第7話──新人模擬戦への招待
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朝の光がギルドの石畳を照らす中、アヤノは受付のリーナに呼び止められた。
「アヤノさん! 来てくれてよかった。ちょうどあなたに声をかけようと思っていたの」
「……私に、ですか?」
リーナはにこやかに頷く。
「新人冒険者向けの模擬戦に、あなたを推薦することになったの。広場での選抜試験です。一次選抜を勝ち抜けば二次選抜に進めます」
暴走ウルフの実態を突き止めた一件からなのだろうか。アヤノは息を呑む。
模擬戦――ギルドの新人がその実力を競う試験。失敗すれば二次選抜には進めない。周囲の視線や評価も、落ちれば一気に厳しくなる。
「……私、やれるのかな……」
胸の奥で小さな不安が芽生える。コハクの細い尾が揺れ、ルゥが足元で小さく跳ねた。魔物たちはいつも通り無言で見守っている。その静かな存在に支えられ、アヤノは決心し、模擬戦一次選抜の会場へと足を運んだ。
広場に到着すると、すでに他の新人たちが集まっていた。剣を振る者、魔法を試す者――皆、真剣な眼差しで訓練場の様子を見つめている。アヤノは少し離れた場所で深呼吸し、肩のコハクとルゥを見下ろした。二匹の魔物たちは、いつも通りアヤノの緊張を和らげてくれる。
心の中で、失敗したらどうしよう、周りの目はどう思うだろう、と不安が渦巻く。しかし、コハクが尾を揺らし、ルゥが元気に跳ねる姿を見て、アヤノは小さく息を吐いた。
(……この子たちとなら、きっと行ける……)
不安よりも、魔物たちとの絆が力になるという確信が、少しずつ胸を満たしていく。
模擬戦の開始を告げる合図とともに、課題の詳細が示された。森を模した訓練場に魔物の制御や障害突破など、さまざまな試練が待っている。課題は単純ではなく、失敗すれば評価は下がり、最悪の場合は脱落となる。新人たちは慎重に歩を進める中、アヤノは静かに魔物たちを見渡した。
「ルゥ、まず足場を確認して」
「わかった、任せて」
「コハク、障害の状況はどう?」
「キュイ!」短く応える。
アヤノは最小限の指示だけで、魔物たちの意思を導き、次々と課題をクリアしていく。すると途中で、見慣れない青年――明るい茶髪に少し派手なマントを羽織ったお調子者風の冒険者――が現れ、同じ課題に挑むことになった。
「やあ、君もこの模擬戦に参加か? 名前は……おっと、自己紹介はあとでいいか。さあ、さっさと行こう!」
初めて会う人物にしては、軽いノリで話しかけてくる。声の端には余裕とおちゃめな雰囲気が漂う。
アヤノは一瞬ためらったが、魔物たちと自分の力を信じてうなずく。
(……これなら、彼とも協力できる……)
アヤノ、カイル、そして魔物たちは息を合わせ、障害を突破し、敵役の配置を巧みに交わしていく。意思疎通は最小限でも、連携は驚くほど滑らかだ。周囲の新人たちはぎこちなさが目立ち、進行速度は遅い。しかしアヤノたちは、まるで森や魔物の声まで読み取るかのように動く。
観戦していた冒険者たちの表情が変わり始める。嘲笑は消え、驚きと称賛が混ざる。
「……あのテイマー、普通じゃない」
「命令すら聞かないはずの魔物を、意思で動かしている」
訓練場を駆け抜けるアヤノ、魔物、そしてカイルの姿は、まさに新人とは思えない連携を見せていた。課題の最後まで、冷静に、しかし正確に魔物たちの能力を最大限に引き出す。
すべての課題を最速でクリアした瞬間、場内に驚きの声と拍手が巻き起こった。新人たちの中でも、アヤノの存在は一気に特別視されることになった。
アヤノは深く息を吸い込み、魔物たちに目を向ける。二匹の背中に、いつも以上の信頼と誇らしさを感じる。カイルもにこやかに笑みを返し、軽く頭を下げた。
(……これが、私の力……魔物と私、そして仲間と一緒だからこそできること……)
鐘の音のように響く観戦終了の合図が、森のような訓練場に静けさをもたらす。だが、アヤノの胸はざわめいていた。これから始まるのは、模擬戦本番。さまざまな新人冒険者たちとの戦い、そしてさらなる試練の連続である。
「さあ、これから本当の模擬戦が始まる……」
小さなテイマーの一歩が、この世界での運命を揺らす、最初の大きな挑戦の幕開けだった。




