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32 幻夢(VR)でも無理ゲーはあるのか

 気が付くと、そこは見知らぬ場所だった。俺は周囲を見回すが、リィアとヴィオーラの姿がなかった。もう一度周囲を確認すると、石造りの壁に囲まれた小さな部屋であることが分かった。窓はなく、鉄で補強された頑丈そうな扉が一つあるだけだ。

 扉の覗き窓から光が差しこんでいるが、それは太陽の光ではなく、ランプか何かの明かりのようだ。扉を開こうとしてみたが、鍵が掛かっているようで開かなかった。

 俺は慎重に身体を動かし、どこかに不具合がないかどうかを確認する。特に違和感はない。


 〈陽炎の門〉じゃなかったのか…。


 ログアウトできなかったことに落胆しつつ、ここが始まりの街である可能性に期待することにした。

 俺はその場に座り込み、スマラに心話を送る。

『生きてるか?』

『貴方が生きているんだから、当然でしょ。それにしても二人はどこに行ったのかしら? それにここはどこ?』

『ここがどこなのかによっては、無事かどうかは分からないがね』

 スマラの安堵の籠もった心話に答えつつ、

『ここはどこだと思う?』

『分からないわ。気が付いたらここにいたんだもの』

 スマラの答えに俺は肩を竦めると、どうしたものかと思案する。扉は外側から南京錠か何かで施錠されているらしく、こちらから解錠することはできない。どうやら閉じ込められているようだ。

 状況が分からないが、敵対的な行動を取るのもまずいと考え、いざとなれば魔法を使うことにして、俺は一度武装を解除することにする。武器は〈無限の鞘〉へと仕舞い、防具も外すと鞘と共に腰鞄へと収納する。そして腰鞄を〈全贈匣〉に仕舞い込む。念のために、服以外を退避させておく。

 まずはヴィオーラたちを探さないとな。そのためにはどうすればいいかと考えていると、不意に頭の中に「声」が聞こえてきた。

『ヴァイナス、いまどこ?』

『リィアか?』

『そう』

 これも〈誓約〉の影響なのか、リィアと会話ができるようだ。スマラを見ると、彼女にも聞こえているようで、驚いている。

『石造りの部屋の中だな。外から鍵が掛かっているから出ることができない』

『それだとどこか分からない』

 リィアの答えに俺は苦笑する。まぁその通りだ。

『そっちはいまどこだ?』

『港』

 港か…。てことはコーストの街なのだろうか?

『港ってことはコーストの街にいるのか?』

 俺の問いにしばらく答えがなかったが、リィアの答えは、

『ヴィオーラが聞いてくれた。ここはズォン=カの都』

 向こうはヴィオーラと一緒のようだ。俺はとりあえず安心する。

 やはり始まりの街ではなかったか。だが、リィアたちとは別の場所に転移している関係上、まだ可能性は残っている。

 我ながら諦めが悪いとは思うが、確定するまではあらゆる可能性を想定しておいて間違いはない。すると街の名前にスマラが反応する。

『ズォン=カの都? また随分と離れたところに出たわね』

 スマラの言葉に俺も頷いた。

 ズォン=カの都は北の大陸最大の国家である「帝国」の首都にあたる街で、アル=アシの街の西に位置する。

 強大な帝国の首都として繁栄している街だが、この街の富を支えているのが〈闘技場(コロッセオ)〉と街の至る所に存在する〈迷宮(ダンジョン)〉だ。

 〈闘技場〉はアル=アシの街にあった〈闘場〉のモデルになった施設で、連日闘士による試合が行われている。形式や運営方法は〈闘場〉とほとんど同じだが、違いがあるとすれば、〈闘技場〉における試合は全て〈死闘〉であることだ。


 勝者には栄光を。敗者には死を。


 〈闘技場〉におけるルールはたった一つ、これだけだ。試合によって毒の使用や魔法の使用などの制限はあるが、基本的には何でも有効(ヴァーリトゥード)の殺し合いとなる。

 当然賭けも行われているので、対戦相手は盛り上がりを考慮して組まれるが、時には理不尽な対戦を組まれることもあるらしく、よほどのことがなければ戦おうとは思わないだろう。

