第十一話「仲間」
カイゼルの合図から戦闘が再開した、俺たちは各方向に散らばりドラゴンを囲い背後を誰かが狙える体制をとった、今ドラゴンの正面にいる組み合わせはカイゼルとリアン、右側はファーフとニナ、左側は俺とゼフィラスだ、そして後にいるのがルシウスだ。
「お前の相手はこっちだ!」
カイゼルがそう叫び、ドラゴンを引きつけた、更にリアンが魔術を使って正面から攻撃をしているがやはり効果は無さそうだ、するとファーフとゼフィラスが左右から魔術を同時に放った、ドラゴンは各方向から攻撃をした、攻撃を受けて多少は怯んだが体制を立て直すと、急に上空へ飛び出し空からブレスを放ってきた。
「まじかよ…」
カイゼルは上空へ行く事を、予想してなかったらしく焦っていた、するとゼフィラスが水魔術でブレスを押し止めてくれた、しかし余り長時間は持ちそうではなかった。
「ゼフィラス感謝します!今のうちに皆さん離れて下さい」
そうルシウスが指示をして、ブレスを避けることが出来た、今の行動を見てもしかしたらと思い皆に指示をした。
「ゼフィラス助かった、やれるかは分かんないがファーフ!ゼフィラスにリアン魔術であいつを、撃ち落とせるか?」
するとファーフが、こっちを見て無言で渋々頷いた、まぁいきなり無理な事を言われても、難しいと思うがそれでも頷いてくれたことが嬉しい、ゼフィラスは相変わらず無言だかやってくれるそうだ、対するリアンは自信なさげにしてた。
「ありがとうファーフ、ゼフィラス!リアンも無理せず出来る限りで頑張ってくれ!」
各自魔術を打つ体制に入り、そして俺も詠唱を初めた。
「紅蓮の炎よ、この一点に力を集めよ!灼熱の矢を放ち、敵を焼き尽くせ!ファイヤーアロー!」
「大地よ、我に力を貸し、岩よ、敵を砕け!大地の怒りを解き放て!ロックスラッシュ!」
「天の息吹よ、そよ風となりて!道を切り開け!クリアウィンド!」
俺とファーフ、リアンそしてゼフィラスも詠唱は聞こえなかったが、殆んど同時に魔術を放った、魔術を放つ時にゼフィラスは背後に入って放ったため、前後左右各方向から放つことが出来た、正面から放ったリアンの攻撃はやはり聞いてないみたいで、俺とファーフの攻撃は多少は効いてるみたいだが決定打では無い、しかしゼフィラスの岩魔術は右の翼に当たったらしく、ドラゴンがバランスを崩し降下して来た、すると地上に着くタイミングでルシウスが剣を構えて走り出した。
「カイゼル!落下するタイミングを狙って足を攻撃して下さい!私は右を狙うので左側をお願いします!」
ルシウスが剣で足を切ろうとするも、攻撃が利いてないかのように無傷だった、カイゼルの方も駄目だった、しかし俺はそれに続きドラゴンの背後に走り出し、切れた尻尾のうしろを登り、首を切ろうとしたが振り切られてしまった、更にドラゴンは羽ばたきをし、さっき俺のいた方つまり今誰もいない方に飛んで行った、
「逃げたか?」
カイゼルがそう言うと、ドラゴンは飛んで行った方から反転し、こっちに向ってダイブして来た、俺は避けれない事を悟った、その瞬間ファーフとユナ、リアンが俺を守るように前に出て来た、ユナは盾を構えファーフとリアンは魔術を放っていた、しかし攻撃は効かなくそのまま突っ込んで来た、「やっぱり無理か」そう思っていると、目の前で急に大きな竜巻が起き、何かが中に舞っていった、更に上から大きな岩が降ってきてドラゴンの動きを止めた、そして追い討ちに氷柱みたいなものが命中しドラゴンを凍らせた、一瞬の事で何が起こったのか分からないでいると、ゼフィラスがドラゴンの方に歩いて行き、最後に炎魔術を放ち凍ったドラゴンを炭一つ残さず消してしまった。
「…」
皆一瞬の出来事で何が起こったか分からずに、沈黙の時間が続いた、するとルシウスがゼフィラスに近づいて行き
「助かりました!リアンとユナ、そしてレムスさんやファーフさんを助けてくれてありがとう!」
するとゼフィラスは、どうしたら良いのかと戸惑っていた、俺も助けてもらった、今までの行動は良く分からなかったが、助けてもらったのは事実だ、だから礼は言わないといけない、いけないとかではなくただ本当に感謝の気持ちしかない
「ゼフィラス!本当にありがとう、お前がいなかったら俺は死んでいた、それに俺を守ろうとしてくれた、ファーフ達も巻き沿いで死んで居たかもしれない、感謝してもしきれないと思う、本当にありがとう!」
