第三話
少々更新が遅くなりました。
書く暇が無かったのと、書けてもあまり進まなかったから、ってこの先大丈夫か・・・・・・。
第1章~亡国の姫君、そして異世界~
第三話
魔法。確かにエリフィアはそう言った。
しかし誠二の知識では魔法とは空想上の技術でフィクションの塊のような物のはずだ。中世では魔術の存在が信じられていた時代もあったようだが、それも一種の宗教的行為でしかなかったはずで真にこのような現象を起こしたなどは無かったはずだ。
しかしながら現に負っていた傷を完全に一瞬にして直したのも事実。現代の人間から見たら奇跡以外のなにものでもない。
「魔、法?・・・・・・魔法ってあの火を出したり水を出したりする?」
誠二はとりあえず混乱の渦に巻き込まれそうになる思考をなんとか留め、自分の知識からなんとか当てはまりそうになるものを選んでエリフィアに訊ねた。
「確かに炎や水を出すことも出来ますが、直接的に行えるのは大魔元帥くらいです」
またもフィクション寄りの単語が出てきた。大魔元帥。大方魔導師のお偉いさんといったところか。ただエリフィアの言葉から推察するとゲームやアニメのように簡単な原理ではないようだ。
「あの、セイジ、さんは魔法を使えないのですか?」
様、と呼びそうになった声を飲み込み「さん付け」で聞いてきたエリフィアだが、誠二はどう答えたものか迷っていた。エリフィアが冗談を言ってるようには見えないし、なにより目の前で実演されてしまっては否定のしようがない。しかし目の前の現実に理性が追いついていない自分もいる。目の当たりにした現実に頭では「存在」を認めているのに心がその「存在」を否定する。
「うん、使えない・・・・・・」
仮にこの世界、地球か、はたまた宇宙そのものかどちらにしろ今自分がいる世界の他に別の世界があるとして、その世界の常識が分からない以上変に話を合わせて話しが噛み合わなくなるよりは正直に話して相手から情報を引き出したほうが賢明だろうと思い使えないことを明かす。
「魔力がないのですか?」
「分からない。そもそも、魔法自体初めて見たから」
誠二がそう言うとエリフィアは一瞬怪訝な表情を浮かべたがすぐに何故だか合点がいったという風な顔になる。
「それではもしかして、ここはゲルギニア大陸の技術国ゴルドンですか?」
ゲルギニアなどという大陸はないしゴルドンなんて国も聞いたことがない。エリフィアの言葉とその表情に誠二はいよいよもって確信を深めていく。
彼女はこことは別の世界から来た者だということだ
では自分はどうすればいいのだろうかという疑問が湧いてくる。こちらには存在しない技術を彼女が使ったということで誠二はそんな突飛な考えを肯定することが出来るが、エリフィアの場合はどうだろうか。まずはここが違う世界だということを話すべきか。しかしそんな話どの世界の人間でもいきなり聞かされたって信じないだろう。では自分と同じ立ち位置に導けばどうだろうか。こちらの技術、例えばテレビや電話など電化製品を見せれば納得してくれるだろうか。だが先程彼女が言った技術国という話がそれを躊躇わせる。フィクションの中では技術といっても汽船か蒸気機関車くらいがせいぜいだと思う
が、相手は魔法という未知の技術を使う世界だ。テレビや電話と変わらない物が無いとは言い切れない。
そこまで考えて先程のやりとりの中に見落としていたものがあるのに気づく。「魔法自体初めて見た」という誠二の言葉に対して、エリフィアは「それではもしかして、ここはゲルギニア大陸の技術国ゴルドンですか?」と聞いてきた。そこから推察される答えは、恐らく彼女の世界は全ての人間が魔法を使える訳ではないということだ。少なくともエリフィアの言う技術国ゴルドンなる国は魔法の文化がそれほど発達していないと思われる。ならばそのゴルドンという国の事を聞いてみるのが得策か。
だがとりあえずはエリフィアの質問に答えねばならない。
「いや、ここは日本と言う国の東京と言う都市だ。君はどこの国から来たんだい?」