 そして〈迷宮〉だ。この街には時代や大きさ、難易度も異なる大小様々な遺跡や施設などが存在する。これらを総称して〈迷宮〉と呼んでいるわけだが、これらの〈迷宮〉には、無限に宝物を生み出すものが少なくない。当然宝物を護るモンスターやトラップも生み出されるので容易に手に入るわけではないが、それらを手に入れることで生計を立てる探索者にとっては夢のような街なのだ。

 いっぱしの腕さえあれば、稼ぎが約束された〈迷宮〉。それを探索する探索者達によって、この街の富は支えられているのだ。

 そのため、この街には〈探索者組合〉の本部が置かれており、登録されている探索者の数もオーラムハロムで最も多いと言われている。

 探索者なら一度は訪れたい街、それがズォン=カだった。

『俺たちもズォン=カの都にいるのは間違いないのか?』

『こうして話しているから間違いない。念話は離れすぎると使えなくなる』

 リィアの言葉に頷く。とりあえず、全員無事であることが分かった。俺は安堵の息を吐く。

 それにしても、俺もいつかは訪れようと思っていた街だったが、まさかこんな形で訪れることになるとは…。

 まぁ、このまま死ぬまでここに放置ということはあるまい。部屋の外からは明りが漏れているし、誰かが管理している可能性は高い。幸い〈極光の宴〉も〈饗宴の食卓掛〉もあるので、餓死することはないだろう。状況が動かないと、判断のしようがないので、ここは大人しく待つことにした。

 特にやることもないので、体力を温存するため、とりあえず寝るかと思い、寝っころがっていると、誰かが近づいて来る足音が聞こえた。

 足音は扉の前で止まると、ガチャリと音がして鍵が外され、扉が開く。俺は起き上がると、警戒しつつも自然体で待つ。

「なんだ、今回は一人か」

 そう言って入って来たのは、身なりのいい制服に身を包んだ役人風の男だった。その後から武装した兵士が二人、姿を現す。

 俺はム・ルゥやエトー、ジュネが姿を現すことを期待していたのだが、その期待はあっさりと裏切られた。

「最近はここに送られる罪人も減って来たな。まぁ無理もないか。ここのところ辺境での戦が増えたからな。前線送りにするほうが効率的だ」

 男はそう言いながら口の端だけをくいっと上げる。どうやら笑っているらしい。

「罪人?」

「そうだ、何をしたのかは知りたくもないが、この場所にいるということは、罪人であることに間違いはない」

 男の笑みが深くなる。

「さて、君はこのズォン=カの街における罪状については詳しいかね? まぁ知らなくても結果は変わらないが」

 男は顔に満面の笑みを浮かべると、俺に向かって説明を続けた。

「探索者崩れの罪人の裁判なぞ、いちいちやる暇などないということだ。犯罪者は、ゴミ捨て場に群がる油虫(ゴキブリ)みたいなものだ」

 当たり前過ぎていちいち裁くことなどしない。男はそう言いたかったらしい。

「だが、犯罪者を放置するわけにもいかない。それではどうすればいいのか? 簡単だ。罪状を読み上げ、罰すればいい。罪を高らかに宣言し、首を刎ねればおしまいだ」

 男はそう言いながら頷くと、大仰に手を広げ、

「だが、慈悲深い女王様は、そんな犯罪者にも希望を与えよと仰せられた。罪を償う機会を与えよ、と」

 そこで男は俺の前に立ち、俺を見下すように視線を向けると、

「お前には大いなる女王の恩赦、〈慈悲の(ソード・オブ・マーシー)〉へと挑戦してもらう」

 そう言って指を鳴らす。それを合図に控えていた兵士が俺の両腕を取り、強引に立たせた。

「感謝するが良い。罪人に与えられる贖罪としては最も条件が良いのだから。ここに送られる罪人であれば、最前線に送り込まれて死ぬまで戦うか、〈闘技場〉で魔物の餌になるしかない。〈慈悲の剣〉を突破することができれば、お前の罪は許され、自由となる。頑張りたまえ」