俺に続きファーフ達もゼフィラスの所に行き、お礼を言っていた、等のゼフィラスはやっぱり戸惑っていた、なんだか俺はあいつの事を勘違いしていたのか、そう思った、するとカイゼルがゼフィラスに礼を言ったあと、魔石を探しに行った、そういえばそうだったなと思い、俺もそちらに向かったが遅かったようだ、魔石を持ってカイゼルがこっちに歩いて来た。
「おいリアン!こいつに魔術を流し込んでくれないか!」
「っ!」
ユナがそれを見て何か言いたそうだっが、ぐっと堪えた、リアンはと言うとそれを見て、遠くの俺から見ても分かるくらいショックを受けた顔をしていた、
「どうした、魔術を流し込んでくれるだけで良いんだぜ?」
「…」
リアンはその場で黙り座り込んでしまった、その場を見ていられないと思い、俺はカイゼルの方に近づいていった
「嫌がってるぞ、それに今は戦いの後だ、別に今じゃなくたって良いだろ!」
俺がカイゼルにそう言うと、カイゼルは一瞬周りの状況をみたが
「今はパーティ内の話だ!悪いが引っ込んでくれ」
「いや…でも嫌がってるんだぞ、そんな事無理矢理やらせるような事じゃないだろ!」
「だから引っ込んでろって言ってるだろ!あんまりしつこいと殺すぞ!」
そう言い、カイゼルは腰から剣を抜こうとした、対して俺も腰にある剣に手を掛けた、そして俺はカイゼルに対して
「分かった、じゃあ俺が勝てばそいつは俺がもらっても良いか?」
「やれるもんなら、やってみろよ!俺の方が強いって証明してやるよ、さっきだって結局ドラゴンを倒したのはゼフィラスだ!お前の攻撃だって効いてりゃいねぇ!」
「それはお互い様だろ!」
どんどん当初の状況から悪くなっている、俺がカイゼルに勝てる保証は無い、確かにこいつのいった通りドラゴンには俺は刃が立たなかった不意打ちで尻尾を切れただけだ、やっぱり俺はまだ強くなれてなかった、このままだとやはりあいつらにも勝てない…そう思いつつも攻撃をしようとすると、風魔術が飛んできた
「レムス君はやっぱりレムス君だね!」
俺は、風魔術の飛んできた方を見るとファーフがいた、そしてカイゼルが持っいたはずの魔石が飛んでユナのもとに行き、ユナがそれをすぐに拾った、するとカイゼルが怒りファーフの方に向って走っていった!
「急になにするんだ!危ないだろ!」
俺は咄嗟にそっちに走っていき、剣を受け止めた、因みにルシウス達はと言うと、何が起こったのか分かっていないのか、その場で俺達の事を見ていた、するとファーフがカイゼルに対して
「すいません、彼女達を解放するにはこれしか無かったんです」
そう言うとカイゼルは、唖然とした顔でユナ達の方を見た、するとユナがリアンを立ち上がらせ石を渡した、そしてカイゼルに向って
「この石が欲しかったら、私達をパーティから脱退させて下さい、この石と引き換えです」
「何言ってるんだ、お前らがここを抜けたら二人だけでどうやってくんだよ!お前らだけじゃあ何も出来ない、そのまま死んでくんだよ!」
「そんな事言わないで下さい、私達だけじゃまだ出来ないことだらけでも、ファーフさん達が一緒に冒険してくれるって言ってくれました、それに今はこんなでもいつか一人前の人間になれる様に頑張るんです!だらか…」
するとルシウスがこっちに歩いて来て、カイゼルに近づくとカイゼルの肩を軽く叩き
「もう大丈夫ですよ、彼女達を解放して上げて下さい」
カイゼルは、ルシウスの言ったことに対して頷き、ユナ達の方を見て
「そうか分かった…石はいらない、お前らの自由にしろ!」
カイゼルはそう言い、何処か悲しそうに見えた、俺たちはその場にいるには気まずい雰囲気で、再度ゼフィラスにお礼を言い、その場を立ち去って行った、ルシウスは俺達の方に向かい
「本日は、どうもありがとうございました、貴重な体験が出来ました、お元気で!」
そう言って見送ってくれた、俺達はそちらに会釈をして、冒険者ギルドに向って行った、冒険者ギルドまでの道中は、お互い何も話さず沈黙の時間が続いていった、そして冒険者ギルドに着くと、俺は受付の人に対して
「パーティ解散の手続きと、登録の手続きをお願いします」
「かしこまりました!では先に解散の手続きを行いますね!」
「お願いします」
それから受付の人の指示を聞き、色々手続きを行い、俺達はユナとリアンとパーティを組むことになった。