お迎え
ピンポーン
皆と出かける朝、まだ8時だというのに、誰かが訪ねてきた。
「はいはい」
面倒くさそうに玄関を開けると、そこにはウキウキした優奈が立っていた。
「どうした?迎えに来るの早くないか?」
早すぎるお迎えに驚く僕。
「楽しみで早起きしちゃったから…」
モジモジ恥ずかしそうにキョロキョロしながら答える優奈。
(なんだ?何照れてるんだ?)
(はっ!)
そう僕はTシャツ一枚にパンツというだらしない格好で玄関に立っていた。
「あぁ、とりあえず中に入りなよ」
慌てる僕。
「う、うん」
恥ずかしそうに答える優奈。
リビングにちょんと座る優奈にお茶を差し出し
「し、シャワー浴びてくるから待ってて」
そう伝え僕は風呂場に向かった。
「お待たせ」
シャワー浴び、外出する姿になってリビングで待つ優奈に声をかけた。
「も~あんな格好で出てこないでよ」
顔を真っ赤にして怒る優奈。
(いや、早すぎなんだよ、お前が)
そう思いながらも、謝っていないと優奈は拗ねそうだった。
「ゴメンゴメン」
「ねぇ?瞳おばさんは?」
変わらない部屋を見回しながら尋ねる優奈。
「あぁ、夜勤だから、ボチボチ帰ってくるんじゃないか?」
「大変なんだね、看護師さんも…」
母に会えずに残念がる優奈。
「そうだな。まぁ年甲斐もなく夜勤までやってんだよなぁ」
「でも元気そうでよかった」
素直に喜ぶ優奈。
「まぁ元気なくせして、家事は全部俺に押し付けてくるんだよなぁ。だいたい…」
母がいない今だから言える愚痴を優奈にぶちまけていると、何故か優奈は視線を反らしていた。
(はっ!)
そう我にかえった瞬間、背筋が凍るのがわかった。
そっと振り返ると僕の後で仁王立ちしている母がいた。
「いい度胸だね、カズ」
そう言うと同時に持っていた鞄で殴ってきた。
(優奈…早く教えろよな…)
「瞳おばさん!久しぶりです」
喜びながら優奈は母に挨拶をした。
「えっ?もしかして優奈ちゃん?ずいぶんキレイになったわね」
母も喜びながら優奈を抱き締めていた。
「あっ優奈ちゃん?おばさんはつけなくていいから、昔みたいに呼んでいいのよ」
「はい!瞳さん」
「バカ息子が親のいない家に女の子連れ込んでると思えば、優奈ちゃんだったのね。まぁバカ息子にそんな甲斐性ないか」
母は、まだ優奈を抱き締めたまま、息子を批判していた。
「で、どうしたの?今朝は?」
尋ねる母に、今日の予定を思い出した二人。
「あ~もうこんな時間!、ごめんなさい、瞳さん。これからお出かけだから。また来ます!」
そう言いながら慌てて僕の腕を掴む優奈。
(コイツと一緒だといつもドタバタだな)
なんて考えながら優奈と待ち合わせ場所に急いで向かった。