33 幻夢(VR)でも勇者にはなれない
『おかえり』
復活した俺は、後ろで待機していたスマラの前に現れた。
『あれは無理だ』
『うん、見てて良く分かった』
俺の感想にスマラもブンブンと首を振って頷いている。さすがドラゴン、強さが半端なかった。あれ、どうやって倒すんだろう…。
『とりあえず、戻って他の通路を確認しよう』
『そうね』
俺はそう言って静かにその場を離れる。スマラは俺の影に潜り込んだ。通路を戻りながら、俺は警戒しつつも考えを巡らせていた。
今のところの仮定だが、恐らくあのドラゴンはデスルートなのではないだろうか? いわゆる死亡ルートというやつだ。他の通路を進めばきちんと脱出できるルートは存在していて、迂闊に踏み込んだ奴は制裁を受けるというわけだ。
正直言って、あのドラゴンには俺の強さが今の倍でも勝てる自信がなかった。倍の強さで同レベルの仲間の援護があれば何とかといったところか…。
考察しながら通路を戻り十字路まで戻ったところで、西と東どちらから探索をしようか。
『どうする?』
『じゃあ東』
スマラに話を振ると適当に答えが返ってきたが、特に反対する理由もなかったので、東の通路へと向かうことにした。
東の通路を進んでいくと、通路の先から光が見えた。俺は慎重に近づき、様子を窺う。
通路の先には、美しい女性を象った石像が祭られていた。石像の前には大理石でできた台が置かれ、その中には澄んだ水が湧き出ている。
喉の渇きを覚えた俺は、無警戒に近づくと、両手で水を掬い、勢いよく飲んでしまった。
旨い。
冷たく爽やかな水が、乾いた喉から全身に沁み込むように感じた。俺は思わず、感謝の祈りを石像に捧げる。すると、
『それは、飲むためのものではないのですが…』
不意に女性の声が頭の中に響いた。スマラとは違う、慈愛に満ちた声だ。
ふと、石像へと目を向ける。すると、石像から抜け出るように、光に包まれた女性が現れ、俺の前で微笑んでいた。思わず俺は、謝罪してしまう。
「失礼しました。喉が渇いていたもので。礼儀も弁えず…」
『構いませんよ。ここを訪れる勇者も久しぶりですから』
「勇者?」
俺の問いに、女性は微笑みながら、
『そうです。ここを訪れた勇者へ助力を与えるのが私の役目』
と女性が答える。そんな彼女に、
「俺は〈盗賊〉で〈勇者〉ではないのですが」
と答えると、
『勇者は職業ではありません。一種の称号のようなものです。これから貴方に課される試練を乗り越えれば、勇者と認められ、助力を得ることができるのです』
と説明された。
どうやらそういうイベントのようだ。上手く試練をクリアできれば、何かボーナスを得ることができるのだろう。
「どうすれば試練を受けることができるのですか?」
俺がそう質問すると、女性は頷き、何かを捧げるように両手を差し出す。
その掌の上に、輝く白い珠と黒い珠が現れた。
『この珠に触れ、与えられる試練に打ち勝つことができれば、力を得ることができるでしょう』
「これはどんな試練なのですか?」
『触れれば分かります』
ノーヒントか。
おそらく粘ってもヒントは出てこないに違いない。
俺は意を決して、まずは黒い珠に触れる。
珠に触れた瞬間、脳裏に言葉が響く。
『汝の力を試そう。全力で抗え』
言葉が響いた瞬間、俺に向かって6本の黒い光が放たれ、吸い込まれた。
俺の中で、光が暴れ回る。その力は光ごとに異なるようで、俺は心・技・体の全てを使い、耐える。
