機会があれば、また会おう。工房はあのままにしておくぞ」

「ありがとうございます。またいつか」

 俺はフレキゲルの首筋を叩き、グリームニルに頭を下げた。そして、振り返ることなく、門を潜る。

 おそらく、もうこの『世界』に来ることはない。ダンジョンの1イベントである以上、そしてこのダンジョンのイベントが〈運命の神〉による( 恐らくは無作為な )選定にある以上は、もう一度訪れることは奇跡と言える。

 だが、ここで経験したことは、紛れもなく『真実』だ。俺はこれだけの〈世界(シナリオ)〉を考え、作り上げた製作者に敬意を評したい。いつ戻れるとも知れない中で、俺は間違いなく、この世界(オーラムハロム)を楽しんでいる。

『さあ、次の試練は何かしら?』

『どんな試練でも、ヴァイナスなら大丈夫』

『わたしたちもついているしね!』

『ああ。皆頼りにしているよ』

 結局スマラも合一装備を造ったのだが、そのおかげで、嬉しい機能ができた。合一装備同士で念話ができるのだ。これに装備者が加わることもできるので、ちょっとした同時通話状態で会話ができる。

 おかげで三人娘は移動の間、ほぼ合一しっぱなしで会話している。俺も加わることがあるが、大半は三人で姦しく過ごしている。

 門を抜けた先は、灼熱の溶岩地帯だった。雪山の次に溶岩地帯とは、運命の神も中々洒落ているじゃないか。

『…暑いな』

『私、絶対外には出ないからね!』

『私も暑いのは苦手かも』

『マスター、頑張って!』

 三人は異口同音に合一解除を拒否する。いざ戦闘になったら手伝ってもらえば良いし、いいんだけどさ。微妙に釈然としない。

 〈宿りの外套〉を着ていて尚、感じる暑さに自然と汗が伝う。踏みしめる地面から感じる熱さも、周囲の熱量を伝えてきた。

 まずは何か目立つものはないかと探していると、殊の外簡単に視界へと入ってきたのは、溶岩の河の中に燦然と輝く、黄金の都市だった。

 それは街門から建物、城壁や塔に至るまで、全てが黄金で覆われていた。外壁の周囲を溶岩の河が取り囲み、滝のように流れ落ちる溶岩が、街のそこかしこへと流れ込んでいる。それだけの熱量の中、都市の黄金は溶解することもなく、溶岩の赤光に照らされ、キラキラと煌めいている。


 黄金境(エルドラド)…!


 俺の脳裏にその言葉が浮かび上がる。都市の姿は、伝説の黄金境を髣髴とさせたのだ。俺は吸い寄せられるように、外壁に設けられ、開け放たれている街門へと進んで行った。

『凄いわね…、金、金、金! 全部金でできているのかしら?』

 スマラが興奮した様子で語りかけてきた。俺は慎重に歩を進めながら、

『調べてみないと何とも言えないが、只の金じゃあないな。金ならとっくに溶岩の熱で溶けている筈だ』

 と答えた。実際、外套越しに感じる熱量はかなりのものだし、試しに端切れを溶岩の河に投げ入れると、溶岩に触れる前に燃え尽きた。にもかかわらず、建築物を覆う金は溶けることなく、溶岩の光を受けて輝いている。

『いずれにせよ、都市の中に入ってみるしかないな。他に目立つ場所もないし、これだけの場所を探らずに放置することはないだろう』

『そうね。ぶっちゃけ『試練』のための場所なわけだし、調べれば何かしらあるでしょ』

 身も蓋もないスマラの言葉に、俺は頷いた。これが罠だったとしても、流石に攻略不可能ということはあるまい。こういったある種一本道ダンジョンで、攻略途中の不可能イベントは理不尽過ぎる。そうでないことを祈るばかりだ。

 俺は溶岩の河に掛かる黄金の橋を超え、黄金の街門を潜る。その先には、想像通り、いや想像を超える光景が待っていた。

 黄金で作られた町並みには、要所要所には宝石が飾られ、施された彫刻と共に目を楽しませてくれる。

街中を縦横に流れる「用水路」には、水ではなく溶岩が流れ、熱さを気にしなければ、赤や白と金のコントラストが幻想的ですらあった。

 唯一つ、違和感を覚えるのは、これだけ見事な都市でありながら、住人らしき存在が全くいないことだ。この灼熱の都市で生きられる生物が、殆どいないであろうことは想像できるが、それにしたって誰もいない、というのは気になった。

