思い出の場所1
「おーい!こっちこっち」
遅れてきた僕たちに向かい、手を振る悠太。
「お前ら遅いぞ、何してたんだよ?」
冷やかしと軽い怒りを交え、悠太が聞いてきた。
「ごめんなさい。カズ君迎えに行ったら、瞳さんに会ってお話してたの」
顔の前で手を合わせながら謝る優奈。
「ねぇカズ君?瞳さんって…?」
僕の上着の裾を握りながら不思議そうに聞いてくる美奈ちゃん。
「あぁ俺の母親だよ。美奈ちゃんまだ会った事なかったね」
そう答えると、美奈ちゃんは少し悲しそうな顔をした。
そんな美奈ちゃんを見た僕は、美奈ちゃんの耳元でこう囁いた。
「今度、美奈ちゃんの事、紹介するよ」
それを聞いた美奈ちゃんは、いつもの明るい笑顔に戻っていた。
(でも…何て紹介したらいいんだろ?元カノの……)
そう悩んでいると、無邪気に優奈は、沙織と美奈ちゃんに尋ねだした。
「ねぇねぇ、今日はどこにいくの?」
まるで遠足に行く子供のような目をして…。
すると美奈ちゃんは、すかさずこう答えた。
「今日は、フェアリーランドに行きたいの。ダメかな?」
(フェアリーランド…か。大丈夫かな、優奈は?)
そう思いながら、優奈を横目で見ていた。
「うん!行く!フェアリーランド!すっごい久しぶりだから楽しみだよ」
跳び跳ねそうな勢いで僕の腕を掴みながら答えていた。
(…もう大丈夫そうだな)
「じゃあ行こうか。」
そう言いながら悠太は、先頭を歩き始めた。
フェアリーランドに向かう電車の中では
いつ振りなのかや、どの妖精キャラクターが好きなのかをワイワイ話していた。