 男は一切心のこもっていない激励の言葉と共にくいっと顎を動かす。それが合図となり、俺は兵士に連行され、連れて行かれた。

 兵士に強引に歩かされながら、俺は考えていた。一体これはどういうことなのか、と。

『どう思う?』

『分からないわ。話の流れから、どこかに連れて行かれるのだろうけど…』

 スマラからも困惑した心話が伝わる。

 どうやら、俺は罪人として処罰されるらしい。本当にこのゲームは普通の導入はないのだろうか? 奴隷かと思えば今度は罪人である。ただ、処罰の方法が単なる処刑ではないようだ。俺の疑問が伝わったのか、連行する兵士の一人が、

「それにしても運がなかったな。捕まった上に、〈慈悲の剣〉送りとはね」

 ご愁傷様、と兵士は言った。

「薄々予想はついているんだが、〈慈悲の剣〉とは何なんだ?」

 俺が質問を口にすると、兵士はふむと頷き、

「そうか、知らないか。最近はあまり使われていなかったからな。仕方がない。〈慈悲の剣〉は我が〈帝国〉が管理する〈迷宮〉の中の一つだ。その用途は『犯罪者の断罪』。貴様のような罪人を裁くための処刑台よ」

 どうやら到着したらしく、俺は鉄格子の前に立たされる。そこにいた兵士が何かの装置を操作すると、鉄格子が音を立てて開いて行った。兵士は俺を鉄格子の先へと突き飛ばす。

「物好きな探索者が潜ることもあるが、戻ってきたやつはほとんどいない。勿論、送られた罪人もな。どっちにしろ、死ぬのは自分の勝手だからな。俺達は止めたりしない」

 よろけた俺が蹈鞴を踏むと、背後で鉄格子の閉まる音が響く。

「慰めにもならんが、一応帰ってきたやつもいたらしい。もっとも、この〈迷宮〉が罪人処理場として利用されて100年近く、数百、数千と送り込まれた中から片手で収まる程度だがな」

 どうやら、難易度の高いダンジョンに放り込まれるようだ。〈陽炎の門〉でログアウトするはずが、今度は罪人としてダンジョンへ。ログアウトもできずに行うイベントとしては、最悪に近い状況だ。

 ログアウトしたら、絶対に運営に文句を言ってやる。足元の石畳から伝わる臭気に顔を顰めながら、俺はそう決意した。

 俺がその場に留まり、動く気配を見せなかったためか、兵士たちは槍を構えて威嚇してきた。さらには弓まで構え始めている。

「さぁ、とっとと先へ進むんだ。この先は階段になっている。そこまで全力で走るんだ。さもなくば、俺達が殺してやる」

 兵士の言葉が本気であると理解した俺は、兵士たちに背を向けると、全力で奥に向かって走り出す。

 背後からは楽しそうな笑い声が響く。

「どこまで行ける? 俺は50だ!」「俺は70!」「今回は最後まで行くぜ!」

 さらには賭け事めいたことまでやり始めた。一体何を…?

 ふと嫌な予感を感じた俺は、走りながらも強引に上体を倒した。さっきまで俺の頭があった場所を何かが通り過ぎて行った。それは通路の壁に突き刺さる。

 壁に突き刺さったのは、太矢(クォレル)だった。鏃が全て壁に埋まるほどの威力を考え、背中に冷たい汗が流れる。

 どうやら通路の側面から、太矢が打ち出される仕掛けがあるらしい。俺は横目に壁を見るが、彫り込まれた彫刻に紛れる形で配置される射出口(スリット)は巧妙に隠されており、パッと見では識別することができなかった。俺は立ち止まり、壁を調べようとする。