 既に滅びた廃都だというのだろうか? 俺は考えを巡らせつつ、静かに歩を進めていく。

 ゆらゆらと陽炎の立つ黄金の通路に、唯一つ動くものとして、俺が進んで行く。周囲の建物には、依然として動くものの姿はない。

 そのまま進むにつれ、俺の目に映ったのは、都市の中央に建てられた、巨大なオブジェだった。

 直径100メートルはあろうかと思われる円形の舞台の中央には、高さ50メートルを超える五角柱の柱が聳え立つ。その頂点には、巨大な黄金の鳥が雄々しく羽搏かんとする姿で佇んでいる。

 それは四方から流れ込む溶岩の赤光を照り返し、まるで生きているかのように見えた。

 オブジェの奥には長い階段があり、その先には黄金の宮殿らしき建物が見える。都市の最奥であろう場所に、俺は意を決して進んで行く。

『神殿? あの建物の中に誰かいるのかしら…』

『さあな。だがこのままじゃ試練が始まらない。行ってみるしかないさ』

 俺がそう言って舞台へと足を踏み出した瞬間、

「待ち兼ねたぞ、新たな〈稀人〉よ!」

 大気を震わせる声が舞台へと響き渡った。俺は声を主を探し、周囲を警戒する。


 上!?


 俺はオブジェを見上げると、そこには強大なプレッシャーを秘めた視線で俺を見下ろす、黄金の鳥の姿があった。

 違う、黄金の鳥じゃない! よく見れば、要所を黄金の鎧で固めた、燃え盛る身体の赫色の大鳥…!

「我が『世界』へようこそ! 我が前へ進み出るは、全て我に捧げられる供物であり、栄誉である! 〈稀人〉よ、お主も今までのものと同様、我が炎にて永劫の祝福を得るが良い!」

「成程、貴方自身が『試練』ということですか」

 俺の問いに、大鳥は炎に包まれた翼を広げ、

「然り! 天の星が全て地に堕ち、煌めく燦玉と化そうとも、我に勝つことは能わず! 万に一つもあり得ぬが、我を討ちし時は、我が『宝』は全て、お主のものとなろう!」

 ふむ、難しい言い回しで分かり辛いが、要はこいつに勝てば、試練は合格、ってことだな。

「貴方を倒さねば、この先へと進むことはできないわけだ。それなら話は単純だ。俺は貴方を倒して先へ進む!」

 俺はそう言って〈無限の鞘〉から〈護身剣〉を、腕輪から〈肆耀なる焔〉を取り出し、眼前へと構えた。

 大鳥は翼を羽搏くと、天へと舞い上がる。そして一声大きく啼き、

「その意気や良し! 〈稀人〉は須らく我へと挑む者也。我が名はワラール! 猛き炎の神にて、火山を司る炎の神よ!」

 と名乗りを上げた。俺は一言、

「ヴァイナスだ!」

 と叫び、舞台を駆け抜ける。既にどの魔法を唱えるかは決めていた。俺はワラールに向かって進みながら、【魔刃】の魔法を唱えた。〈護身剣〉と〈肆耀成す焔〉を魔力の光が包み込んだ。続けざま、スマラたちからの【神速】【倍化】の魔法が俺を包む。速度が上がり、体力が、器用が倍化したことを感じながら、一気に距離を詰めた。

 それに対して大鳥の答えは、羽搏いた翼から巻き起こる、灼熱の焔嵐だった。溶岩もかくやという熱量を持った嵐が、俺の身体を一瞬にして包み込んだ。すぐさま竜盾(エメロード)角獣盾(マグダレナ)が俺の前へと進み、炎を防ごうとする。竜盾からは螺旋を描くように翠の風が放たれ、煽られた炎が角獣盾の上を流れていく。

 二盾に護られながら、俺は炎の中を進む。


 熱い! だがこの程度、どうだっていうんだ!


 吹き荒れる業火の中、歯を食いしばって耐えた俺は、身を包む炎を突き抜け、一瞬にして五角柱へと辿り着くと、垂直に聳え立つ柱、その側面を勢いのまま駆け登る。

 瞬く間に頂点へと至ると、そこから跳躍し、弾丸と化したかのように、真っ直ぐに大鳥へと飛び込んでいく。

「愚かな! 我の焔に耐えしことは誉めてやろう。だが、炎に耐えた如きで我に飛び掛かるとは、無力を知るが良い!」

 炎を耐えられたことに動揺も見せず、ワラールは俺を迎え撃った。黄金の鎧を身に纏い、鋭利さを増した爪が、嘴が、剣翼が俺を襲う。

 俺はその攻撃を避けることもせず、両手に構えた剣を突き出すと、そのまま大鳥へと突き進んでいく。

 二振りの剣と、大鳥の攻撃が交錯する。そして、それはあっけなく結果が出る。

 一筋の矢と化した俺は、大鳥の攻撃をものともせずに弾き飛ばすと、その勢いのまま、大鳥の身を貫いた。

「な…?」

 ワラールは呆然と、己が身に穿たれた致命の痕を見、そして突き抜けたまま、頭上で【飛行】の魔法を唱え、再び剣を構えた俺を見た。

「馬鹿な…! 我が、焔神である我がこのような…」

 己の身に起きたことが認められないのか、呆然と俺を見上げるワラールは、そのままゆっくりと落下していく。そして甲高い音を立てて舞台へとその身を打ち付けると、そのまま動きを止めた。


 何だ? こちらを油断させるための演技か?


