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トレモロ 2  作者: 安之丞
16/27

2巻 2章 4話

ジュピターラビリンス。


5人はワッペンを合わせた。

クラウンはディスプレイを出し、クエスト情報を見て、チョコに言った。「チョコ、イカロスを使って。今回は骨拾わなくていーからね。ギルドのスカーレットを探すよ。」

チョコは尻尾を振った。


以前通った罠を踏まない様に、警戒しながら進んだ。


「ここにも罠があるからね。唐草模様のタイルは踏んじゃダメだよ。」クラウンは、ハニと虎徹に嬉しそうに罠の位置を教えた。前回訪れた制御室にたどり着き、働いてる工員達に挨拶した。


制御室を出て、テラスから下に降りる階段が長く続いている。未知のエリアだ。


階段下を覗くと、廊下をうろつく工員のヘルメットを被ったアンデッド、カスク・エイジが2体いた。2体が骨を鳴らして歩き、互いに近づくとクラウンは斜め下に手をかざして構えた。「ロージー!」ドカーン!カラカラカラ。骨は吹き飛び、散らばって落ちた。


「ストライクー。」ハニは言いながら安全になった長い階段を跳ねる様に降りて行った。


いくつか道が分岐していたので、マップを見ながらみなで話し合った。

先に進むと、石の扉が閉まっている。

入り口の両側に唐草模様のタイルの仕掛けを見つけた。罠の柱はなく、周りを見渡してクラウンとスノーが入り口の両側に立った。

ブラストが真ん中に立ち構えた。スノーとクラウンがタイミングを合わせて唐草模様のタイルを踏むと、石の扉はゆっくり沈んで薄明かりの部屋があった。


部屋の暗がりから古代の宙族のアンデッド、アネホ・エイジが片手斧を構えて2体向かってきた。

「ショックウェーブ。」バン!カラカラカラ!ブラストは吹き飛ばした。


部屋の半分は深さ10cm、直径2m程の浅いプールになっていて、壁に松明がある。吹き飛んだ頭蓋骨が浅く掘り下げたプールに落ちた。ボチャ。


波紋の表面が虹色に見えたクラウンは言った。「みんな、ちょっと壁際まで下がって。」クラウンは壁に掛かっていた松明を引き抜いてプールに投げ入れた。


火が付き、あっという間に燃え尽きた。クラウンは空になったプール底の鎖を引いた。壁の一部が開き、先に進めそうだ。


「クラウン殿の頭の柔らかさは流石です!」虎徹が感心した。

「この部屋にだけ松明があるから、そうかなーと思って。」クラウンは照れた。

ハニは足元に転がった片手斧を2本拾って、腰の両側に差した。


扉の先の道は暗くなっているので、スノーがゴーストと先行して様子を見に行った。


クラウン達はスノーの合図を待って、ゆっくり続いた。大きな岩の柱の影で、スノーが静かに!のサインをしてしゃがんでいる。


「クラウン、そこの空の酒瓶取ってくれ。」スノーは手を伸ばした。なぜか嬉しそうだ。

クラウンは空の酒瓶をスノーに渡した。

「みてて。シシッ!」スノーはいたずらっぽい顔をして空の酒瓶を柱の前の台座に置いて、さっと隠れた。


カチャカチャ、歩く音が近づいてくる。カスク・エイジが柱の前まで来た。みな呼吸を静かに身を潜めた。カスク・エイジが台座の空の酒瓶を持ち上げると上から2m程の槍が出てきた。ザス!ザス!カラカラカラ。カスク・エイジをバラバラにした。

「おー!」パチパチ。クラウンと虎徹は小さく拍手した。


「僕もやりたい!チョコ、空瓶取ってきて。」クラウンもカスク・エイジを罠にはめた。「次は拙者も。」虎徹も罠をかけて、エリアは安全になった。「上手く行きましたな。」みなクスクスしながら次の作業室のエリアに進んだ。


