67 〈幻夢(VR)〉で神の愛を知る
ネフの試練を終えた俺が、門を潜って訪れたのは、先ほどまでの空間とは全く違う場所だった。見渡す限りに広大な砂漠が広がり、その果ては、現実世界よりも遥かに遠くを見通す俺の目をもってしても、見ることができなかった。
砂漠に特有の強い、砂塵を含んだ風は吹いておらず、心なしか照り付ける太陽の光も、穏やかに感じられた。それでもスマラには暑いらしく、
『これはキツイわ。私は影に入ってるわね』
と言ってさっさと影に潜ってしまった。俺は視線を戻す。
俺が立つ砂丘から見下ろす位置には、豊かな水を湛えたオアシスがある。オアシスの周囲には木々や草花が生い茂り、色とりどりの蝶が、蜜を求めて花々を廻り羽搏いている。
目を転じると、色彩も豊かな鳥たちが木々の合間から囀り、また水辺で羽根を休めていた。
オアシスの畔には、雪花石膏のように美しい白亜の神殿があり、周囲を包み込むように流れる水が、オアシスへと注ぐ無数の小さな滝となって、煌めく宝石のように輝いている。
俺は砂に足を取られないように、慎重に歩を進めながらオアシスへと向かう。
神殿へと向かう道すがら、俺は周囲の景色に心を奪われる。俺が近づいても逃げることのない鳥や蝶たちの様子から、この場所に危険があるとは思えなかった。
楽園のような光景に心を和ませながら、俺は神殿へと辿り着いた。雪花石膏によって作られた壁面が、陽光を浴びた水の光の照り返しによって、キラキラと煌めく。門や扉もなく、開放的な神殿に、俺はゆっくりと足を踏み入れていく。
神殿の中も、外と同様に雪花石膏によって白一色に染まっていた。天井や柱に施された浮彫も見事で、ここが試練のための迷宮であることを忘れてしまいそうだった。
神殿の中央部へと足を踏み入れる。そこには、外の景色とは違う、しかし別の美しい光景が待っていた。
すり鉢状に造られた円状の階段の底に、外のオアシスから引き込んでいるのだろう、清らかな水が湛えられ、泉となっている。その中心となる場所に、小さな浮島があった。
浮島には天蓋付きの寝台が置かれ、床には若草色の絨毯が敷かれている。寝台の傍には小さなテーブルと椅子が一組置かれ、そこにはこの神殿の主であろうか、一人の女性が座り、物憂げに肘をつき、物思いに耽っていた。
美しい。
その女性は、正に究極の美、そのものだと思えた。美醜とは、人それぞれの主観であるが、少なくとも俺にとって、物憂げな表情を浮かべる姿を見た瞬間、今まで出会って来た全ての女性の中で、最も美しいと断言できた。
思わず見蕩れて足を止めると、女性は俺に気付いたのか、顔をこちらに向けると、まるで蕾が花開くような微笑みを浮かべる。そして、神殿と同様に、透き通るような白磁の手を伸ばすと、ゆったりとした動作で、俺を招いた。
俺は引き寄せられるように浮島へと近づく。幅の広い階段状の床を降り、泉へと近づくと、俺を導くかのように、泉の水が左右に分かれ、浮島へと続く、一筋の道が現れた。
俺は迷いもなく開かれた道を進んで行く。浮島へと辿り着くと、女性は優雅に立ち上がり、俺の手を取って椅子へと誘った。
「ようこそ、わたくしの宮殿へ。わたくしはシェアト。この宮殿の主です」
「初めまして。ヴァイナスと申します」
「ヴァイナス…。素敵なお名前ね。よく来てくれました。今飲み物を用意しますわ」
