3. こんにちはバスガイドさん
お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。
火の国の王様が後もう一歩のところまで行ったところで、王子が邪魔に入って大爆発を起こす事になったわけだ。
リヤドナの街は完膚なきまでに破壊され、僕も吹っ飛ばされてボロボロになった。僕はボロボロになったんだけど、神の壁は崩れ落ちないまま、しっかりと街を両断するような形で維持し続けている。
その壁の前でボロ雑巾となった僕を、一人の女性が覗き込んで来たのだった。
「三年二組の担任の西山康太郎先生・・西山康太郎先生・・」
「この後に及んでフルネーム呼びですか・・」
ボロ雑巾の僕が目を開けると、バスガイドの格好をした女性が僕を見つめていた。
修学旅行の時に、三年二組の担当となったのがこのバスガイドさん。
僕らの乗るバスはラフティング教室に向かっている最中に異世界転移をすることになったんだけど、気がついた時にはバスは高原に放置されたままで、運転手さんもバスガイドさんも居なくなっていたのだ。
「西山先生、ごめんなさいね、すぐに起きて欲しいの」
「すみません、色々と骨が折れていて無理そうです」
爆風の煽りを喰らってボロボロだからね、足とか変な方向に曲がっちゃっているし、絶対に起き上がれないし、歩けない。
「治れば起き上がれそうですか?」
「(骨折が)治れば起き上がれると思います」
バスガイドさんが僕の額に触れると、温かい何かの力が注がれていくことに気がついた。全てが正しい位置に戻るような魔法、見れば、消失した左腕まで元に戻っている。
「あ・・ありがとうございます」
立ち上がった僕は、まじまじと自分の姿を見下ろしたんだけど、黒のスラックスに半袖のワイシャツ、靴なんか黒の革靴で、この世界に来たときに着ていた服を着ていることに気がついた。
三年二組の担当になったバスガイドさんは、憂いを含んだかなりの美人さんで、
「今年は当たり年だーっ!」
と、僕なんかバスに乗車する時に内心はしゃいでいた訳なのだが、
「先生、息子を助けて欲しいんです」
トイレ休憩の時に僕が缶珈琲を飲んでいたら、バスガイドさんが突如、そんなことを言い出したのだ。
息子を助けて欲しいの意味がわからないのだが、やっぱり結婚していたのか。それも子持ち、そりゃこれだけの美人なら夫も子供も居るのだろうと思ったわけ。
「もしかして息子さん、うちの学校の生徒さんでしたか?」
教師に助けてもらいたいと言えば学業以外にないだろう。
「いいえ、そういう訳ではないんですが」
まだ中学校に上がっていない、学区内の小学六年生とかなのかな?
公立の中学校に進学するにあたって、その後の進路に不安を感じる親御さんというのは一定数いるわけで、この時も、息子を助けて欲しい=進路で困った時には相談に乗ってほしいなんてことだろうと思ったわけ。
「うちの学校はどの先生も進路指導については力があると思うので、問題ないですよ。息子さんが困った時には僕も力になりますから」
「本当ですか?」
「本当ですよ!(進路相談については)任せてください!」
息子の進路に悩んでいると思ったバスガイドさんは、僕が異世界に転移したばかりの状態に戻すと、憂いを含んだ眼差しを前方に向けて言い出した。
「息子が世界を破壊しようとしているんです」
「えええええ?」
ちょっと待って、どういった話なの?どういった話なの?
「夫も、死にそうなんです。先生、どうか、先生の力で助けてください」
わけわかんない、わけわかんない、理解が追いつかない、理解が追いつかない。
『うわあああああああああああん!』
幼児が泣き叫んでいるんだけど、それをあやすようにして男の人が抱きしめている。普通に考えればハートフルな光景にも見えるんだろうけど、破綻の力が渦を巻いて世界に大穴を開けようとしているし、その渦を固定するために悪霊たちが全力で力を送り込んでいるように、僕には見える。
「世界を破滅させるために息子を使われたくないんです」
そりゃ、そんな事に我が子を使われたくはないだろう。
「助けるねえ・・・」
悪霊の渦が太い鎖のようになっているので、断ち切る事が難しい。あれを断ち切るには神力の付与が必要で、僕が唯一力を付与できる妖精の剣は、ポーションと引き換えにエルフの野郎どもに渡してしまったんだよなぁ。
「妖精の剣があれば何とか出来るかもなんですけど、僕、それを他人にあげちゃって、今、手元にないんですよね」
「妖精の剣があればいいんですか?」
バスガイドさんが小首を傾げながら言い出した。
「妖精の剣は主人に仕える剣なので、例え他人に渡したとしても、望みさえすれば主人の元に戻って来ますよ?」
何そのファンタジーな剣!
「先生、今すぐここに来てって念じてください!夫の力ももう限界なんです」
「は・・はい、念じればいいんですよね」
バスガイドさんに励まされた僕は、とりあえず頭の中でゴブリンの祭司が僕の首を切りつけてきた剣を想像した。すると、バスガイドさんの言うとおり、剣は現れて僕の足元に転がった。
「先生、剣が拗ねてます」
「はい?」
「先生、呼び出す時に、妖精の剣が主人を傷つけている場面を思い浮かべたでしょう?」
確かに思い浮かべました。
「妖精の剣は不本意な扱われ方を長年していて、彼なりに心に深い傷を負っているんです」
何それ面倒臭い。
「愛剣なんだよ〜、君がいないと困るんだよ〜、愛しているんだよ〜と言って、自尊心を復活させてあげてください」
何それ、めちゃくちゃ面倒臭い。
「愛を告げるのを面倒がっては女性ともうまくいかないですよ?だから先生、未だに独身なんじゃないんですか?」
「うるさいな〜!そう言うのを余計なお世話って言うんですよ!でも、まあいいや。幼い子供がいつまでもギャン泣きしているのも可哀想だし、ひきつけでも起こして倒れられても困るから、行きます!行きますよ!剣に愛を囁きながら行けばいいんでしょう!」
僕はもう、バスガイドさんのお小言も、子供のギャン泣きを聞き続けるつもりも一切ない。
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