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トレモロ 2  作者: 安之丞
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2巻 2章 6話

フェスティバルの一つ「ベリー摘み」のベリー畑にクラウンとブラストはふらっと来た。参加者はバスケットを持って様々な種類のベリーを、食べたり摘んでいる。


ベリー畑のスタッフ「オーライ、オーライ。OK!」


ベリー畑の先でハニはタクシスを使って構えていた。ベリーを集めた巨大シートを巾着の様に持ち上げ、収穫プールに勢いよくベリーを流し入れた。ハニはゆっくりシートを下ろした。


「あー。もう重機じゃん。」ブラストは作業を終えたハニに声をかけた。


「やっぱハニらしい。あはは。」クラウンは笑った。


「ちがうー。最初は手で摘んでたの。ログみて。」


クラウンはディスプレイを出した。


バスケットを持ってベリーを摘むハニは可愛い感じだ。しかし、実際は大きなシートを操り、収穫プールに大量のベリーを流し入れ、たくましかった。


クラウンはディスプレイを閉じて、ふふん、と笑った。


「ギルドだからお願いされちゃって。そーゆー時に限って見られちゃうから。」ハニは照れ笑いした。


ベリー畑のスタッフはお礼を言い、収穫の手伝いにまた来て欲しいとハニを誘った。ハニは滞在中、手伝う事にした。ハニが手で摘んだ分だけベリーを持ち帰った。



ブラストはベリーをひとつ摘んで食べた。

「さっきスノーから虎徹さんとケンタウルスカップにエントリーしたってメッセージ来てたよ。一緒に応援行こうよ。」


「みたみた。応援に行こう!虎徹さんはチョコとでるの?」ハニはクラウンに聞いた。


「うん。チョコと虎徹さんはレースに出たかったから、ちょうどいいんだよ。僕は応援する方が良い。楽しみー。」クラウンもベリーを頬張った。


⭐️


3人は「ケンタウルスカップ」の会場に着いた。


大きなビジョンにエントリーが終わった参加者達が映し出されている。

スノーとゴーストペア、虎徹とチョコペアもビジョンに出てきて、クラウン達はテンションが上がった。


アナウンサー「皆さん!自転車と動物のペアで、スピードを競います!両者のタイムを合わせた最速のペアはどのペアなのか?目が離せません!」


ケンタウルスカップのルール説明が会場にながれ、DJの音楽で会場は盛り上がっている。


「今回から近隣の惑星でもパブリックビューイングが設置され観戦が可能になりました!」アナウンスや流行りの音楽に会場が湧いた。


歓声の中、ゴールに近い応援エリアに向かった。山を少し下りた森の中にコースがあった。波打つ様なアップダウンに大きなカーブスロープ、ジャンプ台などアグレッシブなコースだ。


⭐️


クラウンはスタートに胸が高鳴った。

アナウンサー「最初の挑戦者はスノー、ゴーストペア!」

スタートラインでスノーは手を振り自転車のペダルに足を乗せた。ゴーストのシッポが止まった。


パ、パ、パフォー!シグナルがなりスタートした。


ゴーストがシッポを振り回しながら駆け出し、スノーが後からピッタリ自転車でついて行く。


山道のカーブをゴーストは力強く地面を蹴り、舌を出して猛スピードで駆けて行く。スノーはハンドルを横に倒しカーブを曲がり、立ち上がり必死に漕いで行く。


波々の道でスノーはジャンプを連続できめ、ゴーストは身を低くして波を超え、両足をしっかり前に蹴って、スピードが伸びて行く。


ギャラリーの歓声が上がった。クラウン達もジャンプして応援した。


大きなスロープカーブに差し掛かり、ゴーストは全力で駆け、スノーは砂飛沫を上げドリフトで降りて行く。


ジャンプ台の下からゴーストは駆け上がり、下りで大ジャンプしてゴール!スノーはジャンプ台の上から自転車で大きく横回転でジャンプして坂道に着地、そのまま駆け抜けゴールした!