シェアトはそう言って微笑むと、いつの間にかその手には雪花石膏でできた酒杯があり、テーブルの上に置かれていた水差しを取る。優美な曲線を描く刺し口から注がれるのは、芳醇な香りの葡萄酒だ。
俺の手を取り、盃を握らせる彼女の手は、柔らかく暖かだった。俺は勧められるままに盃を口にしようとし、ネフの試練を思い出して、躊躇してしまう。
そんな俺の様子に、シェアトは鈴の鳴るような声で笑い、
「どうかしましたか?」
と尋ねてきた。コトリと首を傾げる様も愛らしく、サラサラと零れ落ちる艶やかな金髪が、光を照り返しキラキラと輝いた。
「いえ、何でもありません。頂きます」
俺はそう言って葡萄酒を口に運んだ。念のため、少し口に含むと、風味を味わいながら、味を確かめる。
香りに負けず、素晴らしい味の葡萄酒だった。鼻に抜ける香りと共に、口の中一杯に熟成された味が広がった。
毒ではない。『試練』ではない純粋なおもてなしを受けて、疑ってしまった自分を恥じつつ、ゆっくりと盃を傾ける。シェアトはそんな俺の様子を微笑みながら見つめていた。
「お口に合いましたか?」
「素晴らしい味です。こんなに美味しい葡萄酒は初めて飲みました」
俺の手放しの称讃に、シェアトは目を細め、
「お口に合って幸いでしたわ。久しく訪れることのなかった稀人ですもの。ごゆるりとお過ごしくださいませね」
と言う。俺も笑顔で頷きかけ、ここに来た目的を告げる。
「そうしたいのは山々なんですが、俺はここに『試練』を受けに来たのです。シェアト様からは、どのような試練があるのでしょう?」
俺の問いにも、シェアトの微笑みは変わらず、
「わたくしのことはシェアトと呼び捨てで構いませんわ。わたくしは『試練』などという、大仰なものはご用意しておりません。それよりも、ぜひお話を聞かせて頂きたいわ」
と言われた。話を聞かせろと言われても…。突然の提案に躊躇する俺を見て、シェアトは微笑んだまま、
「どんなことでも良いのです。貴方が見、聞き、味わい、触れ、感じたことを、聞かせて頂ければ」
などと言ってくる。その微笑みに誘われるように、俺は話し始めた。オーラムハロムに来てから経験した、様々なことを。
取り留めもなく、決して上手ではない俺の話を、シェアトは嬉しそうに聞いていた。
「ふう」
話が切りよくなったところで、俺は息をつくと、注がれた葡萄酒を口にする。シェアトに乞われるまま、俺は随分と長く話をしていた。
シェアトは聞き上手で、話し上手だ。俺の言葉が詰まれば、自然な流れで次の言葉を引き出し、合間に紡がれる彼女の話も、俺の興味を引いて離さなかった。
「とても楽しいお話でしたわ。もっと聞かせて頂きたいけど、少々お疲れのご様子。少し休まれては如何ですか?」
気が付けば俺の隣に寄り添うように座っていたシェアトは、そう言うと俺の手を取り、寝台へと誘う。俺は語り終えた高揚感と、心地よい疲労感に、疑問を持つことなくシェアトに誘われるまま、寝台へと向かった。
「休まれるのに、その恰好は無粋ですわ。身に纏ったものを外し、泉で身を清めましょう。お世話しますわ」
俺はシェアトの言葉に従い、鎧を外し、腰に帯びた剣と共に寝台の側へと置く。服も脱ぎ、腰布1枚となった俺は、澄み切った泉へと足を踏み入れていく。