⭐️


作業室は大きな体育館の様な大広間になっている。長方形の部屋の奥の扉は遠くてはっきり見えない。2階建ての回廊はアンデッド達がたくさんうろつき、向こう側のバルコニーには弓を持ったアネホ・エイジ、下の通路にはカスク・エイジも見える。


2階の通路から下を覗き込んだハニが、フロアの様子を見ながら言った。「床の周りがスプリングで、ぐるーって囲まれてない?フロアはマット素材になってない?」


スノーも下のフロアを覗き、目で導線を辿った。「トランポリンみたいだな。あそこの部屋の角に振動で骨が集まっていくな。散らばって下に落ちた骨は回収されてたんだな。」


トランポリンと聞いてハニの目が輝いた。「私にやらせて。私は下から、みんな2階を真っ直ぐ進んで、奥の扉の前で合流しよ。危なかったらフォローよろしくね。」ハニは手を組んで上に伸び、左右にも体を伸ばし、足を開いたりストレッチを始めた。ハニは深呼吸して2階から下のフロアにダイブした。


トランポリンの様になったフロアの上で、ハニは垂直に3回ジャンプした。みなも構えた。アンデッド達が音に気づいてハニに襲いかかった。


ハニは飛んでくるピッケルや片手斧を2回転宙返りをして避けた。落ちる瞬間、腰に差した2本の片手斧を両手で横に投げた。1階通路の両側にいたカスク・エイジ2体は片手斧が刺さり弾け飛んだ。バコー!カラカラカラ。


ハニは助走をつけて飛び、弾け飛ぶ頭蓋骨を空中でキャッチした。進みながらジャンプするごとに高くなっていく。


スノーがピー!口笛を吹いて讃えた。クラウン達はハニと並走する。音に反応したアネホ・エイジが向かいのバルコニーから弓を構えてスノーを狙い、矢を射った。


ハニは高く飛び1回半捻りで矢を避け、頭蓋骨を投げつけた。弓を構えたアネホ・エイジは弾け飛んだ。スノーを狙った矢は外れた。


他の弓を構えたアネホ・エイジは高く飛ぶハニを狙って射った。

ハニはトランポリンに背中落ちして、低く飛んで攻撃を上手くかわした。その隙にクラウンは弓を構えたアネホ・エイジにロージーを当て、吹き飛ばした。


低く飛ぶハニを狙って1階の通路に武器を構えたアネホ・エイジ達が集まってきた。ハニはジャンプしながら近づいて行く。タイミングを見てクラウンが1階に集まったアネホ・エイジ達にロージーを撃った。その瞬間、ハニは高く飛び上がり、伸びかた後方宙返りで避けた。1階のバルコニーのアネホ・エイジ達はロージーで吹き飛ばされた。骨が部屋の角の回収口に大量に集まっていく。奥の扉までもうすぐだ。


下を見ながら2階の最前列を走っていたブラスト。「ブラスト殿!危ない!」2階の奥の扉の前からエクストラ・アネホ・エイジが陽炎を出しながらブラストに向かって飛んできた。虎徹が駆け込み、一瞬で刀を抜き、鞘で回し斬った。バゴーン!エクストラ・アネホ・エイジの肋骨が砕け飛んだ。カラカラカラ。


ハニは高く飛び、軽く膝を抱え、柔らかく2階に着地した。

「大成功!」ハニが両手を上げた。みなハイタッチした。犬達もハニのトランポリンの技に興奮して跳ね回った。


⭐️


扉の先の廊下は明かりが点々と連なり、静まり返っている。備品室と書かれた扉を開けた。虎徹が足を踏み入れた。「ん?床がトランポリン。」虎徹はジャンプして2m程の大箱の上に飛び乗った。「拙者の出番だな。」虎徹は体を揺らしてウォーミングアップした。クラウンも続いて飛び乗った。「あ!明かりがコースになってるー。」大箱と中箱が並び、明かりが連なってコースの様に浮かび上がった。


