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47 幻夢(VR)〉の犬は狂暴です?

 湖の航行は順調だった。船倉に積んだ竜の血や肉の匂いに惹かれて魔物が集まるかと思っていたが、逆に恐れて近寄って来ないようで、特に戦闘をすることもなく、中央付近に辿り着くことができた。

 湖の中央付近は、大小の島からなる群島になっていたが、ドラゴンの住処はすぐに分かった。島の一つに雪山があったのだ。あまりにも分かりやすすぎて、雪山を見つけた時には、思わず笑ってしまった。

 雪山のある小島に船を近づけ停泊すると、俺たちは上陸し、雪山の探索を始める。山とはいえ、それほど大きいものではなく、程なくして洞窟の入り口を発見。氷に覆われた広い通路を奥へと進んで行くと、広い空間に出た。

 どうやらここがホワイトドラゴンの住処だったらしい。ドラゴンの巨体によって均されたであろう床面に広がる金貨の山。そして所々には宝石や装飾品が見受けられた。

 俺は思わず息を飲む。


 これだ、これだよ! 

 ドラゴンの財宝って言ったらこうでなくちゃ!


 物語に出てくる竜の財宝そのままを目の当たりして、俺のテンションは嫌が応にも高まっていく。早速財宝を運び出すための準備をする。モリーアンの財宝の時も感動したが、今回のドラゴンの財宝はそれ以上だ。

 〈全贈匣〉から〈長者の蔵〉と〈グランダの鞍鞄〉を取り出し、〈長者の蔵〉には金貨を、〈グランダの鞍鞄〉には宝石や装飾品を詰め込んでいく。〈妖精郷〉で雑多な荷物を整理しておいたのは、僥倖だった。鑑定は後でゆっくりと行うことにして、今はひたすらに詰め込む作業を進める。

「これだけあれば、暫く豪遊できるわよ!」

 スマラが自分の〈全贈匣〉に宝石を仕舞い込みながら嬉しそうに言う。呪われた品物がないか心配だったが、その辺りの「嗅覚」は俺より鋭いスマラだから大丈夫だろう。

「使わないから金貨の価値は良く分からないけど、ヴァイナスが嬉しいなら私も嬉しい」

 マグダレナは人化して楽しそうに〈長者の蔵〉に金貨を流し込んでいる。俺は特に嵩張る鎧や盾、武器といったものを鞍鞄に仕舞い、装飾品の類も腰鞄へと入れていく。

 全ての財宝を回収した俺たちは、意気揚々と洞窟を後にする。そして船に戻り、これからのことを話した。

「結局『祭壇』は見つかっていないんだが、どうしようか?」

「大雑把な目印すらないんだから、地道に探すしかないんじゃない?」

「うん。流石に〈白竜〉並みの脅威はそうそうないと思うし、探すしかないと思う」

 二人の意見に俺は頷く。こうなれば虱潰しにマップを埋めていくしかない。俺は腹を括ると、今日はここで休息し、明日から探索を再開すると伝える。ドラゴンを倒したのだから、他の場所よりも安全であろうこの場所で休息することにしたのだ。

 スマラとマグダレナは頷き、寛ぎ始めた。俺は最初の見張りを行うため甲板へと移動する。

 船内から出ると、雪山が近いためか身を切るような冷気が伝わってくる。俺は腰鞄から厚手のマントを出して羽織り、〈極光の宴〉を取り出して温かい紅茶を注ぐと、じっくりと味わいながら飲む。

 ふと、ヴィオーラとリィアのことを思い出し、彼女たちは元気に過ごしているだろうか、と考える。念話が途切れてから一週間以上経っている。大人しく帝都にいるのであれば特に危険なことはないと思うが、俺を探してダンジョンに入ったりしていると心配だ。