クラウン達の目の前で大きなジャンプをしたスノーとゴースト、大歓声が上がった。

アナウンサー「結果はー、2位ー!オメデトー!」


スノーはクラウン達に気づいてハイタッチした。ゴーストはみなに撫でられまくった。


「すごいよ!スノー!」クラウンはスノーとハグした。

「シシッ、シシッ!ヤベー。」スノーも興奮している。

ゴーストもテンションが上がってブラストに飛びつき、ブラストは抱っこしたままクルクル回った。ハニも大喜びした。


チャレンジャーが続々とスタートしたが、結果はスノー2位のまま。


クラウンはスタートに再び胸が高鳴った。

アナウンサー「最後の挑戦者は虎徹、チョコペア!」

スタートラインで虎徹は手を合わせ合掌して自転車のペダルに足を乗せた。チョコはゆらゆら低くシッポを揺らしている。


パ、パ、パフォー!シグナルがなりスタートした。


虎徹が自転車を揺らしながら駆け出し、チョコは追いかけて行く。


山道のカーブを虎徹は乗りこなし、ぐんぐんカーブを進む。チョコはインコースからインコースに飛び跳ねて行く。


波々の道を虎徹は高く飛び越え、大ジャンプを2回で走り切った。チョコは体を一直線に伸ばし、地面すれすれをぴょーんと飛び越えて行く。耳もぴろーんと飛ぶたびになびいた。


ギャラリーの歓声と拍手が上がり、クラウン達も拍手して応援した。


大きなスロープカーブに差し掛かり、チョコは全身で滑り降りる様に駆け抜け、虎徹は膝が地面に着きそうになる程、自転車を横に倒して駆け抜けた。


ジャンプ台の上から勢いよく飛び出し、虎徹はハンドルをくの字に曲げてジャンプをきめ、縦一回転して着地した。チョコもジャンプ台の上から、飛び出しくるくると3回転して着地、そのまま駆け抜けゴールした!


クラウン達の目の前で大きなジャンプとトリックをした虎徹とチョコに大歓声が上がった。

アナウンサー「結果はー、1位ー!オメデトー!ニューレコード!」


大歓声がまた上がり、表彰台で虎徹とチョコはメダルを受け取った。


アナウンサー「ビジョンには10位までの挑戦者達が映し出されています。フェスティバルの期間中は何度でもエントリーできます!また次回のレースでニューレコードがでるのでしょうかー!お楽しみにー!」


⭐️


虎徹とチョコも合流して、みなハグをして優勝を祝った。隣の広場では音楽ライブが始まり、みな夜通し踊って騒いだ。


⭐️


久しぶりにクリスタルドームのコテージに帰りついた。みな泥の様に眠った。


どれくらい眠ったのだろう。チョコに頬を舐められてクラウンは起きた。部屋には誰もいなかった。クラウンはぼーっと珊瑚を観察してゴロゴロ、チョコと気ままに過ごした。


フェスティバルは参加するだけでクエストが完了するので、クラウンはベリー摘みをしたり、アイスクリームのフレーバースタンプラリー、ペットラン、音楽ライブ、射的、レア生物のログなど気ままに過ごした。


