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この世界では最弱職とされている『モンスターテイマー』ですが私のせいでその評価が覆りそうです!  作者: おおこがねい いぶきん
第二章 新人模擬戦偏 ーーーー前代未聞のテイマー、戦場に立つ

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第8話 組み合わせ発表とざわつく空気

広場にはざわめきが満ちていた。

一次選抜を突破した冒険者候補たちが再び集められ、皆が緊張と期待に満ちた顔つきをしている。


さっきまで、私――アヤノの胸は軽く高鳴っていた。

けれど、周囲から聞こえるざわつきが、じわりじわりとその鼓動に影を落とし始める。


「本戦ってチーム戦らしいぞ」

「誰と組まされるんだろうな。相性悪いと詰むぞ」

「テイマーとか来たら最悪じゃん」


……やっぱり、私は“最弱職”なんだ。

そんな雰囲気がひしひしと伝わってくる。


その時、ギルド幹部が壇上へ上がり、石造りの舞台から声を張り上げた。


「静粛に。これより、本戦の概要を説明する!」


一瞬で空気が引き締まる。


「本戦はチーム戦。二〜三人の組で戦ってもらう。形式はトーナメント。降参、戦闘不能で敗北だ。

 命に関わる攻撃は禁止。安全魔法が発動するから、怪我はあっても死ぬことはない」


ざわ……ざわ……


誰と組むか。

どう戦うか。

これから起こる戦いを想像して、空気はみるみる緊迫していく。


そして、幹部は手元の名簿を確認すると、次々とチーム名を読み上げ始めた。


「――アヤノ・ミオリ!」


ビクリと背筋が跳ねた。

私の名前の後、わずかに間を置いて続いた名は――


「カイル・バーンズ。同じチームだ」


「……へ?」


聞こえた名前に一瞬思考が止まった。


視線を巡らせると、こちらに手をぶんぶん振っている青年が目に入る。


「やあアヤノちゃん、よろしくな!!」


眩しい笑顔。ポジティブの塊みたいな声。

そして、お調子者で人懐っこい性格が全身からにじみ出ている。


肩まで伸びた癖っ毛の金髪がふわっと揺れ、青い瞳は底抜けに明るい。

少し軽そうだけど……誰にでも話しかけるタイプだ。

実際、一次選抜でも彼は妙に明るく喋りながら敵をぶった斬っていた。


“剣技だけは一流だが、非常にノリが軽いお調子者の冒険者候補”

――それが彼、カイル・バーンズだ。


「アヤノと同じチームとか、めっちゃ嬉しいんだけど!いやぁツイてるわ俺!」


「え、えっと……よろしくお願いします……」


眩しい。

明るすぎて直視すると焼けそうだよ、カイルさん。


だが、周囲の反応は違った。


「よりによってテイマーか……」

「カイルかわいそ……」

「いやでも見た目だけなら悪くねぇよな」

「いや弱いだろテイマーは!」


刺さる刺さる。

耳を塞ぎたくなるような声が、あちこちから飛んできた。


肩がすぼまってしまう。

私は……足を引っ張ってしまうのだろうか。


その時、胸元からふわりと温かい気配が上がった。


《大丈夫だよアヤノ》

《ぼくら、ちゃんといるよ》


コハクとルゥの声。

たったそれだけで、胸がすっと軽くなる。


「……ありがとう。大丈夫、だよね……」


小さく呟くと、コハクとルゥは誇らしげに気配を弾ませた。


その様子を見たカイルが、ひょいっと首を傾げる。


「アヤノ、君さ……もしかして結構すごいテイマー?」


「え? すごいとか、そんな……」


「いや、その……質問があるんだけどさ」


急に声を潜め、カイルは私の隣に座り込む。


「“加護”って、知ってる?」


「……加護?」


聞き慣れない言葉に目を瞬くと、カイルは少し得意げに続けた。


「魔物と深く心を通わせた時、ごく稀に得られる特別な力さ。

 昔の“魔物の英雄”たちは、その加護を持っていたって話もある」


「へぇ……そんなものが……」


「でも、普通のテイマーにはまず起きない。

 魔物は指示すらまともに聞かないのが普通だしさ」


そう。

それは、私もよく知っている“常識”だ。


しかしカイルは、ニヤッと笑って私を覗き込む。


「でもさ、アヤノ。なんとなくだけど……君は、加護をもらえそうな気がするんだよな」


「えっ!? な、なんで……?」


「勘! でも俺の勘、結構当たるんだぜ?」


軽く笑ってみせる彼の声には、不思議と温かみがあった。

“信じてくれている” 優しい響き。


胸の内で、ぽっ、と灯りがともった気がする。


――その瞬間だった。

コハクとルゥから、かすかな光が私の指先を包んだ。


まるで、心の奥に柔らかい火が灯るような感覚。


(これ……なに?)


問いかける前に、ギルド幹部の声が再び広場を揺らした。


「これより、本戦の組み合わせ表を掲示する!」


広場に大きな紙が貼り出され、冒険者たちが一斉に押し寄せる。


「アヤノ、あそこ!」

「は、はい!」


私はカイルに引っ張られ、表の前まで走った。


――そして、見つけた。


【第一回戦】

《魔法士+盾戦士》 vs 《アヤノ・カイル組》


「……え?」


「おお……マジかよ。相手、優勝候補じゃん!」


周囲がざわつく。


「よりによって初戦かよ」

「テイマーじゃ絶対勝てないだろ」

「カイルの見せ場もここまでだな……」


胸がきゅっと締めつけられた。


(やっぱり……怖い……)


でも、


《アヤノ、がんばろ》

《ぼくたちがついてるから》


コハクとルゥの声が、私を優しく支える。


私はカイルを見た。

カイルは――満面の笑みだった。


「アヤノ! 最強コンビでぶっ倒そうな!」


「……はい!」


その時、私の胸の奥で何かが確かに芽生えた。


恐怖よりも、期待。

不安よりも、戦いたい気持ち。


“ここから私たちの本当の冒険が始まるんだ”――そう思えた。


そして会場に、試合開始を告げる鐘が鳴り響く。


――模擬戦、本戦が始まろうとしていた。

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