 リィアがいるので無茶はしないと思うが、ヴィオーラもあれでいて心配性のところがあるからな。無茶していないと良いが…。

 試しに念話をしてみるが、やはり繋がらない。帝都に戻らないと無理そうなので、諦めて森を脱出してからにしよう。

 俺は二人の無事を祈りつつ、見張りに専念することにした。



 その後は見張りを交代して休んだが、特に事件もなく休息を取ることができた。俺たちは船を動かし、ホワイトドラゴンと戦闘を行った岸辺まで戻り、船を瓶に納めて探索を再開した。

 岸辺を周回するように探索を進めていくと、昨日までに比べて戦闘する回数が減ってきていることに気付いた。最初はドラゴンを倒した影響かと思ったが、どうやら違うようだ。

 魔物だけでなく、他の生物とも遭遇しないのだ。岸辺から離れ、鳥の囀りすら聞こえない森の中を進んで行く。明らかに雰囲気が変わっていた。

「どうやら、当たりらしい」

「そうね。生き物の気配がない。〈黒妖犬〉は全ての存在に対して敵対するみたいだから、他の生き物は逃げるか、殺されるかしたのでしょうね」

「うん、ここまで来れば分かるわ。この先から強い威圧感を感じる」

 肩に乗るスマラが周囲の変化を口にすると、マグダレナがそう言って視線を森の奥へと向ける。

 森を進むにつれ、立ち枯れた木々も目立ち始めた。生き物がいないということは、食物連鎖も行われていないということだ。その影響が表れているのだろう。

 静か過ぎる森の中を、マグダレナの足音だけが流れていく。マグダレナの感じる圧迫感に向かって進んで行く。

 そして不意に視界が開けると、そこは森の中の広間になっていた。大小様々な大きさの石柱が、円を描くように配置されている。その石柱群(ストーンヘンジ)の中央には、絡み合う男女をモチーフにしたと思われる石像が掲げられた石台が置かれている。その石像は頽廃的で、俺の心に得も言われぬ恐怖を与えていた。

 石像の周囲から、強烈な気配を感じる。マグダレナは石柱群の手前で立ち止まると、石像に向かって身構える。

 ここが『祭壇』か…。俺は武器を準備し、スマラは影の中へと潜り込む。そしてマグダレナに合図をし、石柱群に足を踏み入れた。

 足を踏み入れた途端、気配は鋭さを増し、どんどんと強さを増していく。俺たちは魔法による強化を始めた。【付与】【神速】【倍化】の強化セットを唱えているうちに、『祭壇』の前の空間が歪み、何かが姿を現した。それと同時に、空は瞬く間に黒雲に覆われ、周囲は夜のように暗くなる。雲の中に光が走り、雷鳴が轟いた。

 現れたのは、漆黒の毛並みを持ち、深紅に染まった眼を持つ狼のような獣だった。だが、その大きさは狼と表現していいものだろうか。馬としても大型のマグダレナに匹敵する体格を持つ黒狼は、鋭いスパイクの生えた首輪から伸びる鎖をジャラジャラと鳴らしながら、俺たちを睨みつけると大きく咆哮した。


 〈黒妖犬(バーゲスト)


 バーゲストが咆哮した途端、周囲が騒めく。俺は警戒しつつ周囲を見渡す。そこに見た光景に、俺はマグダレナに確認をする。

「マグ、確認なんだが…」

「なに?」

「〈黒妖犬〉って何匹いるんだ?」

「1匹だと思ってたけど…」

 俺が問い掛ける間にも、石柱群のそこかしこから、バーゲストに比べたら遥かに小さく、それでも大型の黒犬が姿を現す。その数が10を超えた時、俺は思わず舌打ちしてしまう。


 バーゲストは1匹だけじゃなかったのか!?