「先行いたす。」虎徹は下の中箱に飛び降り、さらに下のトランポリンに飛び降り、高く跳ね上がり、次の大箱に着地した。虎徹を手本にクラウン、ブラストと順に続く。


虎徹が下を見て、刀を抜いた。高く遠く飛び降り、トランポリンで大きく跳ねた。そのまま回転しながら、大箱の上で待ち構えたギルドのアンデッド、レポサド・エイジを鞘で斬って吹き飛ばし、着地した。


次のトランポリンで高く跳ね上がり、坂になった資材の壁の縁を蹴り上げ、てっぺんに立った。虎徹は来いの合図をした。クラウンは思い切って飛び出し、虎徹を手本に上手く着地した。続いてブラストが来た。最後のトランポリンのジャンプが低く、足が縁にかからず、ズルズル。クラウンと虎徹が手を伸ばしてブラストを引き上げた。「危ねー、ありがと!」ブラストは気を引き締めた。

スノー、ゴースト、チョコも順調に着地。ハニは優雅にコースを攻略して着地した。


最後は3m下のトランポリンの先に扉が見えた。5人と2匹は思い思いのトリックを決めて大ジャンプして着地した。


挿絵(By みてみん)


⭐️


通路を進むと実験室と書かれた扉に着いた。部屋の中は少し霧ががっている。中央の実験装置にプラズマボールが光っている。薄い霧が次第に渦を巻き、少しずつ姿が見えてきた。エクストラ・アネホ・エイジが回転しながら陽炎を出した。ゆらゆらが部屋中に広まっていった。


中央の周りにある吊り下げクレーンが3機、降下し始めた。クレーンの先端に丸い大きな金具が吊り下げられてあり、武装したアネホ・エイジが2体ずつぶら下がって乗っていた。


挿絵(By みてみん)


スノーが素早く数を数え合図した。

「1.2.3、、7!インパクトいけるな!」

クレーンが止まった瞬間、一斉にジャンプして作戦インパクトを発動した。


ボムッ!!!7つの燃える石の塊はすべてを撃破した。


みな、作戦インパクトの成功に、土を払いながら安堵の表情で称えあった。


⭐️


実験室を出た廊下の先に、石の扉が見えた。入り口の前に廃品回収のカートが停まっている。入り口の両脇に唐草模様のタイルを見つけた。カートは片方のタイルを踏んでおり、もう一方のタイルにはボロボロのギルドスーツと袋に入った少しの回収品が置かれていた。


「おいおい。間に合わなかったか?」スノーは言いながらボロボロのギルドスーツをつかみ、横に退かした。クラウンもカートを退かし、同時に唐草模様のタイルを踏むと、石の扉が開いた。


オレンジ色のショートヘアの下着姿の女が、こちらを見て立ち上がった。


「ああ、やっと誰か来た。2人いないとダメな罠にかかっちゃったのよ。ムカつく罠ばっかり!」クエスト情報で見た21歳、スカーレットだった。半日以上、罠が解けず気が立っている。燃料油のプールがある部屋だった。クラウンが話しかけた。「ちがうよ。ロージー。」バン!燃料油のプールは一気に燃え上がった。

「熱っ!!」スカーレットは身を少しかがめた。スカーレットはクラウンを睨んだ。燃え尽きると、クラウンはプール底の鎖を引いた。扉は全て開いた。


「なによ!私1人でもやれたんじゃないか!ムカつく!」スカーレットの気がさらに立った。


ブラストが冷たい目をして言った。「元気そうじゃん。クエスト済んだし、もう帰ろ。」みな、ぞろぞろと歩き出した。


スカーレットはボロボロのギルドスーツを掴み、丸めて持った。


それを見たハニが「これ使って。」赤い伸縮ストールを差し出した。


スカーレットは礼もいわずにストールをバッ!っと取り、体にサッと巻きつけた。


帰り道で台座の兜を取ろうと、スカーレットが手を伸ばした。「危ない!」スノーが声を上げると、ゴーストは体当たりでスカーレットを突き飛ばした。スカーレットは横に倒れたが、少し擦り剥いただけで無事だった。2m程の槍を見てスカーレットはキレた。「これもなの?!ガッテム!!」


