悲しき死神
死神は人を殺すことが出来ません。いや、殺してはいけないのです。
理由を問われると困りますね。
だってこれは自然の摂理なのですから。
死神は人の寿命がわかります。
そんなこと当たり前。
だって死神なのですから。
死神は人の感情が分かりません。
何故だかわかるでしょう?
だって神様なのですから。
感情を持ってはいけないのです。
そう、決して。
何があったとしても。
死神は人の姿をしていています。
黒い髪に黒い目。黒いマントに黒いフードを目深にかぶった格好をしています。
そんな姿をしていても、人は全く驚くません。
だってそれが当たり前だからです。
だから、違和感はないのです。
それに性別もありません。
15歳くらいの少年の姿をしていますが、性別はありません。
死神は、人を平等に扱わなければ行けません。
それが、神なる者の勤めだから。
そんな死神は、ある日、一人の少女に出会いました。
その少女は、昔から病気がちで、今は思い病気に罹っていました。
そして、今日医師に余命宣告されていました。
死神は全く驚きませんでした。
だって人の寿命が分かるのですから。
少女は死神に向かって言いました。
「明日死ぬのだったら、いますぐあたしを殺してちょうだい」
死神はその願いを断りました。死神は人を殺すことが出来ないのですから。
そんな死神に、少女は言います。
「役に立たない死神ね。いいわ、だったらあたしが死ぬまで私の所にいなさい」
死神は頷きました。
その後少女は、しゃべり続けました。
嬉しかったこと。
楽しかったこと。
苦しかったこと。
辛かったこと。
友達のこと。
少女は、死ぬまで話し続けました
そして最期に、笑って言いました。
「あたしね、さっさと死にたかった。さっさと死んでこのからだからおさらばして、生まれ変わるの。そうして、外でいっぱい遊ぶの。友達と一緒にたくさん遊ぶんだ」
少女はゆっくりと目を閉じました。
死神は一粒の涙を零した。
死神は人を殺すことが出来ません。いや、殺してはいけないのです。
理由を問われると困りますね。
だってこれは自然の摂理なのですから。
死神は人の寿命がわかります。
そんなこと当たり前。
だって死神なのですから。
死神は感情が分かりません。
何故だかわかるでしょう?
だって神様なのですから。
感情を持ってはいけないのです。
そう、決して。
何があったとしても。
もし感情が芽生えたのなら、その時点で、それは神ではありません。