気の遠くなるような時間が経ったかのように感じたが、実際には瞬きするほどの時間で試練は終わった。
『我が試練は成された。汝は我を使うこと抗ず』
どうやら、試練には成功したようだが、助力は得られないらしい。
「残念だ。頑張ったのに」
『気を落とさないでください。彼は気難しいので、合わない方も多いのです』
そう言って慰めてくれる女性に礼を言い、俺は残った白い光の球に触れた。
『貴方の力を見せてもらいます。受け入れなさい』
今度は、6本の白い光が俺の中に吸い込まれた。
さっきと同じように耐えるつもりでいた俺は、俺の中に入った光が温かく優しい光であったのに、対処を誤ってしまった。
最初の白い光に対し、黒い光と同様に抵抗してしまったのだ。俺に拒まれた光は、寂しそうに消滅してしまった。俺は慌てて他の光を受け入れ、包み込む。
『我が試練は成されました。貴方とは合わないようですね』
光が収まると、俺の頭に流れ込んできたのは、助力できないという言葉だった。
失敗した。
俺はがっくりと肩を落とす。
『気を落とさずに。残念ながら助力は得られなかったようですが、試練を乗り越えたことで、貴方はさらなる力を得ているはずです』
女性からは慰めの言葉が掛けられた。確かに身体には力が増している実感があった。
「いえ、ありがとうございました」
俺は礼を言って深々と頭を下げた。
『貴方が向かう先に、幸あらんことを』
女性は微笑むと、徐々に姿を消していく。
俺は石像をしばらく見つめていたが、気を取り直し、ふと思いついて、〈全贈匣〉から〈極光の宴〉を取り出し、ゴブレットを外すと台から水を汲み、飲んでみる。
特に変化はなく、清涼な水が喉を通り過ぎて行く。
これで、この水も注げるようになったはず。試しに念じながら注いでみると、瓶からは冷たい水が注がれた。
一口飲んでみると、今飲んだ水と同じ味がした。スマラも喉が渇いたと言うので、ゴブレットを渡すと、両手で挟んで器用に飲んでいた。
「美味しかったわ。ここから出たら、後でお酒を飲みましょう」
スマラの言葉に頷き、俺は来た道を引き返すことにする。この部屋は行き止まりのようだ。西の通路には先へと進む道があるといいのだが。
西の通路は、緩やかに曲がりながら先へと続いている。
ドラゴンは大きく、こちら側の通路に入ることはできない。ドラゴンに襲われる危険はないのだと、俺は先ほどのドラゴンとの闘いの衝撃から、無理矢理意識を切り替えると、慎重に進んでいく。
やがて、通路は一つの部屋に辿り着いた。部屋の中は不気味な彫刻が一面に施されており、部屋の中央には祭壇のような台座がある。
そして、部屋の奥には、柔らかそうな布の上に横たわる。美しい女性の上半身を持ち、獅子の身体と鷲のような翼を持った魔物が、こちらをじっと見つめていた。
その両脇には、獅子の顔を持つ女性(首から下は人間、それもグラビアモデル顔負けのスタイルだ)と鷹の顔を持つ男性(こちらはボディービルダー顔負けの肉体美だ)が控えている。
〈獅子女〉
横たわる魔物を見た俺は、即座に正体を看破する。それにしても、伝説のモンスターが次々出て来るな。その両脇にいるのは守護者か何かだろうと思うけど、正体は思い当たらない。
俺は通路を戻ると〈隠蔽〉の魔法を唱える。少しでも有利に近づくためだ。そして魔法の効果が切れないように、ゆっくりとスフィンクスに近づいていく。
『警戒する必要はありません。こちらにお出でなさい』
真っ直ぐに俺を見て掛けられた声に、俺はぎょっとする。〈隠蔽〉の魔法が切れたのか?
