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この世界では最弱職とされている『モンスターテイマー』ですが私のせいでその評価が覆りそうです!  作者: おおこがねい いぶきん
第二章 新人模擬戦偏 ーーーー前代未聞のテイマー、戦場に立つ

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第11話 本戦3回戦前:揺れる決断と影の計画

本戦二回戦を圧倒的な連携で勝ち抜いたアヤノたちは、控室の一角で休憩を取っていた。観客席からの歓声はまだ遠くに響いている。


「ふぅ……二人とも、本当にすごかったよ」


アヤノはコハクとルゥの頭を撫でる。二匹は誇らしげに胸を張った。


《アヤノの判断がすごかったよ!》

《うん、あれなら誰にも負けないと思う!》


嬉しさが胸に満ち、アヤノは自然と笑みをこぼす。だが――


…その瞬間、頭の奥が「ギチッ」とわずかに軋んだ。


(……え?)


ほんの一瞬の痛み。すぐに消えたが、違和感だけは微かに残った。


「大丈夫か?」

横でカイルが心配そうに覗き込む。

「う、うん。ちょっと疲れたのかも」


そう返しながらも、アヤノの胸には小さな不安が芽生えていた。

加護を発現してから、戦闘中はずっと意識が研ぎ澄まされていた。二匹との感覚共有は心地よかったが……あれほど深く繋がるのは、初めての経験だった。


(……私、もしかして無理してたのかな)


アヤノは顔を洗いに外に出て、再び控室に戻る途中でギルド受付の女性と鉢合わせた。


「アヤノさん! あなたが助けてくれたウルフ、覚えていますか?」


「あの時の……! 無事なんですか?」


受付の女性が腕に抱えていたのは、かつて森で瀕死だった灰色のウルフ。

その体にはまだ包帯が巻かれ、歩くのもやっとの様子だ。


「さっき意識を取り戻して……あなたを探してたんです」


「キュ……ルゥ……」

弱々しく鳴き、アヤノの足元に体を預ける。


アヤノの胸がじんと熱くなる。


「よかった……本当によかった……」


《アヤノ、ウルフ、まだ弱ってる……》

《無理はさせないほうがいいよ?》


二匹の声が心に響く。


受付の女性が、そっとアヤノに問いかけた。


「次の戦闘……どうされますか?

この子はあなたに懐いていますが、戦わせるにはまだ早いかもしれません」


アヤノの心に迷いが生まれた。


(もし一緒に戦えば……きっと力になってくれる)

(でも、無理をさせたら……)


「……少し、考えさせてください」


アヤノはそっとウルフの頭を撫でた。

ウルフは「アヤノ……」と呼ぶように弱い声を出す。


胸が締め付けられた。


◇◆◇


休憩室に戻ると、カイルが驚いた顔で言った。


「ウルフ……お前、あの子助けてたのか」


「はい。でも、戦える状態じゃなくて……」


「……そりゃ迷うよな」


カイルは静かに頷く。

そんな彼の表情を見た瞬間――


……ギチッ。


また、アヤノの頭の奥で何かが軋んだ。


(まただ……)


すぐに消えた痛み。

それでも嫌な予感が胸に残る。


《アヤノ、無理しないで……》

《ぼくたちがいるよ》


「ありがとう……」


アヤノは二匹に微笑むが、その指先はかすかに震えていた。


◇◆◇


控室の窓が、遠くの森を映す。

ふと視界の端に、黒い煙が細く上がるのが見えた。


(……火事?)


その瞬間、教官が控室へ戻ってくる。

しかし、その顔は厳しく沈んでいた。


「……今日、森で野生魔物の“異常暴走”が複数確認された」


「え……?」


教官が険しい声で続ける。


「魔力が不自然に“吸い取られた跡”がある。

魔物の暴走というより……誰かが意図的に魔力を奪ったとしか思えん」


アヤノの背筋がぞくりと冷たくなった。


(魔力……を奪う?)


教官はさらに小声でつけ加えた。


「……王都の裏で、“巨大魔物兵器”の研究が進んでいるという噂もある。

まだ真偽は不明だが……野生の魔物が犠牲になっている可能性がある」


胸がざわつく。

ウルフが瀕死だった理由……

あの異常な衰弱――


(……まさか)


コハクもルゥも、アヤノの不安に反応するように体を寄せた。


《アヤノ、ウルフは……巻き込まれただけ》

《たぶん悪い人が魔力を奪ったんだよ……》


「……そんなの、許せない」


小さく漏れた声は震えていた。


◇◆◇


試合開始の鐘まで、あと少し。


アヤノは深呼吸し、ウルフの頭にそっと手を置いた。


「……ウルフ。あなたの想いは、ちゃんと受け取ったよ。

でも……今は休んで。無理はさせられない」


ウルフは寂しげに目を伏せるが、やがて弱く尾を振った。


「ありがとう……必ず、全部守るから」


コハクとルゥが、アヤノの左右に並んだ。


《いこう、アヤノ》

《次の相手だって、怖くないよ!》


アヤノは前を向く。


胸に不安も、怒りも、使命感も――いくつもの感情を抱えたまま。


「……うん。行こう。絶対に負けない」


こうして、揺れる心を抱えたまま、アヤノは次の舞台へと歩みを進めた。


その背後で、控室の窓から見える黒煙は……

静かに、 不吉に、空へ立ち昇っていた。

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