 俺は上空に留まったまま、ワラールが動き出すのを待つ。だが、ワラールは一向に動く気配がなく、遂にはその大きな身体に翼から炎が燃え移り、焼け始めてしまった。


 勝った…。こんなに簡単に勝っちゃったよ…!


 俺はゆっくりとワラールに近づき、その『命』が尽きていることを確認すると、自分でやったことに驚きを隠せないでいた。

『やったね! 強そうだったけど、大したことなかった!』

『私たちが合一を解く必要もなかったわね』

『ヴァイナス、あなたどれだけ強くなったのよ…』

 口々に賞賛( ? )の声を上げるスマラたちに返す言葉もなく、俺はもう一度ワラールを確認する。

 ワラールの身は、その身を包む炎が勢いを増すと、そのまま燃え上がり、焼滅していく。そして、最後に一片の赫色の羽根を残し、跡形もなく消え去った。

 俺は羽根を手に取ると、熱さがないことを確認し、〈全贈匣〉へと収める。そして、この場にそれ以上の変化がないことを確かめると、宮殿へと続く階段へと進んで行った。

『俺も吃驚しているよ。まさかこれほどまで強くなっているとは』

 階段を登りながら、俺は先ほどの闘いを思い返していた。合一した装備の強さもさることながら、〈肆耀成す焔〉の威力にも驚かされた。いくら俺と共に『成長』するとはいえ、あれほどのものとは。

 どうやら、俺の強さは想像以上に高まっているらしい。俺は手に入れた力に身震いすると、気を取り直して階段を登っていく。

 階段を登り切ると、俺は宮殿の中へと足を踏み入れる。外とは対照的に蒼い光に照らされた空間は、外の熱さを感じさせずに、清浄な空気を漂わせていた。

 そのまま歩を進めていくと、奥から何かが流れるような音が聞こえてきた。進んで行くにつれ、段々と音は大きくなってくる。

 やがて目の前に現れた光景に、俺は言葉を失う。

 宮殿の最奥であろう場所には、巨大な天秤が置かれ、そこにはまるで滝のように、膨大な量の金貨が流れ込んでいた。金貨が天秤を満たすと、天秤の皿が傾き、山と積まれた金貨が流れ落ちる。そうして空になった皿に、再び金貨が流れ込んでいく。足元は、零れ落ちた金貨が床を埋め尽くしていた。

 留まることなく繰り返される光景に、暫く見蕩れていると、不意に掛けられた言葉に、俺は周囲を見回した。

「ワラール様を退けて、この場に辿り着く者がいるとは…。此度の〈稀人〉は今までの者とは格が違う、ということですか」

 声の主は、動き続ける天秤の台座へ寄り添うように佇んでいた。その姿は、一見するとヒューマンの女性に見える。俺は居住まいを正し、

「確かに、ワラールを退けてこの場へと来ました。貴方は?」

「私はマナ。ワラールの巫女」

 俺の問いに、女性は表情を動かすことなく答えた。なんだろう、この世界の巫女って表情を動かしてはいけないとか、決まりがあるのだろうか?

 俺は我が家の巫女(リィア)のことを思い出しつつ、マナとの会話を続ける。

「この金貨が、ワラールの『宝』なのですか?」

「そうです。貴方はワラール様を退けるという、偉業を成し遂げました。『試練』を乗り越えた者には、然るべき報酬が与えられます。貴方が望むだけ、この場にある金貨をお持ちなさい」

 マナの説明に俺は頷くと、早速〈全贈匣〉から〈長者の蔵〉を取り出した。

「ワラールは太っ腹ねぇ。この金貨全てくれるんでしょ?」

 スマラが合一を解いて姿を現す。エメロードとマグダレナもそれに続いて合一を解いた。

 人化したまま、俺の傍に立つと、滝のように流れる金貨を見上げ、

「凄いね。わたしたちも手伝う?」

 と言ってきたが、俺は首を振り、

「多分、大丈夫じゃないかな? 少なくなってきたら、集めるのをお願いするよ」

 と言う。俺達の会話が気になったのか、マナが不思議そうに尋ねてきた。

「貴方一人で持ち帰るだけの金貨で良いのですか? 随分と謙虚なのですね」

「謙虚? いえいえそんなことはありませんよ。全部貰うつもりですか」

 マナの問いに、俺は肩を竦めつつ、滝の注ぎ口にあたる天秤の皿の上に〈長者の蔵〉を置き、左手を変化させて、直系2メートルほどの漏斗の様な形を作り、注ぎ口を〈長者の蔵〉の淵にセットした。