『私の目に、まやかしは効きませんよ。影の中の者共々、危害を加えるつもりはありません。さぁ、こちらへ』
どうやら、スフィンクスには魔法を見破る力があるようだ。スマラの存在まで分かっているらしい。俺は大人しく近づいて行く。スマラも影から出てきた。
『よく来てくれました勇者よ。ここは試練の間。貴方が真に勇者としての力を持つなら、試練を乗り越えることができるでしょう』
スフィンクスはそう言って、脇に仕える獅子女と鷹男に何かを準備させた。
それは金、銀、銅の皿に乗せられた、赤、青、黄の液体の入った瓶だった。
『貴方は今からその霊薬を飲み、力を得ることができます。ですが、霊薬は強い力を持ちます。それに耐えられなければ貴方は死ぬことになるでしょう』
そう説明を受ける間に、霊薬は中央の祭壇に皿ごと並べられた。
『さぁ、どれでも好きな霊薬を飲みなさい。全て飲むのも、いずれかを飲むのも、一つも飲まないのも貴方の自由。さぁ』
スフィンクスの言葉に、俺は大きく深呼吸をする。いつの間にかスマラも俺の肩の上に乗り、俺を心配そうに見上げていた。
さて、どうするか…。
俺はしばらく考え、見た目や重さから判断する根拠が一切ないことを確認すると、直感に従って、黄色の瓶を取り、一気に飲んだ。
酷い味だ。俺は霊薬の味に顔を顰めると、何が起きるのかと待ち構えた。
ドクン
心臓が大きく鼓動した。そして次の瞬間、全身に焼けるような痛みが走り、俺は絶叫を上げた。そして、立っていることができずに蹲るが、それでも耐えきれずにその場でのた打ち回る。
なんだ、これ!
痛い! 痛い! 痛い!
俺は全身を襲う痛みに、必死に耐える。このまま意識を失った方が楽になれる、そう思う心を叱咤し、歯を食いしばって耐えていた。
全身を嫌な汗が伝う。まるで全ての血管から血が噴き出すような感じを受け、その不快感に耐えるために、腕に爪を立てた。
これだけの痛み(ストレス)を受けながら、俺の身体はログアウトしない。その恐怖が、俺の意識をかろうじて繋いでいた。
ゲームの世界にも留まれず、現実世界にも戻れずに、いつ終わるともしれない、AGSに閉じ込められただけの存在。そんな状態になってしまうという恐怖だけが、俺を支えていた。
このまま意識を失えばログアウトできるかもしれない。
それでもログアウトできなかった時の絶望の方が、あやふやな希望を遥かに上回る。俺は痛みに負けて、意識を手放さないよう、ただ耐えることだけを考えていた。
ドクン
どれくらい時間が経ったのか分からない。痛みに耐える中、もう一度大きく心臓が鼓動した。そして、今までの痛みが嘘のように消え去る。
俺は突然現れた解放感に、その場でぐったりとする。そして、そのまま失いそうになる意識を必死に繋ぎ、上体を起こした。
「ヴァイナス!」
状態を起こした俺に、スマラが飛びついてきた。結構な勢いで飛びついて来たスマラを、俺の身体は易々と受け止める。
まるで小さな木の実でもぶつけられたかのような軽い衝撃に、俺は驚いた。
――〈体力〉が強化されている?
スマラが飛びついて来たのは初めてではなかったが、今まで受けたものから比べると、遥かに軽く感じたことで、俺はそう確信した。そして、スマラを抱えたままフワリを起き上がる。
そこで、俺は以前よりも遥かにスムーズに動く身体にも気づかされた。体幹、バランス感覚、動きの精密さ、どれをとっても以前とは比べ物にならない。どうやら〈器用〉も強化されたようだ。
「今なら簡単にできそうだ…。そう、まるで花を摘むようにな」
ふと意識に浮かんだ言葉が、口から零れた。ちなみに何が簡単にできるのか、自分でも分かっていなかったが。
『どうやら試練を乗り越えたようですね。それでは、試練を続けますか?』
スフィンクスは微笑みを浮かべると、そう問いかけてきた。
正直に言えば、あれ程の苦痛を後2回も感じるのは嫌だった。だが、強化できる機会を見逃すことは、これから先のことを考えると、得策とは言えなかった。それは、この部屋を見た時から感じていたことだが、改めて確認すると、それは確信に変わる。
この部屋には先へ進む通路がない。
このことは、あのドラゴンの部屋を通らなければ、先へ進むことができないということを表している。
ドラゴンを倒すとはいかないまでも、ドラゴンの攻撃を躱して奥の通路に飛び込む必要はある。それを考えると、得られる助力は全て受けておく必要がある気がするのだ。おそらく、他の霊薬も能力を強化してくれるに違いない。
俺はしばらく休んで覚悟を決めると、スマラを降し、今度は青い霊薬を手に取り、一気に飲み干す。
旨い。
まず初めに感じたのは、舌に広がる旨さだった。ただただ旨い。
俺はその後に来るであろう痛みに身構え、待つ。だが、それはいつまで経っても襲ってこない。代わりに、強烈な熱さが、俺の左目を襲った。思わず左目を抑え、その場に跪く。
しばらく熱さは続いたが、傷み同様に突然消える。
俺はゆっくりと左目を開けた。特に目が見えなくなったわけではないようだ。俺は安堵すると、目を瞬かせる。心なしか、部屋の中がはっきり見えるようになった気がする。
「大丈夫?」
スマラが俺を見上げ、尋ねて来た。俺はスマラを見ると、頷く。
「ヴァイナス、目が…」
スマラの言葉に首を傾げる。目がどうしたのか?
