3. どこから間違っていたんだろう
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三年三組のクラス委員でもある土屋美波は、自分の思うがままに話を進めるのが得意だった。気に食わない子がいれば、
「あの子ってなんだか変わってない?すっごく違和感感じるんだけど?」
と言って仲間外れにするのはいつものこと。
ちょっとでも生意気なことを言ってくるようであれば、
「私、あの子、ちょっと苦手だな」
と言えば、周りの子たちも、
「私も苦手かも」
「あの子、クラスでも嫌われているもんね」
という話になってしまうのだ。
クラスの中心人物が美波で、周りは仲間外れにされたくないから美波に忖度するように動いていく。だから、ルーベの街に移動した時にも、
「阪口先生ってとっても頼りになります!先生が居るから、私たち、不安にならずに済んでいるんですね!」
と、唯一の大人である担任教師に即座に取り入ることにしたし、
「掃除、洗濯、やれる人がやるのが当たり前でしょう?私たちは忙しいんだから、暇な人がやるようにすれば良いじゃない!」
と言って、クラスをイケてるグループとイケいてないグループに分割して、面倒なことは全て、イケていないグループに任せるようにしたのだった。
都合の良いことは自分たちのお陰、都合が悪いことはイケていないグループの所為。阪口先生は美波たちのグループを可愛がってくれたから、他の子は黙って従うしかない状態にした。
そうして、イケていないグループの子が全員いなくなった頃、賭け事で多額の借金を背負うこととなった阪口先生によって、美波たちイケてるグループ十二人は売り飛ばされることになってしまったのだった。
着の身着の儘の状態で檻の中に入れられる事になった美波たちは、ルーベの街から国境を越えて二日ほどで到着するリヤドナの街へと移動することになった。
そうして、大蜥蜴の獣人に連れられて、神殿の地下にある牢獄のような場所に押し込められることになったのだ。
「お前らはオークションにかけられるまでの間、ここで保管することになったガン。吸血鬼どもがお前らを競り落とすことになるだろうから、ここでは無体なことは行わないが、引き取られた後は地獄以上の目に遭うだろうガン」
大蜥蜴の獣人はそう言って、牢獄に通じる扉の鍵を閉めてしまったのだった。
最初のうちは、阪口先生への非難と文句を言い合っていたみんなも、牢屋に入れられている間は、吸血鬼の残虐さがいかに酷いものかということを散々聞かされた為、みんながみんな、無口になって黙り込むようになってしまった。
しかも、与えられるのは一日一回、硬いパンと水だけなのだ。空腹で目眩を起こし、みんな、石が剥き出しとなった地面に横になったまま身動きも取れなくなってくる。
「ああ・・三年二組と一緒に移動してれば良かったな・・」
じめじめした牢屋の中で、誰かの声がポツリと響いた。
三年二組の西山先生と阪口先生を比べたら、阪口先生の方が筋肉質のがっしりとした体型をしているし、何かあったら守ってくれそうな逞しさがあった。
ヒョロリとした痩せ型で、ぼんやりしているようにも見える西山先生は頼りないように思えたし、ファンタジー系の物語が大好きなクラスメイトの北村が言う通り、万が一、見たこともないような魔獣が襲いかかってきたとしたら、担任の阪口先生だったら、率先して倒してくれそうだと思ったのだ。ああ、三年三組で本当に良かった!と、ルーベへの移動の最中は、心の底から思っていた。
「ああ・・どこから間違っていたんだろう・・」
仲間はずれを作って自分が優位に立つなんてことを考えなければ、今頃、女子は全員で固まってカーンの街に移動していたのかもしれない。
阪口先生が晩酌に付き合えと言い出した時から、美波はカーンの街に移動することを考えた。だけど、冴えない女子たちが逃げるようにカーンへと向かったから、自分は同じようになりたくないと思ってしまったのだ。だから、足が向かわなかった。
クラスメイトの私物を売るようになってからお金にも困らなかったし、遊んで暮らせるならそれでいいと思っていた。悪いことをしていると分かっていたのに、異世界だから問題ない、そう思って、好き勝手にやったツケが回ってきたのだろう。
オークションの日にちが近づいて来るなか、シクシクと泣く声が日に日に大きくなっているのは確かなことで、これから先の未来を考えるだけで美波の体が震えてくる。
「お母さん・・お母さん助けて・・」
美波が小さく縮こまりながら助けを求めていると、いつもは閉じられたままの扉が大きく開き、数人の大蜥蜴の獣人がシーツに包まれた何かを運んでこちらの方へとやって来る。
そうして美波が押し込められていた牢屋の扉が開かれると、シーツに包まれた何かが床の上へと転がされたのだった。
「っつう!・・いってええええ」
シーツの塊がうめき声を上げているけれど、大蜥蜴の獣人たちは鉄格子の扉を閉めてしまうと、何やらワイワイ言いながら出口の方へと戻って行ってしまった。
「人族がもう一匹手に入るなんてラッキーだったな」
「明日は火の国の王もオークションに参加されるそうだぞ?」
「人族は高値で売れるからな、吸血鬼と火の国の王でどんどん競り上げてくれればいいんだガン」
分厚い扉が閉められて、牢に静寂が訪れる。
ルーベの街に残った三年三組の十二人の生徒は、四つの牢に分けて入れられていたのだが、シーツの塊がモゴモゴと動き出す。
「あの・・あの・・大丈夫ですか?」
美波がシーツに手をかけながら問いかけると、シーツの隙間から黒い頭が飛び出してきた。
「西山先生!」
美波の驚きの言葉に、他の生徒たちも驚きの声をあげた。
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