涙
ナイトパレードも見終わり、僕たちは家路に向かっていた。
駅で三人と別れ、優奈と二人並んで歩いていた。
「あ~ナイトパレードキレイだったなぁ」
夜空を見上げながら優奈は呟いた。
「ねぇカズ君、沙ぁちゃんとユウ君って何かあったの?」
いきなり不思議な事を聞いてきた。
「さぁな。優奈が期待するような事はないんじゃないか?」
「ふぅん。だってユウ君あれから沙ぁちゃんの事見ないようにしてたし…」
(女の子は何で他人の恋路まで気になるんだろう…)
なんて事を考えてる僕を優奈は突然覗きこんできた。
「カズ君!ちゃんと聞いてる?」
「えっ?なに?」
「もー何でカズ君はいつもそうなの?私の話全然聞いてくれない!」
口を尖らせ優奈は拗ねていた。
「疲れてんの。誰かがはしゃいで引っ張り回すから」
優奈の頭をポンポン叩き答えた。
「あ~私のせいにするんだ。せっかくトイレまで行って二人っきりにしてあげたのに」
「はいはい。優奈が期待してるような事にはならなかったよ。残念でした」
そう聞いた優奈は、一瞬安堵の表情を浮かべた。
「そ、そうなんだ。残念だったね」
そう答える優奈は表情を見せないよう遠くをみていた。
会話がなくなり暫くすると、いつもの分かれ道に着いた。
「…ねぇ、じゃあ私こっちだから…」
いつものように伝えてくる優奈。その声はどこか寂しげだった。
「…あぁ。じゃあな」
「うん…じゃあね」
優奈に軽く手を振り家に向かおうとした瞬間だった。
優奈は僕の上着の裾をギュッと握ってきた。
「優奈?」
振り返った瞬間だった。
優奈は僕の体に身を預けるように寄り添ってきた。
何も言わない優奈。
何も言えない僕。
顔を埋めたまま優奈はそっと呟いた。その手は僕の上着をきつく握りながら…
「いい子いい子…して…」
僕は優奈の頭をそっと撫でるしかできなかった。
とたん、優奈は堰を切ったように、肩を震わせ涙を溢れさせていた。
どれくらいの時が経ったんだろう。
「沙ぁちゃん達に心配かけないように頑張ったんだよ」
「ママに元気な優奈見てもらえるように頑張ったんだよ」
「頑張ったんだけど…頑張ったんだけど…ごめんなさい」
啜り泣く優奈は僕に想いを溢れさせていた。
亡くなった母親との思い出がたくさん詰まったあの場所で優奈は誰にも心配かけないよう明るく振る舞っていた。
「頑張ったな、優奈」
優奈の頭を撫でながら答える僕の胸元で優奈は顔を埋めながら首を左右に振った。
「ギュッとして…」
呟く優奈。
僕は優奈をきつく抱き締めながら優奈に囁いた。
「沙織も悠太もわかってたよ。優奈が明るく振る舞っていた事を」
僕の言葉に頷く優奈
「わかってたから、何も言えなかった。」
頷く優奈
「俺達、友達だろ?嬉しい事も悲しい事も全部出していいんだよ」
そう言う僕の胸元で優奈は小さく首を左右に振った
「…カズ君じゃなきゃ」
そう言って優奈は僕の上着をきつく握りながら泣き出した
やがて優奈は顔をあげ涙で濡らした瞳で僕を見つめていた
「カズ君の前じゃなきゃ優奈は素直になれない…」
そんな優奈をいとおしく想い、僕たちはキスをした
唇が離れた後、優奈は俯き胸元に顔を埋めながら呟いた。
「カズ君…」
優奈は僕をグッと押し抱き締める僕から離れた。
「…ごめんなさい」
涙を拭い、そう呟いて走り去っていった。
僕は間違っていたのだろうか…