表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トレモロ 2  作者: 安之丞
14/27

2巻 2章 2話

鬼に拐われた子供達は、港に迎えに来た家族と再会した。みな涙を流し喜んでいる。拐われていた8人の子供は全員無事だった。セラピーケアなど港にテントがいくつか張られ、温かい漁師汁が振る舞われた。


キッド船長と漁師仲間は、ブラストが大破させた小舟の荷物をサルベージしてくれた。


クラウン達も港の憩いの場で漁師汁を食べた。


「あったまったー。美味しかった。」クラウンは漁師汁を飲み干した。


「クラウン殿は実際、話してました。本当に女が赤子を抱いて吹雪の灯台にやって来ました。」虎徹は報告に頭を悩ませていた。


「なんど聞いても不思議な話だな。シシッ!報告はありのまま入力しとこう。」スノーは虎徹の話をそのままログに残した。


「クラウンはその女の人としゃべったのよね?」ハニはまだ興味がありそうだ。


「うん。いつの間にか寝ちゃってた。気がついたらいなくなってて、、仏像コンプリートしてた!和尚さんにも話してみよー。」クラウンは海底寺に仏像を持ち帰るのが楽しみだった。


「拙者も賛成。」虎徹もうなずいた。


⭐️


サルベージされたカートの中身も海底寺の図録と一致した為、夕方アップル・ステーションで引き渡しとなった。


「よう。準備できたか。」キッド船長がみなに声をかけた。

「キッド船長!」クラウンとブラストはキッド船長に駆け寄った。


「これ、子供達のお礼だって。」キッド船長は赤いギフトBOXをクラウンとブラストに差し出した。


「開けていい?あ!アップルパイだ!ありがとう!」クラウンとブラストははしゃいだ。


「礼を言うのはこっちよ。すっかり港でも雪女と火女の話題でもちきりだ。おし!荷積みするか。」キッド船長は台車を押す仲間に手を振った。


「下のハッチあけるぞー。」スノーがサイプレス号の荷物ハッチを開けた。


荷積みは速やかに行われ、スノーはキッド船長と固い握手を交わし、みな挨拶した。キッド船長達はサイプレス号を見送った。


⭐️


サイプレス号のモニターにテロップが流れた。


ートーキョー・ステーションのギルド、犯罪専門家からメッセージです。「新宿の銀行金庫の事件ですが、鬼達に協力していた銀行員の汚職が見つかり、資金洗浄に関わった職員も逮捕されました。ギルドから報酬が支払われます。ご協力ありがとうございました。」ー



⭐️


海底寺。


和尚と僧侶達は海底寺の駐車場で台車を並べて待っていた。


「みなで遠くまで探しに行ってくれたって〜悪いね。ありがとうね。」和尚は嬉しそうに出迎えた。


「あっちは雪が降ってました。」ハニは和尚とお辞儀してカートを引いていった。


「随分、頑丈なカートに入れてくれて。」


「あ、全部鬼達が使ってたやつで爆発や水没にも耐えられます。」ブラストは和尚とお辞儀してカートを引いた。


「えー、そうなの?じゃ蔵にいれて、運ぶ時は使わせてもらおうかな。」


「和尚、聞いて下さい。」虎徹はアップル・ステーションでの出来事を聞いて欲しくてうずうずしていた。


「おお、なんだろう。ゆっくり聞くから、虎徹も今夜は奥の院にみなと泊まりなさい。」和尚は虎徹の背中を押した。


クラウンとスノーは大型のキャスター付きカートを2人で押しながら僧侶達について行った。


「さっき連絡もらったから、夕飯が間に合わなくてね。竜宮城の飲み屋横丁から出前が届くから後で客殿に集合しましょう。」和尚は小躍りした。


⭐️


1時間後。海底寺、客殿。


みな普段着に着替えて客殿に集まった。畳の大広間には犬達の分まで座布団と食事が用意されていた。


重箱を開け、飲み屋横丁の出前にクラウン達は夢中になって食べた。


虎徹の話を聞き終えた和尚は、ほろ酔いで話した。「雪女でしょ〜?その感じは。虎徹の刀が守ってくれた?いやいや2人の行いが良いからじゃな〜い?ははは。その話は仏像を拝観される人達にもお伝えしましょう。」和尚は上機嫌になった。


⭐️


翌日。


クラウン達は仏像の修復をしばらく待つ事にした。虎徹は一度、実家に帰った。


クラウンとブラストは3日間、良く寝て良く食べた。


ハニは回収した物と図録を照合をして報告ログをあげた。「仏像はコンプリートできたけど、図録全体でいうと85%の回収率ね。悔しいな〜。」ハニは赤いギフトBOXに手を伸ばした。


「あ!もうアップルパイ全部食べちゃったのー。サクサクりんご〜。」ハニは残念そうに空箱を片付けた。


「あー。お菓子食べたーい。」クラウンは気の抜けた顔で言った。「ハニ、報告終わった?虎徹さんも呼んでさー、一回報酬もらわない?僕もアップグレードのお知らせ来たからやりたい。ブラストやった?」