泉の水は、心地の良い冷たさで俺を迎えてくれた。俺は両手で水を掬って顔を洗うと、そのまま頭まで泉の中に身を沈ませる。
ただ水に浸かっているだけなのに、身体中が清められ、癒されている感じがする。あまりの気持ちよさに、息が続く限り潜ったまま、目を閉じてじっとしていた。
息が限界に近づき、水飛沫を上げながら水面に顔を出すと、そこにはシェアトが畳まれた布を持って微笑んでいた。
「外された衣服は畳んでおきました。寝台ではこちらを身につけてください」
シェアトはそう言って、白い布を差し出した。水飛沫を浴び、腰まで水に浸かったシェアトの薄造りの衣服は、半ば透けてしまっており、彼女の魅惑的な肢体が露わになっている。
見入ってしまいそうになる意識を逸らしつつ、差し出された布を受け取った。それはトーガのような一枚布で、絹のような手触りが心地よい。
俺はシェアトに言われるまま布を身に着けると、寝台へと横たわった。不思議なことに、布を身に着けるまでには身体は乾いていた。まるで水が意志を持って離れていったようだった。
シェアトの服もすでに乾き、残念ながら、俺は目のやり場に困ることもなくなっている。
「お疲れでしょう。今は安らかにお休みください。ここでは、何も心配することはありません。いつまでも、お好きなだけ、留まって頂いて良いのですよ」
シェアトの言葉に促され、俺は寝台へと横たわる。シェアトは自然な動作で、俺の側へと身を寄せてくる。シェアトの温もりが、柔らかさが、薄造りの布越しに感じられた。
俺はここにきて、流石におかしいと思った。だが、理性は警鐘を鳴らしているのに、心と身体はシェアトの言葉に全てを委ねようとしている。それに抗うことができないまま、いつの間にか、俺はシェアトの愛撫に身を任せていた。
シェアトの滑らかな手が、俺の髪を梳き、頬を撫で、喉を擽り、細い指先で、腕を、肩を、胸を優しく滑らせていく。
「貴方と出会ったことは『宿命』です。わたくしと共に、ここでいつまでも過ごしましょう。わたくしは誠心誠意、未来永劫、貴方と共に在ります」
シェアトはゆっくりと顔を近づけてきた。彼女の甘い吐息がすぐ傍で感じられる。その誘惑に抗うこともできず、俺はシェアトを受け入れようとした。
その時、
『まったく、相変わらずね』
不意に耳元で発せられた言葉に、
「「えっ?」」
と、俺とシェアトは声を上げる。俺たちの鼻先を擽るように、黒く柔らかな毛に包まれた尾が撫でる。
「くしゅん」
鼻先を擽られ、シェアトが可愛いくしゃみをする。俺は慌てて視線を送ると、そこには呆れた様子で枕元から俺を見下ろす、スマラの姿があった。
『ヴァイナスが抵抗できないのを良いことに、自分の思うように惹き込むのは貴方のいつもの手段だけど、流石に見逃せないわね』
スマラはそう言って、シェアトを見つめていた。スマラはシェアトを知っている? 俺は状況が掴めずに呆然とする。
シェアトは驚きの余り目を見開いていた。気が付くと、金髪を掻き分けるように、二つのネコ科特有の耳が覗いている。シェアトはセリアンスロープだったのか?
「…どうして、貴方がここにいるわけ? 稀人以外、決してここには訪れることはできない筈。答えなさい、ジェト!」
折角の雰囲気を壊されたシェアトは、眦を上げてスマラを睨んだ。怒った顔も美しい、じゃなくて、シェアトもスマラを知っている?