⭐️


無事にスカーレットを連れ戻し、客間に案内された。


しばらくして、聞き覚えのある、か細い声が扉の向こうから聞こえた。「クラウン君、ブラスト君、スノー君はいる?」


「いるよ。」クラウンが返事した。扉が少し開いて、犬達がガリレオ氏に駆け寄った。


スカーレットはフルーツやパンをガブガブと飲む様に食べている。半日ぶりの食事だ。


なかなか食べおわらないスカーレットにガリレオ氏は聞いた。「カートは?」


「ぐにゃぐにゃした床で全部ひっくり返ったわよ!迷って罠にもかかった。実験室の先の石の扉の前にカートと回収品を置いある。もう安全だから後で回収しといて。」


ガリレオ氏は数秒間、沈黙して呟いた。「カートごと回収してくれないと困るんだけどな。」


スカーレットはガリレオ氏を睨んだ。


「ま、ま、いいや。工員達に後は頼むから、廃品回収の報酬はカートの回収分のみ、さらに報酬80%って事でサインしましょう。」ガリレオ氏は両脇に犬達を抱えながら言った。


スカーレットはサインをもらうと「二度と来ないわ!」と言って立ち上がり、ストールを外した。ハニに「これ、どうも。」と言い残し、下着姿で出て行った。


「君達にもサインしましょう。騒ぎの中、駆けつけてくれてありがとう。」サインしたガリレオ氏の手は少し震えていた。


「デモ屋はあと数時間で撤退するから、ゆっくりしていって。これからやる事が多くて、、失礼するよ。」ガリレオ氏は退室した。


焼き菓子やフルーツ、パンなど好きな物を食べてくつろいだ。お腹いっぱいになったクラウンとブラスト、犬達はソファーで居眠りした。


1時間半後。


案内ロボが呼びに来た。「デモが終わったので、どうぞお気をつけてお帰り下さい。」


美しい中庭は踏み荒らされ、ゴミもたくさん散乱している。ロボ達が片付けている。

ブラストは1人暗い顔をして歩いた。


⭐️


ブッチの店は営業再開していた。みな自然とガレージに足が向いた。ブッチの仕事が終わるまで、くつろいで待つ事にした。


しばらくしてブラストにデビーからメッセージが来た。ブラストは急にそわそわし始めた。クラウンは隣で「大丈夫だ。大丈夫。」と言いながら、ブラストの背中をさすった。


デビーがガレージに来た。

ブラストの姿を見た瞬間、涙を流した。「パパがもう会うなって。私はデモしたくないけど、まだ14だから、、ブラストと、、一緒に行けない。」


みな、ブラストとデビーを2人きりにした。


⭐️


しばらくしてブッチの店のカフェコーナーに、ブラストが1人で戻ってきた。

入り口に立って、なんて言おうか迷って切ない顔をしている。それを見たスノーと虎徹は、ブラストの両側から手を回してハグした。クラウンもかけより正面からハグした。その後ろからハニもハグした。


ブラストは「大丈夫。オレ、がんばるわ。」と言って、涙をふいた。


ブラストは別れた事情を短く言い、ブッチの店の部屋に戻って行った。


ブッチは仕事を終え、店のカフェコーナーにいたみなに事情を聞いた。「デビーの親父さんはデモ屋だったのか。」


「デモ屋って何?」クラウンがブッチに聞いた。


「仕事であちこちデモやってんの。」ブッチが教えてくれた。


⭐️


ブラストは翌朝、ローテンションで起きて来た。ブラストは時々、ローテンションな日もあるので、みな普段通りに過ごした。


⭐️


続く。

絵:クサビ

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