ブラストは思い出した。「あーー!オレ忘れた!てか、まだ決めてねー。」


「お菓子も買いに行かない?」クラウンはブラストに言った。


「行こ、行こ。」ブラストはパンクファッションからギルドスーツに着替えに行った。


⭐️


チェリーブロッサム・アイランド・ステーションのスーパーで日持ちするお菓子を買いながら、ギルドスーツのアップグレードの話になった。


「クラウン何にするか決めてるの?」ブラストはスペースおかきをカゴに入れた。


「うん。ブラスト知ってる?アンダーグラウンドのコラボスキンがあるんだよ。」クラウンは芋けんぴをカゴに入れた。


「見た!あれ、カッコいいよな。ライトがそれぞれのカラーに対応するらしいよ。そっち系もアリだなー。」ブラストはまだ決められなかった。


「機能だと、スリープスタンプやスキャナーもあるよ。レンタルしなくてよくなるよ。スキンでいいの?」ハニは不思議そうな顔をした。


「一回見てみよー。」ブラストが言いながら、ディスプレイを出して、メニュー画面を開いた。スキンのアンダーグラウンドをタップするとプレビューが表示された。ブラストの青いギルドスーツに青いライトが内蔵された。「カッケー!!」「カッコイイ!」クラウンも飛びついた。「僕もやってみよー。」クラウンもプレビューを見ると、白いギルドスーツに赤いライトが内蔵された。「絶対これにしよー!」クラウンは言った。「オレも!」ブラストもついに決めた。


「ちょっと光るんだ。ふふ。」ハニは呟いて笑った。


「ん?ハニは何にしたの?」クラウンが聞いた。


「タクシスの範囲拡大よ。」ハニはすまして言った。


「実践的〜。」クラウンとブラストは声が揃った。


⭐️


サイプレス号に午後からみな集まった。


クラウンとブラスト、ハニが先に到着しzoneに入って行った。後から虎徹とスノーが一緒に来てzoneに入った。


クラウン、zone内。

アース、海底寺の仏像の回収、図録の宝物85%回収の特別報酬、武器商人のアジト壊滅、新宿銀行金庫マネーロンダリング事件への協力の特別報酬、全て受け取り、全身が金色に2連続光った。クラウンはレベル25になった。


クラウンはギルドのメッセージを開いた。


ークラウン様、レベル20達成おめでとうございます!格安セールのご案内です。家庭用ギルドポッド「zone」10万クレジットが半額の5万クレジットでご購入頂けます。この提案を消しますか?ー


はい。クラウンは選んだ。


今回の特典は、スーツのカスタマイズチケットです。ギルドネットモールへのご来店お待ちしています。


クラウンはモニターでアンダーグラウンドのコラボスキンを選んだ。


お申し込みありがとうございます!ギルドスーツのアップグレードはお近くのギルドのカウンターにギルドスーツをお持ち込み下さい。


クラウンは退室した。


クラウン、ブラストは仏像が完成して海底寺のご開帳を見届けたら、アースを出発しようと話した。


「クラウン、メッセージみた?誕生日いつのまにか過ぎてたー。」ブラストはディスプレイを見ながら言った。


「誕生日?ああ。毎年知らせくるね。無視してるけど。」クラウンはなんとも思ってない様子だ。


「興味なさそーだなー。クラウン14になったからベーシック免許、取りに行けんじゃない?ジュピターに免許センターあるから行きたい人行かない?」ブラストはみなを見た。


「え!行きたい!」クラウンは手を挙げた。


「拙者も。」虎徹も手を挙げた。ハニも手を挙げた。


「じゃ行くか!シシッ!ブッチの所で免許合宿だ!」スノーはブッチにメッセージを入力している。


「ね!ジュピターついたら、みんなまとめてお誕生日会やろうよ!」ハニはみなを見た。


「なにそれ?」クラウンは誰かと誕生日を祝った事がなかった。


「前もクラウンの部屋でやった感じのパーティーよ!だって1年近くアースでがんばったんだよ?」ハニはクラウンに出会った時の事を思い出した。


「パーティーは好き!ご馳走いっぱい食べたい。」クラウンはみなで贅沢できるのが嬉しくなった。


⭐️


数週間後。


海底寺の本殿に地域の人もみな集まり、ご開帳となった。修復が終わった仏像は金色に輝き、鎮座している。クラウンは祈るみなをみながら「がんばって取り戻して良かった。」と達成感を味わった。


挿絵(By みてみん)


和尚はHOMAREにも声をかけ、虎徹の見送りをそこでする事となった。天狗様、兼定、まごろく、斗鬼は、みなと別れを惜しんだ。


お別れの時が来た。

最後に天狗様が声をかけた。「よー。みな、よーきけ。勉強もヨガも侍もギルドも入門あって卒業なしじゃ。光の道を歩いていけますように。」


みな合掌して一礼してから、元気に手を振って海底寺を出発した。


虎徹は荷物を押しながら、涙目になっていた。まごろくは隠れて泣いていた。


⭐️


続く。

絵:クサビ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