『簡単なことよ。私とヴァイナスは〈契約〉してるの。彼が行くところには、私も常に一緒だもの』
スマラは、さも当然と言った風に澄まし顔だ。シェアトはそれを聞いて肩を震わせる。
「…今まで影に潜んで隠れていたのね。まさか〈契約〉なんて」
『不思議でも何でもないわ。私とヴァイナスが〈契約〉したのは『運命』だもの』
シェアトの怒りはどこ吹く風で、スマラは毛繕いを始めている。その態度にシェアトの怒りが増すのが分かった。だが、俺に跨ったまま、枕元のスマラと喧嘩するのは止めて欲しい。
「取り込み中悪いが、改めて事情を話してもらえるかな?」
俺の言葉に、現状を把握したシェアトは、ため息をつくと俺の上から身をどかす。俺は起き上がり、その場で胡坐をかく。
シェアトは俺の前で横座りすると、膝の上で拳を握り、恨めしそうにスマラを見ていた。
「ヴァイナス様が、ジェトと〈契約〉しているとは思いませんでした。久しく訪れる者のなかった稀人に、喜んでいましたのに」
シェアトはスマラを睨みつつ、そう切り出した。スマラは胡坐をかいた俺の膝に乗ると、その場で丸くなりつつ、
『別に、稀人が私と契約していたからって、問題があるわけじゃないでしょ? シェアト、単に貴方が男好きなだけで』
「人を盛りのついた猫みたいに言わないでくださいまし! わたくしと波長の合う『宿命』を持った人など、そうそういないのですから!」
二人の言い合いを聞いても、俺にはさっぱり意味が分からなかった。取り敢えず、この二人が知り合いだということは分かる。
「それで、二人は知り合いで、どういった関係なんだ?」
俺の質問に、二人は顔を背けつつ、まずはシェアトが答える。
「わたくしは、〈稀人の試練〉を管理する神の一人ですわ」
シェアトの言葉に、俺は驚きの声を上げる。
「神!? こんなところで神様に会えるとはね。光栄ですシェアト様」
俺は慌てて首を垂れた。顔を上げると、シェアトは嬉しそうに微笑み、
「畏まる必要はありませんよ。貴方は『宿命』の稀人。わたくしの傍に立つことのできる数少ない存在なのですから」
と言う。スマラは鼻を鳴らし、
『神々の気まぐれで造られた《箱庭》で、造り手自体が遊んでいるだけよ。貴方は神々を楽しませる遊戯の駒ってわけ』
と言う。途端にスマラを睨みつけるシェアト。どうやら、知り合いであっても、仲が良いわけではないらしい。
「〈神与の試練〉に挑戦する稀人は、神が認める挑戦者。神と関わることのできる特別な存在です。扱いが違うのは当然です」
『いくら限定された場所で、限定された力を行使することができないとはいえ、神が直接人に関わると、碌なことにならないわ。関わるのなら、神の力を使わずにやりなさい』
「それは貴方の理屈。わたくしはわたくしのやり方でやらせて頂きますわ」
『勝手にしなさい。でも、ヴァイナスは私の〈契約者〉よ。この人には、勝手を許すわけにはいかないわ』
そう言ってにらみ合うスマラとシェアト。このままじゃいつまで経っても二人は平行線のようだ。
「何となく状況は理解した。少なくても、俺はこの場所に留まる気はないよ。シェアトの提案は魅力的だったけど、俺にはやらなきゃならないことがある」
俺の言葉に、シェアトは哀しそうに眼を潤ませた。
「残りの試練など、もう良いではありませんか。わたくしと共に、ここで悠久の時を過ごしましょう。穏やかで、満ち足りた日を送ることができます」
シェアトはそう言って胸の前で腕を組み、懇願してくる。だが、俺は首を振り、
「俺には帰りを待っている人たちがいる。それに帰らなきゃいけない場所もあるんだ。立ち止まるわけにはいかない」
と答える。シェアトの願いを聞き届けることはできなかった。スマラも、
『いい加減諦めなさい。無理矢理意志を変えることは、この場所においては貴方の力でもやってはいけないこと。もし破ることがあれば、他の神々も黙っていないでしょう』
と言葉を続けた。シェアトはその場で泣き崩れる。うう、こんな美人を泣かしていると思うと、心が痛い。
だが、ここで情けを掛ければ、決していい結果にならないことは明白だった。俺は心を鬼にして、心が揺らがないように耐える。拷問のような時間が過ぎていく中、シェアトが静かに涙を流していた。