 スマラも『聞いてないわよ!』と心話で叫んでいた。マグダレナの表情は見えないが、気配からすると、少なくとも動揺はしていないようだ。

 言い伝えの謎は解けた。この数なら村人や兵士を殺せるわけだ。

「すっかり周囲を囲まれているな…」

 石柱群の中心にある『祭壇』付近まで近寄っていた俺たちを、黒犬の群れが取り囲む。唸り声を上げて威嚇してくるが、襲い掛かっては来なかった。

 それは俺たちを脅威に感じているわけではなく、正面に陣取るバーゲストの合図を待っているためだ。群れのリーダーなのでであろう、バーゲストの号令によって一斉に飛び掛かってくることは想像に難くない。

 黒犬たちの強さは分からないが、状況はかなり不利だ。数が多いということは、それだけで脅威となる。

 相手が強者であっても、単体ならば手数は自ずと限られる。だが、数が多ければ、それだけ手数が増えるということで、防ぎ切れない攻撃の一つが致命傷になれば、それで終わりとなる。

 最悪、マグダレナを〈小さな魔法筒〉に納め、俺は『死に戻り』するしかないかもしれない。

 それが無理でも、マグダレナだけは必ず逃がす。俺とは違い、マグダレナは死んだら終わりだ。無茶はさせない。

 俺はマグダレナの耳元に唇を寄せ、そのことを伝える。マグダレナは嫌がる素振りを見せるが、俺の『蘇生』のことを伝え、説き伏せる。

 マグダレナは答えの代わりに、体中にエーテルを纏い咆哮する。その額の角が二つに割れると、気合を込めた嘶きを上げた。

 その気迫に不退転の決意を感じ、俺は気持ちを切り替える。最初から弱気で勝てるはずがない。俺はマグダレナによって灯された心の焔を焚き付け、雄叫びに変える。

 俺の雄叫びをきっかけに、黒犬たちが襲い掛かってきた。バーゲストの吠える声に合わせるように、石柱群の影から、祭壇の影から、足元に茂る草の影から、俺たちの死角を突くように襲って来る。

 マグダレナの長い尾が飛び掛かる黒犬を薙ぎ払い、吹き飛ばしていく。間隙を縫って飛び込んでくる黒犬を、俺は両手に構えた武器で斬り倒していく。

 実際に攻撃を捌いていくことで、数の脅威をはっきりと感じた。確かに黒犬単体の強さはそれほどでもない。例えばヴィオーラであれば2、3体を同時に相手しても問題なく倒すことができるだろう。

 だが、同時に十数体の黒犬に襲われると、捌き切れるものではない。そして理由は分からないが、斃しても斃しても一向に数の減る気配がないのだ。

『おかしいわね。数が減っているように見えない』

 スマラが影の中から心話で伝えてくる。スマラも感じていたらしい。今のところ大きな怪我もなく、体力にも余裕があるが、このまま闘い続ければ疲弊し、最後には殺されるだろう。

 やはり、原因はバーゲストにあると思われる。バーゲスト自身は攻撃に参加せず、祭壇の前から一歩も動いていない。

 そしてバーゲストが咆哮するたびに、どこからともなく黒犬が発生し、襲い掛かってくるのだ。

「ヴァイナス、これって」

「ああ、〈黒妖犬〉を何とかしないと、延々黒犬の相手をすることになるな」

 雲霞の如く湧いてくる黒犬を撃退しつつ、現状を打破するための方法を模索する。黒犬単体の耐久力は大したことはない。それならば…。

 俺はスマラには心話で、マグダレナには耳元で囁くことで作戦を伝える。その間も黒犬を斃していく。そして、タイミングを見計らい、作戦を決行した。

 俺とスマラ、マグダレナは同時に魔法を使用する。使用した魔法は【火球】。俺は左側面に、マグダレナは右側面に、スマラは背後へと【火球】を放つ。周囲に出現した黒犬は一瞬で炎に包まれる。

