第二話
異世界の姫君
第1章~亡国の姫君、そして異世界~
第二話
銀髪の少女を手当てしてから一時間。誠二は外から戻ってリビングで救急箱を漁って
いた。
「・・・ない、ない、ない」
誠二は絆創膏を探していたのだが、どうやらきらしていたようで救急箱をいくら漁っても見つからなかった。そもそもなぜ絆創膏が必要なのかと言うと、先程外出した際に目的地までの近道に使った空き地のトタンで手を切ってしまったのだ。ない物はないので仕方なく消毒だけしてティッシュでも当ててれば良いだろうと消毒液を掛け染みる傷口に涙してると、リビングの廊下へと繋がる扉が開かれた。そちらへ顔を向けると、手当てして眠っていたはずの少女が扉から顔を覗かせていた。
「あ、目が覚めたんだ」
傷口の消毒を手早く済ますと薬を塗ってティッシュを巻いておく。一方少女は誠二の言葉にびくっとしたが恐る恐る扉を潜ってリビングへと入ってきた。誠二はそれを確認すると少女に歩み寄る。
「って言っても言葉分かんないか」
少女の傍まで来ると誠二はそう呟く。なにせ銀髪に深い海の様な青い瞳、肌も白人並みか下手するとそれよりも白いのだ。外見からして日本人ではないのは一目瞭然。故に誠二の台詞は尤もなのだが、少女は予想に反した反応をした。
「イえ、少しワかりまス」
少々カタコトだが少女はそう答えた。これには誠二も驚いたがそれならと話を続ける。
「そっか。それならまずは身体、痛いところはない?」
その問いに対して少女は自分の身体を見下ろす。そして左の包帯を巻いてある二の腕を押さえて答える。
「こコがすこシ痛いデス」
「そうか。じゃぁこの薬を飲んで」
少女の答えに頷くとテーブルに置いてあった粉薬とコップに入った水を差し出す。少女は怪訝な顔をして警戒するが誠二は微笑んで補足をする。
「これは痛み止めの薬だから。飲めば痛みも和らぐはずだよ」
そう言って薬と水を少女の顔の前に突き出す。少女は少し逡巡したあと意を決した様子で突き出されてるものを受け取り薬を口に含み水を流し込む。ごくんと音を鳴らして喉の奥に押し込んだ少女は顔を顰める。
「苦いです・・・・・・」
そう答えた少女は自分の発した言葉に口に手を当て驚き誠二も同様に驚いている。なぜなら少女は先程までのようなカタコトではなく、流暢な日本語を喋ったからだ。どこかのネコ型ロボットの道具じゃあるまいしと、誠二は当たり障りのない言葉で返答を促す。
「お腹は空いてない?なにか食べる?」
「・・・・・・少し、空いてます」
様子を探るためと、実際にそう思ったからした質問だったのだが案の定の返答と先程のは聞き間違えじゃないと言う答えが返ってきた。時間も丁度昼時なので誠二は「じゃぁ昼食にしよう」と少女を食卓に促す。元々高校の頃は母が仕事で夜遅くまで帰って来ない事が常だったので誠二の料理スキルはそこそこ高い。因みに得意なのは肉じゃがである。
今日は季節が夏ということもあり冷製パスタだ。少女が席に着いたのを横目に誠二はリビングに直接繋がってるキッチンへと入っていく。右手を怪我してるのでビニール手袋で保護しながら手早く調理していく。冷製パスタといっても茹でて氷水に浸けて、今回はトマト缶とツナで和えるだけなのでそう時間は掛からない。15分ほどで二人分が出来上がりパスタを盛った皿を食卓に並べる。少女の前に皿を置くと少女は物珍しげに出された物を眺めてる。それを微笑みながら見てる自分にはっとするとフォークとスプーンを差し出して少女に訊ねる。
「これを使って食べるんだけど、使ったことある?」
それを聞いた少女は皿と誠二の持ってる物を一度交互に見ると頷いて答えた。
「そう、よかった。じゃぁはい」
そう言って少女の前フォークとスプーンを置くと自分も席に着く。両手を合わせて「いただきます」と言うとフォークとスプーンで食べ始める。が、少女はフォークとスプーンを持ったまま困惑しているようだった。
「もしかして、食べ方分からない?」
誠二がそう聞くと少女は俯き加減のまま頷く。
「そっか。じゃぁ教えるから俺のほう見てて」
そう言う誠二は右手にフォークを左手にスプーンを持ち、ペンを使うような持ち方に変える。そして自分の口に合う量のパスタをフォークで掬い、そのフォークの先端をスプーンに当ててくるくるとフォークを回す。フォークにうまく巻きついたパスタを口へ運び食べる。咀嚼したパスタを飲み込むと少女に向かって聞く。
「こうやって食べるんだけど、出来る?」
それを聞いた少女は返答はせず、見よう見まねでフォークとスプーンを使い食べる。少々巻きつけるところで苦労していたようだが問題なく食べることに成功したようだ。
「・・・・・・おいしい」
食べることに成功した少女はパスタの味に感動を覚えてるようだった。
それを見た誠二は微笑みながら食事を進めていく。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
昼食を食べ終えた二人は食後の熱い緑茶を啜っている。始めは緑茶の渋さに顔を顰めてた少女だったがだんだんと慣れてきたのか今では問題なく飲んでいる。
そして二人ともが一息付いたのを見計らって誠二が切り出す。
「じゃぁまずは自己紹介からしようか。俺の名前は九場誠二。一応言っておくけど九場が苗字で誠二が名前だからね」
そう切り出した誠二は相手の外見から外国の人間だろうと思いフルネームの順番を補足した。それを聞いた少女は一瞬逡巡した様子を見せるが。すぐに誠二に目を合わせると自己紹介を始める。
「私の名前はエリフィア。エリフィア・ノーマン・グランディアです。セイジ様、いやクバ様ですね。まずは手当てしていただいてありがとうございます。」
そう言って頭を下げる少女もといエリフィア。それに誠二は苦笑を浮かべる。
「そんな様なんて付けないでいいのに。俺はそんな偉い人間じゃぁないしね。それに手当てしたって言ってもただの応急処置だから、ちゃんと医者に見せないと」
「この程度の傷ならお医者様に診せるまでもありません」
エリフィアはそういうと包帯の巻いてある左の二の腕に右手を当てると目を閉じた。誠二がどういうことだろうと思ってると二の腕に当ててる右手が光を放ち始めた。誠二が目を見開いて驚いていると手の光が収まっていく。光が完全に消えたところでエリフィアが目を開けた。そしてそのまま巻かれている包帯を取る。包帯から現れた光景に誠二はさらなる衝撃を受けた。
「・・・・・・傷が、消えてる」
そう、彼女を助けた時にあった傷が綺麗さっぱり消えてエリフィアの白い肌が最初から傷などなかったかの様に包帯の拘束から開放されて輝いてる。
しばらくポーっと見つめていたようでエリフィアが気恥ずかしそうに身を捩じらすと誠二はハッっとなってエリフィアに訊ねる。
「い、今のは、なに?」
エリフィアは恥ずかしそうな顔を一瞬ぽかんとさせると何を言ってるだというふうに答える。
「魔法、ですけど?」
本当なら月曜にはあげる予定だった二話目ですが風邪を引いてしまい遅くなりました;;
あと冷製パスタですが作者は作ったことがありません。ですので大雑把にこんな感じだろと思い書いてしまいましたw「そんな簡単じゃねぇよ」と思われた方がいらしたらすいませんです;;