2巻 3章 4話
ジャングル自警団本部。
自警団リアルタイムログ。
「ギルドが違法業者をぶっ潰したって?」
「そうです。情報提供があって、向かってみると違法採掘場は爆発、逃げ出した違法業者の数十人と船も数隻取り押さえました。」
「どこのグループかわかるか?」
「それが元首長のグループだとか。」
「大物じゃないか!何か証拠はあったか?」
「ええ、今、運河に沈んだ重機をギルドに引き上げてもらっています。」
「よし、わかった。ギルドに礼を払って、協力を要請してくれ。」
⭐️
クラウン達は合流したジャングル自警団の要請を受けた。
「お疲れ様です。明日から運河の安全対策作業になるので、今日の所は船で自警団本部まで行きましょう。」
筋肉質な自警団員はクラウン達を船に案内した。
⭐️
ジャングル自警団クルーザー内。
「オレと虎徹さんが採掘場の出口あたりに着いたら、大爆発が起きて、戦うまでもなく違法業者達は逃げていった。大爆発の中、ナイトメアに乗ったクラウンが出て来た時はワイルドだったー。ははっ。」ブラストは嬉しそうにハニに話した。
「クラウンが出て来ないから、死んだかと思った。」ハニは眉を下げて言った。
「卵を取ったら、認証コード要求されて、そのまま自爆モードになってさー。慌ててチョコに案内させたら、出口側に走って行くから、ナイトメアで追いかけたんだ。」クラウンはワッペンをつついた。
コツコツ。
「どーしよ。爆発で飛んできた鉱石に当たってワッペン壊れちゃった。画面にヒビ入ってバキバキになってる。」クラウンはギルドスーツを再起動したが、反応がなく気を落とした。
「明日、修理出しに行こう。オレも汚染保護のボディワックス買いに行かねーと。」
「そんなのあるの?」クラウンはスノーを見た。
「さっき自警団の人が教えてくれたんだ。ヤシの葉から取れるらしい。明日からやる事、山ほどあるぞ。シシッ。ハニはしっかり休んどけ。」
ハニはうなずいた。
「大変だが、大昔、アースでも川の汚染を経験し乗り越えた。また魚が食える様に、運河の安全の役に立てるなら、拙者は嬉しい。」
みな、うなずいた。クラウンは黄色に輝くゴールデンベビーに手を置き微笑んだ。
「ギルドに卵を持って行くから、明日みんなで行こうよ。」
ジャングル自警団のゲスト用のログハウスに到着した。早朝から走り回ったので、夕飯を食べ終えると、みな早々に眠りについた。
⭐️
翌朝、クラウンは聞いた事のない鳴き声で目が覚めた。
キエー。キエー。
ポ、ポ、ポ、ポ。
きゃうきゃう。
早朝のジャングルは賑やかだ。
クラウン達は支度をすませ、自警団本部があるログハウスに向かった。
ログハウス前には数台の車が到着し、自警団員が、ぞろぞろ出てきた。みな筋肉質で強そうだ。
「あ!ラファエルさんと一緒に写ってた人だ!」ハニは挨拶した。
「やあ、団長のミゲルだ。ラフの知り合いか?皆、若いな。」ブラウンの肌、ドレッドヘアー、髭をたくわえ、筋肉質な体にバンドTシャツ、腰にナタを下げたミゲルは団長の風格がある。
ブラストとスノーはそのバンドが好きだと挨拶していた。
作戦を立てるテントに自警団と集まり、中央の机にはジオラマの様なマップがあった。ミゲルが安全対策を伝えた。
「昨日、居た場所から川を3本以上超えるな。別の違法業者の縄張りになってる。奴らの暗黙のルールだ。」
「違法業者はそんなにたくさんいるんですか?」クラウンはミゲルに聞いた。
「そうだな。2000はいるんじゃないか?ちゃんとした数字は不明だ。」
「えっ。全部対処してたら2年以上かかりそう。」クラウンはぼやいた。
「実際はもっとだろう。汚染に資源の略奪、イタチごっこに武力抗争、先住民問題もある。北にある先住民のエリアは汚染はないが、外との交流を望んでいない。近づくだけで攻撃されるからな。」
ミゲルは話しながらディスプレイを出した。
「まずは漁師達から魚介類の買い上げ、仕切り網の設置、それに協力してもらえる漁師には給料の補償。ギルドの皆は用事が済み次第、釣り人に禁止の呼びかけと釣り禁止の看板の設置。であってるか?アースの民よ。」ミゲルは虎徹を見た。
「はい。昨日の要請に応え、この国とアースとギルドの3協力で数日中に機材が到着します。汚染物質の除去の為の排水処理装置の設置、ヘドロ回収の掘削機、安全確認後の新しい稚魚の購入など順次行うと知らせが来ています。」虎徹はディスプレイを確認した。
「よし、わかった。新しい首長になり、国家事業として協力する事は我々の念願だった。しかし、このエリアだけ改善されても、大きな運河の改善にはならない。この機にギルドの皆と我々とで違法業者への対応を続けよう。では船でステーションまで送るから出発しよう。ラフも呼び出してある。」