 そこに背後から矢が撃ち込まれる。俺は慌てて飛びのき、背後を振り返る。そこには弓を構えた兵士が見えた。

 どうやら、俺を狩りの獲物に見立て、全力で走らせて、入口に辿り着けるのかで賭けをしているようだ。

 このまま背後から攻撃されるのは厳しい。俺は意を決して走り出した。

 案の定、俺が走り始めた途端、背後からの攻撃は止まる。俺は左右の壁に意識を集中しながら、入口を目指して走って行く。

 途中、三度壁から太矢が飛び出した。幸運にもその全てを躱した俺は、入口の階段へと辿り着く。

 俺が階段に足を踏み入れた途端、頭上から鉄格子が降りてきた。俺は走ってきた勢いのままに、階段へと飛び込んだ。

 ガシャンと音がして鉄格子が降りる。俺は飛び込んだ勢いのまま、階段を転がっていった。そして、踊り場でようやく止まる。

 踊り場から階段を見上げると、頑丈そうな鉄格子が、通路を塞いでいる。もう戻ることはできない。俺は覚悟を決め、ゆっくりと階段を降りて行った。



 階段を降りた先は、石畳の通路になっていた。何かの魔法なのか、通路全体がぼんやりと光っているので、歩くのには支障がない。俺は通路に座り込み、乱れた息を整えていた。

「何とか無事だったようね」

 影から出たスマラが、心配そうに見上げてくる。

「何とかな」

 俺は呼吸を整えつつ、答える。俺はリィアと〈念話〉を行おうと意識を集中する。しばらくすると繋がったが、何かうまくいかない。

『聞こえるか?』

『聞こ…けど、そこは…目』

 俺は首を傾げる。

『そ…は、…の神の試…』

 途切れ途切れの念話は、ついに繋がらなくなった。どうやら、念話に相性の良くない場所のようだ。まぁ、ヴィオーラと一緒だから向こうは向こうで何とかするだろう。俺と違って罪人扱いにはなっていないようだし。

 俺は〈全贈匣〉を開いて、中から腰鞄と〈無限の鞘〉を出し、武器や防具を取り出して装備する。準備を終えた俺は、探索を始めるため、通路を進んでいく。

 しばらく進んでいくと、十字路に出た。俺が進んできた方向を南と仮定すると、北、東、西へと通路が続いている。

 どちらへ向かおうか。

『どこから調べる?』

『任せるわ』

 言うと思った。悩んでいても仕方がないので、まずは北から探索することにした。



 俺は北の通路へと足を踏み入れた。足音を忍ばせ、慎重に進んでいく。

 やがで、通路の先から妙な臭いが漂ってきた。

 嗅いだことのある匂いと、嗅いだことのない匂いだ。

 嗅いだことのある匂い、それは血の匂い。

 それが嗅いだことのない匂いと混ざり、妙な臭いとなって漂ってくる。

 俺は忍び足で進んで行く。目で合図すると、スマラもそれを見て影へと潜り込む。

先へ進むにつれ、匂いは強まっていった。やがて、何かの音も聞こえてくる。音の聞こえ方から、この先に何かがあるようだ。

 通路の先が広くなっているのが分かると、俺は壁際に寄り、ゆっくりと近づいて行く。そして、壁から僅かに顔を出し、先の様子を窺った。

 俺は目の前の光景に、思わず声を上げそうになる。

 通路の先は縦横100メートル、高さ50メートルはあろうかという巨大な空間になっていた。部屋の反対側には、先へ進む通路が見える。

 だが、それを遮るように部屋の中央には、こちらに背を向けて、蠢いている何かが存在した。

聞こえてくる音や、血の匂いから、どうやら何かを咀嚼しているようだ。そして、不意に持ち上げられた顔を見て、俺は声を上げそうになったのだ。


 (ドラゴン)


 それはファンタジー世界系のゲームでは有名な、伝説のモンスターだった。

 だが、口の間から漂うチラチラと吐き出される緑の光( おそらくブレスだろう )と独特の匂い、そして獲物であろう、もはや原型を留めていない亡骸から漂う血の匂いが、今までに経験のない、圧倒的な存在感を放っていた。

 俺はドラゴンに気づかれないよう、ゆっくりと後ろに下がる。


 あんな奴、倒せるのか?


