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1. トップ会談

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 腐の国の王サルマンは、リヤドナの街に特殊部隊を派遣させた結果、街の周囲を白骨化した兵士たちが取り囲んでいるような状態となっていた。

 上空は火の国の王の巨大な魔法陣によって包み込まれているため、ウィルスの流出は阻止されている。ここは腐の国、細菌やウィルスの繁殖スピードは早く、吸血鬼たちが開発したという下位継承のウィルスは空気中を移動しながら感染を広げていた。


 5万人規模のリヤドナの街の住民に加えて、オークション目当てで訪れた観光客までもがゾンビ化して街に溢れ出していた。


 腐り落ちるのが早いキンヴァン王国では、死体は土葬するとすぐさま血肉は分解されて、骨のみが残る形となる。それだけ土中のバクテリアの数が多いという事になるのだけれど、腐の国の死霊術で使われるのは肉のかけらもついていない骨の部隊という事になるのだった。


 すでにレベル50以上の部隊長が街の中に入り込み、彷徨い歩くゾンビ達を骨の部隊を使って一箇所に集め始めているはずだ。

 ゾンビに例えなったとしても、早めに対処をすれば、聖女の浄化の力で元に戻れるというのは有名な話となるため、光の国からの聖女がわざわざこの街までやって来てくれたのは幸運以外の何物でもない。


 骨だけとなった怪鳥に乗って羽ばたいたサルマンは、闇の渦が巻いている場所を見つけて飛び降りると、合図を送っていた闇の王ドゥンケルが、

「イェーイッ!相変わらず骨まで腐っているかーい?」

と、ノリノリの口調で言いだした。


 ちなみに腐の国では『骨まで腐っている』には色々な意味が含まれる。死んで土に埋めたら数日で骨となる風土ゆえに、骨まで腐っている=屍人部隊(アンデッドフォース)としても使えない。要するに物凄く使えない奴だと揶揄する場合と、悪人が多いがゆえに、骨まで腐っている=悪人の真髄を極めているという意味にもなったりする。


 ちなみに、闇の王は語呂が良いから使っているというだけで、深い意味は特になかったりする。


「ああ・・骨とか何とか、そういうのはもういいから。それで?闇の国の住民の所為で僕んとこの国がこんなゾンビ大合戦みたいなことになっちゃっているんだよね?ねえ?もしかして、闇の国ったらうちに喧嘩を売っているとか、そういう感じになるのかな?」


「ええ〜?うちの国って言うんじゃなくて、吸血鬼一族がこの世界に対して喧嘩売っているってことになるんでしょう?闇の国は住む場所を提供しているだけでぇ、そんな吸血鬼たちだから、近々出て行ってもらおうと思っていたところだしぃ」


「あら!闇の王ときから、今までどれだけ我が一族があなた達に融通してきたと思っているのかしら?そもそも、アダルブレヒトの行動が一族の総意だなんて思って欲しくないわね!あの子はたった一人で、この世界に喧嘩を売ろうとしているのよ!」


「ハサウェイ様、それは言い訳としては通用しないのネー。吸血鬼卿たちは王の指示で動いているし、その吸血鬼卿の部下達も、吸血鬼王のために動いているのネ。一族総出でこの世界を破滅させようと企んでいると思われても何の文句も言えないのネ」


「この人は余計なことを言わないでちょうだい!これはトップ同士の話なのですからね!」


「あのさぁ、せっかくサルマンが来たんだし、さっさとプールの底に沈んでいる破綻の力を回収しちゃおうよ。破綻の力があるから僕やらこの人やらが力を発揮出来ないのであって、破綻の力さえ移動しちゃったらさ、吸血鬼王共々、このリヤドナをズバンッと消滅させちゃえばいいわけでしょ?サルマン、悪いんだけど、あそこのプール、あの火の国の王が守っているプールの底に骨を送って、拾い上げてきちゃってよ」


「リヤドナの街を潰すだって?」


「だって住民は全部ゾンビだし、今は火の国の王がウィルスを外に広がらないように囲いをしてくれているけど、それだっていつまでも保つかわからないじゃない?だったら、街ごとさっさと消滅させた方が、ウィルスの拡散を防止することが出来るし、ゾンビが広がらないように阻止することができるし」


「闇の国の王が言うことも分かるが、せっかく光の国から聖女殿が自分の生徒を助けるとか何とか言って腐の国までやって来たというのに、彼女の力を使えばゾンビ化も無効に出来るだろうに、全部、丸ごと消滅させれば良いって酷くない?一応、僕の国の国民なんだけど?」


「あのー、すみません〜、トップ会談の最中、お邪魔をして申し訳ないんですけど、先ほど言った聖女殿が自分の生徒を助けると言って腐の国にまでやって来たというのは本当のことなんでしょうか〜?」


 突然、狐の獣人である『この人』の後の方から声がかかった為、サルマンが覗き込むようにして見ると、『この人』の側近である熊の獣人の隣で、貧相な男が一本だけ残った片手を挙げて問いかけて来たのだった。


 オークション会場からも近い高層アパートの屋上にサルマンは舞い降りたのだが、そこに居たのは闇の国の王とその秘書、吸血鬼王が騒ぎを起こしたとあって駆けつけてきた吸血鬼一族の重鎮ハサウェイと、おそらく水の国の代表である『この人』。この人の後に熊が居るのはいつものことだけれど、その隣にいる貧相な人族の男は初めて見るタイプの人間だった。


「聖女様って、もしかして三ヶ月ほど前にこの世界に移動してきた異邦人(エトランジェ)の女性で、名前は吉岡結衣という名前なんじゃないでしょうか?」


「確かに聖女の名前はユイと言うらしい。今は光の国の第二王子と共に待機をしてもらっているけど?」

「吉岡先生、マジで聖女やってんのかよ!正気とは思えない!」


 男はぶつぶつと言った後で、

「とりあえず殲滅作戦はちょっとの間、待ってもらえませんか?この街にはうちの学校の生徒も居るので、いくらゾンビになっちゃったと言っても、見捨てるわけにもいかないんですよね〜」

と、言い出したのだった。



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