「貴方の左目、碧色になってる」
その言葉に驚く。
俺の目は黒目だ。それが碧色になっているとは。片目だけ色が変わるなんて、昔からある言い回しだが『厨二病を拗らせた』感じで少々恥ずかしい。
まぁ、ゲームでは割と良くあることだ。実際、キャラクターの編集機能で左右の目の色を変えるというのは珍しくないし。
『おお、二つ目の試練も乗り越えましたね。貴方は幸運にも恵まれているようです。その試練を乗り越える者は、六人に一人といったところでしょうか』
スフィンクスは感心したかのように頷いている。俺はとりあえず質問してみる。
「ちなみに試練に失敗した場合はどうなるのでしょうか?」
『死にます』
デスヨネー。
まぁ、俺は復活できるので致命的ではないが、その場合、強化の恩恵も受けられないだろう。これまでのことを考えると、簡単な仕様にしてもらえるとは思えない。
『いよいよ最後の試練ですね。挑戦しますか?』
スフィンクスの言葉に俺は頷くと、最後に残った赤い霊薬を手に取り、飲み干した。
辛い!
もはや痛みと言っていいほどの辛さに、俺は霊薬を吐き出しそうになるのを必死に堪える。
俺は辛党なので、大抵の辛い食べ物が好きなのだが、この辛さは今まで経験してきた中でも一、二を争う。
そんな辛さが予期していない状況できたものだから、目に涙を浮かべ、顔を真っ赤にしながらも、ただひたすらに我慢する。
口を開けて呼吸をすると、それすら刺激となって辛さを増幅するので、極力息を止め、限界が来たら少しだけ呼吸をする。
すでに鼻は鼻水が流れ、呼吸をするのには使えない。俺は辛さが引くまで、溢れる涙と鼻水を拭うことなく耐えていた。
やがて、今までの霊薬と同様に、突然辛さは消え失せ、俺は滝のように汗を流しながらも、〈極光の宴〉を取り出し、ゴブレットに水を注ぐと、顔を洗って涙と鼻水を拭う。
冷たい水が、辛さで火照った顔に気持ちが良かった。
『ついに、三つの試練を乗り越えましたね! 全てを達成した者は、今まで数えるほどしかいません。素晴らしい』
スフィンクスはそう言って、俺を祝福してくれた。
嬉しかったが、それよりも頭から水を被れる気持ち良さに気を取られ、しっかりとは聞いていなかった。
〈極光の宴〉が手に入って本当に良かった。少量ずつとはいえ、水を注げるのが有り難過ぎる。
『これで貴方は我が試練を全て乗り越えることができました。それを賞して何か褒美を与えようと思いますが、希望はありますか?』
スフィンクスの言葉に、俺は思わず考え込んでしまう。何が貰えるのか見当もつかないので、どう答えたら良いのか分からなかったのだ。
その場で考え込んでしまった俺を見て、スフィンクスは、
『少し唐突過ぎましたね。迷うのも仕方がありません。そうですね…』
スフィンクスは、俺の腰にあるレイピアを見て、
『その武器は良い物ですが、今の貴方には少々力不足かもしれませんね。もし望むのであれば、より良いものへと加工しましょうか?』
「そんなことができるのですか?」
『そうですね。材料があれば可能です。何か持っていますか?』
「手持ちの素材なんて、これぐらいしかありませんが」
俺はそう言って、滝壺の中で手に入れた金属塊を見せる。
『おお、それはミスリルに…珍しい、ヒヒイロカネとの合金ですね。それだけの量があれば、大抵の物が加工できますよ。どのような物がご希望ですか?』
そうだなぁ…。その前に、
「このレイピアにある特殊な能力はどうなりますか?」
『残したければ残すことはできますよ。その場合は、新たに力を封じられるのは1つだけになりますね』
現在の機能を残したまま、新たに一つ追加できるだって?
