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火葬場

作者: HORA

「…ぅぉぉぉ…、おぉぅ…」

どこかで(うめ)く声がずっと聞こえている。未明の時刻、汗ダクのベッドで微睡(まどろ)みながら昨晩の事を思い返す。




 俺は上坂創(うわさかそう)。昨夜、友人2人と一緒に肝試しと(しょう)して、霊が出ると噂の心霊スポットへ行ったのだ。そこは現在は使用されていない元火葬場。その火葬場の経営者はヤクザと懇意(こんい)にしており、表に出せない死体の処理をその火葬場で処理していた。敵対勢力の他殺体や多重債権者、裏切った不忠者(ふちゅうもの)などの隠滅の依頼は十数体にも及ぶ。中には生きたまま焼かれた人物もいたとの事だ。嘘か本当かはさておき週刊誌にそのような内容の記事を暴露され、経営が続けられなくなったのか人里から少し離れた山間にあるその火葬場は管理がなされなくなり廃墟と化した。


それからしばらくして、その火葬場周辺で幽霊の目撃例があがり始める。

…近くの山道を運転していたら()(くさ)(にお)いが立ち込めていた

…森全体に響くかと錯覚するほどの苦悶(くもん)の絶叫が聞こえた

…火葬場の敷地内に火の玉のようなものが多数飛んでいた


その火葬場で殺された人物の性質(たち)に癖があったせいか、無念の内に死んだ人物の量が多かったせいか、様々な心霊現象の噂が立ち、どの霊能力者でも(はら)えない程の凶悪な心霊スポットになってしまったのだそうだ。雑誌の心霊特集などでも危険度ランクSに位置付けられ【けっして近寄ってはいけない】とされていた。


そんな廃墟と化した近寄りがたい元火葬場であったが、友人の一人がお盆休みで半年ぶりにこちらに帰省しており

「他県でも有名になってんのよ、あの火葬場。ずっと行きたかったんだよね。今から肝試しに行こうぜ!」

と言う。それじゃあと軽い気持ちで3人は昨夜にそのいわくつきの元火葬場に向かったのだ。




結論から言うと…特に気になるような心霊現象は起きなかった。

「いや~噂に聞くような怖いことは何にも無かったなぁ。」

「そうだな。絶叫が聞こえるどころか、静寂で耳が痛くなるほど無音だったしな。」

「考えてみればそれはそれで不思議な感じだよな。夏の森で虫の声が一つもしないなんて。」

無理やりにひねり出した怪奇現象はと言えばその程度だった。


肝試しが終わり友人と深夜3時頃に解散。自宅に帰りすぐにベッドに入る。少しうつらうつらし始めて、あまり時間は経っていない感じがする頃に不思議な(うな)り声が聞こえ続けていることから恐怖で目が()えてきた。外もまだ暗いので4時頃か?…そして冒頭のシーンに繋がる。


極々(ごくごく)近いところからの(うな)り声。どこから聞こえてきているのか耳を澄ます。






非常にしょうもない


…スマホから流れる音声であった




帰宅してからベッドの中でスマホゲームを起動してゲーム内の報酬を得るために30秒広告を再生する。その30秒を待たずして眠ってしまったようなのだ。ゲーム広告の中のキャラの不明瞭な声がずっと再生され続けていた。

「何だよ…、ビビッて損した。今度あいつらに会ったら笑い話になりそうだな…」

その(うめ)き声のようなものは依然(いぜん)流れ続けていたが、音声の出所(でどころ)が分かり安心したためか、猛烈な眠気が襲い、そのまま再び眠りについた…






「お昼のニュースです。今朝未明、◎◎県××市で火事が発生し、鎮火した一室から焼死体が発見されました。その家に住んでいた上坂創(うわさかそう)さんと連絡をとれないことから、警察は見つかった焼死体は上坂創(うわさかそう)さんであると見ています。発火の原因はスマートホンを使用したままのうたた寝により、バッテリーが熱を持ち発火したことであると見られます。××市ではほぼ同時刻に他にも2件の火事が発生していることから事件と事故の両面から捜査が進められています。」

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― 新着の感想 ―
気づいた時には、もう手遅れ。 恐怖体験もなくあの世に召されるとは、最凶心霊スポットとしては、温情ですね。 まあ…、肝試しをした友人3人が、別々の場所で同時に火災で亡くなったのに、「事件になりそうにな…
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