 同時魔法によって正面を除いた黒犬を排除し、俺たちは一気にバーゲストへと近づいていく。

 バーゲストは正面に呼び出した黒犬に妨害させようとするが、その程度の数で俺たちを止めることはできない。マグダレナの突進を受けて次々と弾き飛ばされる黒犬。それらをすり抜け様に斬り捨てながら、俺たちはバーゲストのいる祭壇へと辿り着いた。

 ここに来てバーゲストは覚悟を決めたらしく、一際大きい咆哮を上げると、俺たちに向かって飛び掛かってきた。首から伸びた鎖が大きく音を立てた。その鎖の先は虚空へと消えている。バーゲストが進むにつれて鎖も引き出されているようで、バーゲストの動きを損なうことはなかった。

 カウンター気味に襲い来るバーゲストの攻撃を、マグダレナは素早いステップで躱す。その先に黒犬が出現するが、それを読んでいた俺は一刀のもとに斬り捨てる。

 ここまでの闘いで、出現パターンは大体把握した。更に出現した黒犬を斃し、マグダレナの動きをフォローしていく。

 マグダレナはバーゲストに向かって一直線に突撃していく。慌てて呼び出された黒犬は、現れる傍からマグダレナに弾き飛ばされていく。スピードに乗った突進は、一条の黒い槍となって、バーゲストへと向かっていく。

 バーゲストは一際大きな咆哮を放つ。それは物理的な衝撃を持って俺たちを襲った。こいつもドラゴンやマグダレナのような攻撃をしてくるのか!

 衝撃を受けて突進の勢いが鈍る。それでも突進を止めずに、マグダレナは咆哮を放って動きを止めたバーゲストに角を突き立てた。

 マグダレナの角がバーゲストを貫く瞬間、バーゲストの姿が掻き消えた。消える瞬間、鎖が蒼く発光するのを俺は見た。あの光、どこかで見たような…。

 俺の頭の中を、稲妻のように記憶が走り抜ける。あの光、バンシーを縛っていた光にそっくりだ!

 もしあの蒼い光がバンシーの時と同様なら、バーゲストもまた何者かに縛られているということになるのか? それならばバンシーを解放した方法を試す価値がある!

 祭壇の脇を通り抜けたマグダレナの側面から、バーゲストは襲い掛かって来た。祭壇の影を利用して、死角から飛び込んでくる。だが俺はその動きを読んでいた。

 バーゲストは祭壇を護るような位置取りをしていた。それは祭壇の傍から離れられないのではないかと考えたのだ。その理由はバーゲストを繋ぐ鎖の存在だ。

 どれだけの長さがあるのか分からない、虚空から伸びる蒼い光を放つ鎖。それは邪神か魔女の力が込められた、バーゲストに祭壇を護らせるための枷なのではないか、と俺は考えたのだ。

 それであれば、バーゲストは祭壇を背にするように姿を現すはず。マグダレナの攻撃を避けたバーゲストは、必ず祭壇の方向から姿を現す。その考えは正しかったようで、祭壇の影から姿を現したバーゲストに向かい、俺はマグダレナの背を蹴って飛びついた。

 姿を現した瞬間に飛びつかれ、バーゲストは躱そうとするが、勢いのついた身体を止めることはできず、俺はバーゲストの首に手を回し、蒼い光を放つ鎖を握ると、そのままバーゲストの背に跨るようにして取り付いた。

 そして【解呪】の魔法を唱える。背に乗られるのは予想外だったのだろうか。バーゲストは俺を振り落とそうとその場で暴れ始めた。俺は両足でバーゲストの胴を挟み込み、左手で鎖を握り締めたまま、振り落とされまいと必死に耐える。

 突然、バーゲストが強硬手段に出た。鎖を引き千切ろうとせんばかりに、強引に首を動かし始めたのだ。俺が鎖を握り続けることを逆手に取った行動だったが、首輪が首に食い込んで血が流れ始めた。

 だが鎖は強固でびくともしない。バーゲストの首が一方的に傷ついていくが、構わず引き千切ろうとする。

 流れ出る血が、鎖を掴む俺の手を滑らせていく。このままでは不味い、そう思った瞬間、大きく首を振ったバーゲストの勢いに負け、鎖を持っていた左手がすっぽ抜けた。


 南無三!