数日経ち、目覚めると自然とハニとベリー摘みに行った。手で積んでいると、いつのまにかハニはベリー農家に呼ばれ、収穫を手伝った。


クラウンは気ままに音楽ライブでブラストを探して、アイスクリームを食べ歩いた。その後は1人で湖で観察を続けたり泳いで過ごした。「珊瑚の変化なし。」


2週間が経った頃。


ベリー摘みに行く時、ハニがクラウンに聞いた。「最近みんなに会った?」


「え?そーいえばブラストとも3日は会ってないよーな。音楽ライブにずっといるみたい。ハニは?」


「私、虎徹さんとは2週間近く顔合わせてない気がする。」


「え?ライブ以来?」


「たぶん。」


「・・・。」


「後でみんなの所に行ってみよ。」


クラウンはハニと日課になったベリー摘みをした。ベリー農家に頼まれた収穫も全て終わった。ハニは個別で受けたベリー収穫のクエストにサインをもらった。


ハニはベリーを一口食べ、うっとりした顔でディスプレイを出した。

「ブラストはどこにいるかな?」


「僕たぶんわかる。ついて来て。」クラウンはアイスクリームのフレーバースタンプラリーの台紙を見ながら歩きだした。


アイスクリームの行列が見えてきた。

「いないね?」ハニは列を見渡した。


「あ!」クラウンが行列の後ろのベンチを指差した。


ベンチで紙袋を頭から被って寝ている青く光るギルドスーツの男が見えた。


ハニは笑って「ウケるー。」ログに撮った。


クラウンはブラストの紙袋を取り、ほっぺをぺちぺちして起こした。「ブラスト、起きて。」


「うーん。あ、おはよー。」ブラストはくらくらした表情で起きた。クラウンはブラストをゆっくり起こし一緒に歩いて森に向かった。


ケンタウルスカップの会場に着くと、チョコがすごいスピードで走って来て、クラウンに飛びついた。ドスッ!「うっ!」クラウンはチョコがパワーアップした様に感じた。


ゴーストも姿を見せ、こっち!と誘う様にコースを下り、ジャンプ台の前でたむろっているスノーと虎徹の前に走って行った。


「あ、いたいた。」クラウンが走り寄った。

「スノー、虎徹さーん!」ハニも手を振ってついて行く。ブラストは寝不足でふらふらの足取りで2人の後を歩く。


クラウンがスノーと虎徹の顔を見るや笑いだした。「ははっ。ちょっとー2人ともげっそりしてるよー。」


スノーと虎徹はケンタウルスカップにハマり過ぎてげっそりしていた。「大丈夫?顔色が悪いよ。」ハニは2人を心配した。


スノーが小声で言った。「ニューレコード出しても虎徹ともう1人のやつが塗り替えるんだよ。」


「侍は決して諦めない。」虎徹はガサガサの声で言い、乱れた髪をかき上げ遠くを見た。


「もう〜ぼろぼろだよ。一回帰ろ。」クラウンがみなを連れてコテージに帰った。


挿絵(By みてみん)


⭐️


クリスタルドームを夜モードにして部屋を暗くした。モニターの珊瑚のピンク色が部屋を優しく照らす。


みな、順にシャワーを浴びたり、しっかりご飯を食べて、観察モニターの前に集まった。クラウンはモニターの前に立ってみなに話し出した。


「みんな寝る前にいい?自由にしすぎると死ぬよ?」


「究極の自由を満喫って言われると何やってもいいーとか思っちゃってさー。」シャワーでシャキッとしたブラストがごにょごにょ言う。


「みんなやりたい様にやれたよね。」ハニはベリーをつまんで食べた。


「ハニ、ずっと唇や舌がベリー色だよ。」


ハニはすぐディスプレイをミラーにして確認した。ベリー色に染まった舌を出して笑った。


「クラウン殿、死なない様に自由を説いてくだされ。」虎徹が懇願した。


「僕が?えっと、スノーのお気に入りの名言集から検索するね。」


「なんで知ってんだよ。シシッ。」

スノーは犬達とゴロンと横になった。


「いい?じゃ、新渡戸稲造の名言ね。『やろうとする意志の深さよりも、意志の方向を自分に問え』とか、福沢諭吉は『社会共存の道は、人々自ら権利をまもり幸福を求むると同時に、他人の権利幸福を尊重し、いやしくもこれを侵すことなく、もって自他の独立自尊を傷つけざるにあり。』とか?」


読み上げたクラウンはみなの顔をちらっと見た。みな、ぽーっとして頬がピンク色に染まり、クラウンを見ている。


挿絵(By みてみん)


クラウンが照れ笑いすると、スノーが後ろを指差した。「クラウン、後ろ。珊瑚。」


「!」クラウンが振り返ると、珊瑚の産卵が始まり、モニター一面に珊瑚の卵が浮き上がり、部屋を美しいピンクに染めた。クラウンも見惚れた。


スノーと犬達、ブラスト、虎徹はぼーっと眺めながら1時間後には眠りに落ちた。


クラウンはハニとレポートを作り、ログに残し、クエストを完了させた。


「光を浴び続ける事で作物は栄養豊富に育ち、川と海の共存による様々なレア生物、古代の珊瑚の産卵など、白夜は豊かな海を作っている。」


レポートの最後をハニと話し合ってそう締めくくった。


⭐️


3章に続く。

絵:クサビ

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