「私はグランディア公国から来ました。来ましたと言っても自分がどうやってここに来たのか理解が追いついてないんですが。・・・・・・しかし、ニホンですか。聞いたことがありませんね」
思った通り日本のことは知らないらしい。
「俺もグランディア公国なんてのは聞いたことがないな。どの辺にあるんだい?」
「グルトニア大陸の内陸です。あまり大きな国ではありませんが国力はそこそこあります」
グルトニア大陸。やはり聞いたこともない名前だ。今までの話から仮定するとエリフィアの居たグランディア公国と技術国ゴルドンは別の大陸で、恐らくその距離もかなり離れているのだろう。
「ニホンという国はどこにあるんですか?」
「どこっていうか、日本は島国なんだよ。それに俺はこの国以外のことは知らないから日本がどのあたりにあるのかってことは分からない」
誠二の言ってることはあながち嘘でもない。エリフィアの世界で照らし合わせてみれば日本などという国はないはずだし、であればそこに住んでいる誠二がゴルドンやグランディア公国のことを知らなくてもおかしくない、さらに言えば日本は鎖国をしていたという歴史があるのでそれを告げればエリフィアも納得するだろう。
「今度はこっちの質問いいかい?」
「はい、どうぞ」
「まずは、君がここで目覚める前はどこにいたか覚えてるかい?」
とりあえずは先方の事情を知らないことにはどう対処すべきかを決めかねる。誠二はまずはエリフィアがここに来た経緯を探ることにした。
「・・・・・・実は、私の国グランディア公国が敵国の襲撃を受けて公都の中まで侵入を許してしまい、それで大公様が私を禁断の祭壇に行って禁術を使えと申されて。それで祭壇で術を使ったところまでは覚えてるのですが・・・・・・」
「気づいたらうちのベットで寝ていた、と」
「・・・・・・はい」
誠二はその話を聞いて思考の海へ潜る。エリフィアの話を信じるならば、その禁術とやらは世界を渡る力を持っているということだ。さらに、エリフィアの口ぶりや話の内容を考えるとエリフィアは王族かそれに近しい者、あるいは国の根幹に関る人間だと推察できる。そんな人間が国の窮地に城を放棄してまで世界を渡ったということは敵国の目的はエリフィアの持つ禁術か彼女自身、あるいはその両方とも考えられる。
が今大事なのはそこではない。
「一つ聞いていいかい?」
「どうぞ」
そう前置きして、今一番大事なことを誠二は尋ねる。
「その禁術っていうのはどんなものなのか分かってるのかい?」
この質問の答え次第でこの後の対応が変わってくる。まず一つにはエリフィアが禁術の効果や由来を知っていた場合だ。それらを知っていたならばここが異世界であることを説明するのも楽だろう。だが知らなかったならば、こちらの技術や歴史を教えないと異世界の存在など信じないだろう。
「えっと詳しくは知らないのですが、公宮魔道長の話では場所と時間を跳躍する魔法で、初代グランディア公の戦友の魔道師が作ったと」
なんとも中途半端な返答が来た。
時間の概念があるのならばそういう類の魔法もあるのだろう。
「じゃぁ、なぜその魔法が禁術扱いなのかは知ってる?」
「たしか、2代目大公がその魔法を使って異界から化け物を召喚したからって聞いたことが」
どうやら先方の世界にも異界というものがあるようだ。ファンタジーにありがちなワードが存在してて良かったと誠二は内心安堵した。
異なる世界が認識されてるならば説明も楽かもしれない。
「なるほどね。つまり君は大公様の命令でその禁術を使ったはいいけど、本来ならなにかが召喚されるはずのところを何かの手違いで君がここに召喚された、と。こんなところかな?」
エリフィアから聞いた情報を整理した誠二はそう結論をだした。
「多分、そうだと、思います・・・・・・。」
その結論を聞いたエリフィアは俯き加減にそう答えた。
「・・・・・・、じゃぁ次の質問いいかい?」
その様子を見た誠二は逡巡したがまずは現状を理解しないことには事に当たれないと誠二にとって、さらにはエリフィアにとっても重要な質問を投げる。
う~ん、なにかが足りない。これ以上更新止めるのもあれだからここまでで載せてますが、微妙に切りが悪いような。