 俺は咄嗟の判断で、〈西方の焔〉を投げ捨てた右手で首輪を掴み、鎖を絡め取るように巻き付けた。竜の鱗で護られた腕が、引き絞られる圧力で軋みを上げる。掌に食い込むスパイクも問題だ。鎧はともかく、腕の方が長くは持たなそうだ。

 バーゲストは狂ったように首を振り回し、俺を振り落とそうと暴れ廻る。だが、掌から伝わる鋭い痛みと、ギシギシと締め付ける痛みに歯を食いしばりながら、巻き取った鎖に支えられた俺を振り落とすことはできない。


 これで終わってくれ!


 俺は願いを込めて【解呪】の魔法を発動した。SPの大半を使って唱えた渾身の【解呪】は、バンシーの時同様、俺の期待に応えてくれた。

 鎖を取り巻いていた蒼い光は消滅し、鎖は首輪と共に粉々に砕け散った。バーゲストは絶叫を上げる。

 俺は支えにしていた鎖が消えたため、絶叫を上げて悶えるバーゲストの背から弾き飛ばされ、祭壇へと叩きつけられた。

 衝撃に一瞬息が止まる。咳き込みながら顔を上げると、バーゲストは苦しみ続けている。鎖からは解放できたが、それが良かったのかどうかはまだ分からない。

 右腕からは激しい痛みが続いている。掌はズタズタで、剣を握れそうにはない。俺は痛みに耐えながらカタールを構えようとして、それに気づいた。

 石台に置かれた像が、蒼い光を発している。それに対抗するように、〈西方の焔〉が蒼白の光を放っているのだ。


『剣を取り、邪を祓うのだ。友よ』


 俺の耳元で、レイアーティスの声が聞こえた。俺は声に導かれるように〈西方の焔〉を取り、痛みを無視して無理やり右手も添えると、大上段から一気に像へと振り下ろす。

 振り下ろされる勢いのまま、〈西方の焔〉は石台諸共、邪な像を両断した。その瞬間、一際強烈な光が像を中心に迸り、何者かが上げる身の毛も弥立つような絶叫が響き渡った。

 俺はあまりの眩しさに目を瞑る。網膜越しにも分かる強い光に、危険なことは分かっていながらも、目を開けることができない。

 徐々に掠れていく絶叫と共に、蒼い光も弱くなっていく。目を閉じていても感じられた光が収まるころ、絶叫も聞こえなくなっていた。俺はゆっくりと瞼を開く。


 目の前に驚くべき光景が広がっていた。


 祭壇は、頽廃的な像と共に跡形もなく姿を消していた。天を覆っていた黒雲も晴れ、澄み切った青空から、輝く二つの太陽が暖かな光を降り注いでいる。

 先ほどまで感じていた威圧感も消え去り、穏やかな空気が周囲を包み込んでいた。

 不意に気配を感じると、マグダレナが俺に寄り添うように近づいていた。俺は無事な左手で、鬣をゆっくりと撫でる。マグダレナはくすぐったそうに身を震わすと、俺に頬を摺り寄せてくる。スマラも影から姿を現し、俺の肩の上で頬を舐めてきた。

「終わったみたいね」

「ああ、二人ともお疲れ様」

「ヴァイナス、早く傷の治療をしないと…」

 思い出した途端、痛みが走り、思わず呻いてしまう。慌てて【回復】を唱えるスマラを制し、俺は、

「その前に、あいつを何とかしないとな」

 と言って視線を向ける。気付いてはいたのだが敢えて逸らしていた視線を追って、マグダレナとスマラも目を向けた。


 視線の先には、俺に向かって腹を見せたまま服従のポーズを取る、バーゲストが横たわっていた。



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