 興味深そうに見つめるマナの表情は、それでも変化していなかったが、〈長者の蔵〉の中へと流れ込む金貨が一向に溢れないことが分かると、徐々に表情が変化してきた。目を見開き、額には汗が浮かぶ。その間にも、金貨は留まることなく〈長者の蔵〉へと注ぎこまれていく。

「あ、あの、その壺は…?」

「これは〈長者の蔵〉っていうマジックアイテムですね。金貨しか入りませんが、金貨なら幾らでも入りますよ」

 俺が金貨を回収している間、スマラたちはお約束のように、山と積まれた金貨の上で、金貨を掬い上げたり、ゴロゴロと寝転がってはしゃいでいる。

 回収が進むにつれ、どういった機構になっているのか分からないが、徐々に足元の金貨が沈んでいく。俺は天秤の皿の上に乗り、重みが変わらず、上がりっぱなしの皿の上で、金貨を注ぎ込み続けた。



 かなりの時間を経て、遂に宮殿の床が見えるまで減った金貨に合わせるように、注がれる金貨が少なくなってきた。最早金貨で遊ぶこともできず、手持無沙汰なスマラたちに、

「そろそろ注ぎが止まりそうだから、残った金貨を集めてくれ!」

「了解~」

 と指示を出す。スマラたちは残った金貨を回収し始める。マナは呆然と、部屋を埋め尽くしていた金貨が〈長者の蔵〉に消えていくのを見つめている。

「まさか、こんな方法で金貨を持ち出す者がいるとは…」

「え? 今までの〈稀人〉はどうしてたのですか?」

「彼らは財布や背負い袋に詰めるだけ詰めると、名残惜しそうにしながら次の『試練』へと向かいました。とはいえ、その数は片手で収まるほどですが」

 ワラール様を退けるということは、それだけの偉業なのですよ。そう言って呆れたように俺を見つめるマナに、俺は苦笑を返した。それにしても、〈長者の蔵〉は凄いな。機能が限定されているとはいえ、特化した性能は限定された環境では、無類の強さを発揮するという良い例だろう。

 とうとう注がれなくなった漏斗に、スマラたちは、集めてきた金貨を注ぎ込む。何だか、パチンコの出玉を計算しているみたいだな。

 そんなことを考えつつ、最後にもう片方の皿に積まれた金貨を回収した俺は、〈長者の蔵〉を〈全贈匣〉に戻しつつ、マナに『門』を開いてくれるようお願いする。

「この部屋から金貨が消える日が来るとは…」

 マナは苦笑しつつ、次の試練へと向かう『門』を呼び出す。

 初めて表情らしい表情を見せたマナに、俺も笑顔を向けつつ、

「結局、この部屋にはどれくらい金貨があったんだ?」

 と尋ねると、マナは立てた人差し指を頬に当てつつ、

「億、といったところでしょうか?」


 …へ?


 億って、一億ゴルトってことか!? 俺はあまりの数字に目が点になる。ここまでの探索で手に入れた金貨を合わせても、百万に届くかどうかといったところなのに、いきなり億である。

 現実世界に戻り、還元システムで換金すると…、


 十! 億! 円!


 俺は思わず笑ってしまった。いきなり億万長者である。現実世界に戻っても、俺一人なら一生遊んで暮らせる稼ぎを手に入れてしまった。横でスマラたちも目を丸くしている。

「ちょっと、こんなに金貨があっても使い切れないんじゃない?」

「まあ良いじゃないか。金はあって困るものじゃない。だからといって無駄遣いするつもりはないけど」

 スマラの言葉に、俺は笑い過ぎて目に浮かんだ涙を拭いつつ答えた。スマラは「そんなに儲けたんだから、美味しいお酒を買って!」とせがむので、試練が終わったら買ってやると約束する。皆にも何か買ってあげられるな。戻ったら皆で買い物しよう。

 予想外の臨時収入にはしゃぐ俺達を、マナは苦笑しつつ待っていてくれた。落ち着いたところで俺は慌てて向き直り、スマラたちは合一する。

「それでは、次なる試練への『門』を開きます」

「お願いします」

 マナの言葉に頷くと、マナが『門』を呼び出した。次は一体どんな試練なのだろうか。俺は門を潜りつつ、次の試練へと気を引き締めた。

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