暫くすると、落ち着いたのか、シェアトは顔を上げる。その瞳は先ほどまでに比べると、幾分輝きが失われていたが、心の整理がついたのか、口元には微笑を浮かべていた。
「そうですね。稀人が示す意思を、行動を、一切止めることは許されていない。それがたとえ稀人自身を破滅に導くものであろうとも」
シェアトはそう言って頭を下げた。そして、
「ヴァイナス様、貴方の意志は受け取りました。もう無理を言うつもりはありません。次の『試練』への門も開きましょう。ですが、一つだけ、お願い致します。今宵一晩、一晩だけで良いのです。この場所で過ごしていただけませんか?」
と言うと、居住まいを正し、俺の前に三つ指をつく。俺はどうすれば良いのか分からず、スマラを見ると、スマラは心話で、
『これ以上、貴方にシェアトの方から干渉することはないわ。後は貴方の判断よ。どういう判断でも、好きにすればいいと思う』
永久にこの場に留まるっていうのだけは、殺してでも止めるけど。スマラはそう言って、興味なさそうに欠伸をする。スマラは自由だなぁ。俺は鼻の頭を掻き、シェアトに告げる。
「分かりました。今夜一晩、お世話になります」
俺の言葉が終わるや否や、シェアトは顔を上げ、微笑んだ。あの蕾が花開くような微笑みだ。うん、やはり美人は笑っている方が良い。
「ありがとうございます。嬉しい。今宵は楽しく過ごしましょうね」
わたくしも、誠心誠意お応えしますわ。そう言って頬を紅潮させ、何やら気合を入れるシェアトに、俺は早まったかな、と頬を引き攣らせた。スマラは、後は好きにしろ、といったふうに大きく伸びをすると、影の中へと姿を消す。
こうして俺は、美しい女神の情熱的で、濃密な「もてなし」を受けることになる。この日の夜は、今まで生きてきた中で、最も長く感じた。
長い長い夜を過ごし、俺は寝台の上で目を覚ます。傍らではシェアトが俺の腕を枕に小さな寝息を立てている。俺は彼女を起こさないようにゆっくりと手を抜くと、脱いでいた服を身に着けていく。
「やはり、留まっては頂けないのですね」
気を付けていたつもりだったが、シェアトを起こしてしまったようだ。俺は頷き、シェアトを見つめる。
「昨日は今までの人生で、指折りの素晴らしい時を過ごせました。感謝しています」
「そんな他人行儀はお止め下さい。貴方とは、もう知らぬ仲ではないのですから」
寂しくなってしまいます。そう言って眉を寄せるシェアトを、俺は抱き寄せ、額にキスをした。
「最高の夜だった。一生忘れない」
俺はシェアトの耳元で囁いた。嘘ではない。一生ものの経験だった。シェアトは俺の首に手を回すと、俺の唇を塞ぐ。触れるだけではない、全てを求めるような口づけ。
至福の時間を終え、名残惜しそうに唇が離れていくと、シェアトは微笑み、
「貴方の行く末に幸多からんことを。わたくしはいつでも、貴方を見守っていますわ」
と告げた。俺はもう一度しっかりとシェアトを抱き締めると、武具を身に纏い、準備を終えた。
『それじゃ、御機嫌よう』
影から姿を現したスマラが、シェアトに向かって挨拶をする。シェアトも微笑みを返し、
「ジェト、我儘を聞いてくれてありがとう。ヴァイナスを頼みます」
『別に、決めたのはヴァイナスよ。それに〈契約〉があるもの。ヴァイナスが死んだら、私も死んじゃうから。任せておきなさい』
と言葉を交わす。俺はもう一度、シェアトと目を合わせ頷くと、シェアトが『門』を呼び出した。
門を潜ろうとする俺に、シェアトは整えられ、耳元から流されていた前髪を一房切り取ると、束ねたものを渡してきた。
「御守りです」
「ありがとう。大事にするよ」
俺は微笑んで、その場で手早く編み込むと、左手首へと結ぶ。そしてシェアトに微笑み、
「行って来る」
と言う。別れの言葉は相応しくない、そう感じて出た言葉に、シェアトは嬉しそうに、
「行ってらっしゃいませ」
と答えた。俺は振り向くと、門の中へと足を踏み入れる。次の『試練』はどんなものだろうか。新たな覚悟と共に、俺は光に包まれた。