それはとても助かるな。
「ちなみに、どのような加工が一般的ですか?」
『一番簡単な加工は、ミスリル本来の効果を活かす方法ですね。ミスリルは軽く、魔力の効果を付与しやすい金属です。そのため、ミスリル製の武具は、本来必要な〈体力〉が、通常の半分ほどで済みます。そして、重さは通常の10分の1となります。また、強度も鋼鉄以上に高く、鈍器や防具であれば、約2倍の威力や防御力を持ちます。ただし、靱性は鋼とあまり変わらないので、刃のある武器に関しては威力は変わりませんが』
なに、この万能金属。流石ファンタジーでは有名なミスリルだけある。
だが、裏を返せば、そういったミスリル製の武器防具を装備した存在もいるということだ。だが、
「その場合、このレイピアがミスリル製になる、ということですか?」
『そうです』
ふむ、なるほど。それはそれで悪くない選択肢だが、おそらくもったいない。
スフィンクスがああ言うということは、それ以外の加工も可能だということだ。それなら…。
「ヒヒイロカネの効果とは?」
『ヒヒイロカネは別名「生きた金属」と呼ばれています。ゆっくりとではありますが自己修復能力を持ち、使い続けて行くと成長します』
「成長?」
『そうです。武器であれば威力が、防具であれば防御力が上昇するわけです』
なるほど、それはいいな。けど、
「成長の限界はあるのですか?」
『武具によって変化しますが、元となった武具の2倍程度が一般的ですね』
ふむ、なるほどね。それなら、
「俺と共に成長する武器を造ることはできますか?」
『貴方と共に成長?』
スフィンクスは小首を傾げる。あ、ちょっと可愛いかも。
「俺のレベルや能力が上がると、それに比例して威力が上昇していく武器です。できれば際限なく」
『つまり、貴方が強くならなければ、威力の低い武器のまま、と言うことですか?』
「そうです。俺が弱ければ鈍なままで構いません」
『…なるほど、面白い考え方ですね。大抵は単純に威力の高い武器や防御力の高い防具を求めるのですが』
元々非常に軽く作られているレイピアをミスリルと組み合わせても効果が薄い。それよりも、特殊な能力が得られるというのならば、後々にも役に立つものにしたい。
「あと、形は〈護拳突剣〉が良いです。できれば左右どちらの腕にも装備できる形で。俺両手利きなんで」
『なんとも、注文が多いですね』
呆れた表情のスフィンクスに、俺は望み過ぎたかと思い、
「できませんか?」
と質問する。すると、スフィンクスは微笑み、
『できますよ。それでよろしいのですか?』
と確認してきた。良かった、採用された!
「はい、お願いします」
『分かりました。少し時間が掛かるので、休んでいるのが良いでしょう』
お待ちなさい。そう言うと、スフィンクスは中央の台座に進み、俺が鷹男に渡したミスリルとレイピアを乗せ、何かの儀式を始めた。
その様子を見ながら、俺はスマラと共に身体を休める。そういえば、今のうちにレベルアップってできるのかな…?




