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6. ファンタジー芸

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

僕にはエリアス王子の攻撃がよく見えた。

 当たり前だけど、地方公務員で中学校の教員である僕が魔法に対して造詣が深いなんてことはまるでないんだけど、僕の目には王子の攻撃が矢印となって進んでいくように見えるわけ。


 僕にも経験があるボーナスタイム、王子の攻撃は無数の矢印となって弾き飛ばされた吸血鬼王へと進んでいく。コントロールが十分ではないから、僕らの方にも幾つかの矢印が向かって来たんだけど、

「ぎゃあバウッ!」

 王子の矢印がバウさんのふさふさの毛を掠めて行ったものだから、腕に幅15センチほどのハゲた出来た。


 バウさんには矢印が見えないようだが、僕にはこの矢印が良く見える。

 それほどスピードがあるわけじゃないから、ひょいひょい矢印を避けながら、バウさんを安全地帯へと押し出した。


 この矢印、物凄い威力で焼き切っていくんだよね。だから、周囲の建物は分断されて崩れ落ちていくし、吸血鬼王は細切れとなっていく。さすがボーナスタイム、悪魔の実を体内で熟成させずに排出したことが評価ポイントとなって、吸血鬼優位の世界で自分こそが王者となる。


 細切れとなった吸血鬼王の前で足を止めたエリアス王子(イケメン)はガックリと膝を突くと、血を吐いて倒れてしまった。


「またHPポイント10以下になっちゃったんじゃないのかな?」


 瓦礫の影から戦闘の様子を見守っていた僕は、リュックを担いで飛び出した。僕も経験あるけど、ボーナスタイムが終わった途端に死にそうになっちゃうんだよな〜。


「先生、先生がエルフどもから貰ったポーションを飲ませてしまっても良いバウね?」

「う・・ううん・・うん・・うん・・いいよ、いいよ、飲ませちゃってよ」


 当たり前だが、エルフどもに貰ったポーションは無限に湧き出る魔法のポーションという訳では決して無い。リュックにギチギチに詰まっていたポーションの瓶も、今は残り三本、エリアス王子の様子を見るに、一本で回復するものとは到底思えない。


 僕はおそらく、血の涙を流していたと思われる。


 なんで自分の為じゃなく、赤の他人のために、貰ったポーションを費やさなくちゃいけないのだろうか?阪口先生にはエリクサーを使ってるんだよ?人によっては一億払うっていう代物だよ?かわいいお姉ちゃんに使うならまだしも、何故!僕は!ひたすら野郎どもに使っているんだろうか!


「あ・・マジックポーションあるじゃん、一本貰うね〜」


 バウさんにポーションを飲ませて貰っているエリアス王子を覗きこんでいた吉岡先生が、僕のリュックの中の残り二本となったポーションの瓶を発見すると、そのうちの一本を腰に手を当てながらゴキュゴキュと音を立てて飲み干している。


 瓦礫に埋もれていたイケメン二人組もなんとか起き上がっているけど、本当に大丈夫だろうか?大きな怪我をしているようには見えないけれど、まあ、四肢欠損でもなければ聖女様が治してくれるだろうさ。


「そいえば、吉岡先生がガチンコバトルをしていたレオニート君は何処に行ったんですか?」

「何?あの吸血鬼、レオニートっていう名前なの?」


 聖女の衣装を着た吉岡先生は、あざといほどに可愛い系のお姉さんなのだが、今はレデイースモードに入っているらしく、女子プロレスラーのような闘気を身に纏っているように見えた。


「急に居なくなっちゃったんだよね?ふっと消えたっつうの?蝙蝠になって飛んでったのとは違う感じなんだけど?」

 

 赤褐色に染まり上がった世界の中で、家々は壊れて瓦礫の山となり、崩れた残骸が落とす影が色濃く見えるのは錯覚では無いだろう。ゾンビも腐の国の兵士もいないこの世界では、吸血鬼王の残骸と、僕と吉岡先生、バウさんと色白のイケメン三人組の姿しか見えない。


「レオニート君は、この世をぶっ壊して吸血鬼郷を作り出そうぜっていう吸血鬼王派じゃなくって、みんなで無難に暮らして行こうぜのハサウェイ派の吸血鬼ですよね?だとしたら、吸血鬼王を倒したってことで、平和が維持されました!おしまい!おしまい!じゃないのかな?」


「先生、それはあまりにもお気楽すぎるバウ」

 エリアス王子を抱えるバウさんが、鋭い爪を一本だけ出して、ぐるぐる何かの陣のようなものを描くと、僕らの周りを魔法陣のようなものが浮かび上がり、僕らを囲むようにして光の壁が出来上がる。


「結界術か、まさにファンタジーね!」

 吉岡先生が感嘆した様子で言うんだけど、貴女は確か、聖女様認定されたんですよね?


「吉岡先生、聖女といえば癒し、聖女といえば浄化、聖女といえば結界はお約束みたいなものでしょう?まさか先生、聖女の癖に結界とかそういうファンタジー芸が出来ないわけじゃないですよね?」


「ファンタジー芸か。言い得て妙だけど、まさにその結界っていうのは緻密な作業が多すぎて私には到底出来ない。気合いで何とかならないものは基本、無理なのよ」


 あああ・・あざと系に見えても、中身が脳筋だものね。


「西山先生、今、何か失礼なことを考えてなかった?」

「いえ、全然!全く!」

「おしゃべりはそこまでバウ!みんな僕の近くに集まって欲しいバウ!」


 熊の獣人であるバウさんが、一点を見つめながら声を上げた。

 二人のイケメンは、

「殿下大丈夫ですか?」

「殿下!殿下!」

 と言いながら、エリアス王子に取り縋っていたからバウさんのすぐ近くに居た訳だけど、僕と吉岡先生はちょっとだけ離れた場所に居たんだよね。


「な・・なんだよあれ!」


 吉岡先生が僕の肩を握りつぶすくらいの力で掴みながら、震え声で吸血鬼王の残骸の方を指差した。

 ああ、このちっとも終わらない展開、本当にマジで勘弁して欲しい。


ここまでお読み頂きありがとうございます!

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