クラウン達はラファエルに会えると聞いて喜んだ。
⭐️
大きな運河にでると、ミゲルは運河の状況を説明してくれた。「あの川の先には、先住民のロングハウスがある。先住民も追いやられ、町に住んでいる者も多い。しかし、協力してくれる戦士もまだたくさんいる。」
長年、運河の汚染や増え続ける違法業者と戦っていた様だ。
しばらくして沿岸沿いのレイブン・ステーションについた。
船着場のロビーでラファエルはコーヒーを飲んで待っていた。
「ラフ!待たせたな。」ミゲルが声をかけた。
「オイ!ミゲル、連絡ありがとう!君達!やってくれたな〜。」ラファエルは小走りで両手を広げ、クラウンとブラストにハグした。
昨日の出来事をお互いに話し、健闘を讃えあった。みなでアルトゥールが運ばれた病院にお見舞いに向かった。
病室に入ると生き残った3人は点滴を打たれ眠っていた。アルトゥールは気配に気づき、弱々しく手を上げた。
ラファエル、アルトゥール、ミゲルは幼馴染だった。
「少しずつで良いから、話し聞かせてくれ。アルだけが喋れる状態らしい。さすがアスリートだな。」ラファエルはベッドの横に椅子を寄せた。
「ラフ、もう1人はどうなった?」
「亡くなってたよ。悔しいよな。」
「ああ、助かったら、サッカーしようって、、励ましあって、たんだ。」アルトゥールは喉を詰まらせながら話した。
みな静かにアルトゥールの話しを聞いた。
「あの日、エステ店に客として行った。眠って目が覚めたら、脂肪や幹細胞なんかを取られて培養され、ゴールデンベビーを作る材料として囚われた。」30分程で話し疲れた様子のアルトゥールを気遣い、ラファエルは「また明日来る。チャオ。」と言い、みな退室した。
ラファエルは昨日撮った写真をギルドにも共有し、クラウン達も昨日のログの情報提供をした。それを元にラファエルは囚われた人達の家族にも話を聞きに取材に出かけた。
ミゲルは環境大臣に会いに行き、クラウン達はレイブン・ステーション内にあるギルドまで、チョコに案内を頼んだ。
⭐️
淡いブルー、グリーン、ベージュの建物が並び、窓や入り口は白いフレームで統一され、美しい街並みだ。
赤茶色の建物の前でチョコの案内は終わった。ギルドの中に入ると壁に沿って植物が並び、カウンターやポッドの横にも大きな観葉植物が置かれている。
クラウンは受付カウンターにゴールデンベビーの卵と壊れたギルドスーツを修理に出した。
みなポッドに入り、ラファエルからの依頼、情報収集の報酬5クレジットと違法採掘業者撃破の報酬はギルドからの最低保証の500クレジットを受け取った。みな1つずつレベルアップした。
クラウン、レベル26
ブラスト、レベル31
スノー、レベル20
ハニ、レベル38
虎徹、レベル8
になった。
スノーはレベル20に達し、スリープスタンプ機能をカスタマイズし、汚染保護ワックスも購入した。
「クラウン様いらっしゃいますか?」褐色の美女が探している。
「はい。あは。僕です。」クラウンは照れた。
「形式上、ゴールデンベビーの所有権がクラウン様になっております。どこのスターベビー社に送りますか?」
ディスプレイには送り先が表示された。
プロキシマ・ケンタウリC
プロキシマ・ケンタウリD
アース
マーズ
スターベビー社、宇宙ステーション
「ちょっ、ちょっとみんなに相談させて下さい。」クラウンはみなに意見を聞いた。
「宇宙ステーションが無難じゃね?」と、ブラスト。
「オレもそう思う。最新の宇宙船付きだしな。シシッ!」スノーも横でうなずいた。
「私だったらアースだと嬉しいな。」ハニはアース推しだ。
「拙者も。和を以て貴しと為す。(わをもってとうとしとなす)」虎徹は腕組みした。
「僕ならゲームに有利だからプロキシマ・ケンタウリDだったら嬉しいけど、僕じゃないし。うーん、どーしよ。」クラウンは悩んだ。
「ゲームに有利って何?」ハニはクラウンに聞いた。
「人より、動物の方が多い星だから、レアな生き物も多いし、ログにおさめるとポイントがもらえるんだー。」
「へー。」クラウンのレア生物達の収集癖の理由がわかり、みな納得した。
「お話し中すみません。こういった機会が少ないので、参考にお聞かせ下さい。この星とマーズはどうして候補にあがらないのですか?」褐色の美女がたずねた。
「だって、ここの報酬は安すぎるし、政治も環境も汚れてるし、生きるの大変そうだから。マーズは紛争多いし殺風景でつまんないよ。」クラウンは思ったままに答えた。
「率直なご意見ありがとうございます。確かにギルドの来訪者も本当に久しぶりで、この星は人気がないですね。送り先はいかがいたしましょう?」
みな、クラウンを見た。
⭐️
続く。
絵:クサビ