 他にも通路があるのだから、他の通路を調べてからでもいい気はするが…。俺は十分に通路を戻ってから、大きく息を吐き、

『見たか?』

『見た、っていうか感じたわ。あれはちょっと無理じゃないかしら』

 俺の心話にスマラも俺と同じ感想を返してくる。今まで出会ったモンスターの中でも圧倒的だった。

『だが、あれを倒さなければ先へは進めないだろうな』

 どれくらいの強さかは、戦ってみないと分からない。それにゲームである以上、クリアできないダンジョンに放り込まれることはないはずだ。

 それに、オーラムハロムのドラゴンが見掛け倒しという可能性だってある。昔遊んだゲームの中に、熊より弱いドラゴンが出てくるゲームもあったし。

『一度戦って強さを確認する』

『本気!? まぁ止めはしないけど』

 いわゆる威力偵察というものをやってみる。死んでも復活できるゲームだからこそのやり方に、スマラは呆れた声を上げるが、反対はしなかった。

 ドラゴンの後ろに通路が見える以上、どちらにしろ、倒さないと先へ進めない可能性がある。

 俺はバスタードソードを仕舞うと、〈聖者の聖印〉とレイピアを取り出し、威力を高めた〈神速〉の魔法を掛ける。〈聖者の聖印〉は3レベルまでの魔法を無効化するので、追加でMPを払い4レベルまで高めた形で魔法を掛けるのだ。通常の3倍という、ごっそりとMPが減り、立ち眩みが起きたが気合を入れて耐える。スマラには影から出てここで待つように言って、威力を上げた〈付与〉を掛けてもらう。MPの関係で〈聖者の聖印〉のみ〈付与〉が掛かるが、ドラゴンが魔法を使ってくる可能性を考えると、今のところ考え得る最高の準備なのだ。

 俺は準備を終えた瞬間、一息に飛び出した。ドラゴンはま食事中でこちらに気が付いていない。

 俺は一気に距離を詰めると、ドラゴンの無防備な背中に切りつけた。〈付与〉によって威力を増した〈聖者の聖印〉がドラゴンの鱗をバターのように、


 切り裂かなかった。


 バットで大木を叩いたような感触が柄越しに伝わってきた。切れていないわけじゃない。だが切り裂いたのは表面から僅かに下まで。とてもではないが致命傷には程遠い。俺は諦めずにレイピアも交えて何度も切りつけたが、表面を削るだけでしっかりとした手ごたえを感じることはなかった。

 そこでドラゴンがゆっくりとこちらを向いた。食事を邪魔されたことに怒りを覚えたのか、こちらを向いて咆哮を上げる。


 〈竜の咆哮(ドラゴンロア)


 竜の発する咆哮は、その体格と込められた魔力によって物理的な衝撃を伴って俺を襲った。

 歯を食いしばって耐えようとするが、堪え切れずに吹き飛ばされる。床の上を転がりながら態勢を整えて起き上がろうとした。

 そこで俺が見たものは、大きく口を開けたドラゴンの喉の奥に光る緑色の光だった。


 〈竜の吐息(ドラゴンブレス)


 ドラゴンの口から放たれた緑光を浴びた途端、全身が燃え上がるような熱さを感じたかと思うと、今までに感じたことのない痛みが全身を襲った。

 外気に触れていた部分が、爛れて溶け落ちていく。このドラゴンのブレスは強力な酸性を帯びてた。更に肌が紫色に変色すると、みるみるうちに膨れ上がり、内側から弾け飛んだ。


 俺は風船の割れるような軽い破裂音と共に、全身を弾けさせて死んだ。



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