6. アロイジウスさん助けて!
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「やめてよ!やめて!やめて!やめて!やめて!」
エイリアンのように、阪口先生の胸を突き破って出て来ているのが吸血鬼卿らしいんだけど、頭だけ飛び出て見えるから気持ち悪い。
真っ赤な血で塗れた髪の毛を振り乱して逃げようしているからキモい。しかも相手は女吸血鬼、こいつが阪口先生をカジノに誘って借金漬けにして、カジノの用心棒をまとめる大蜥蜴を操って生徒たちをオークション送りにしたって言うんだから、断罪するしかないんだけど・・
「吸引魔法」
吸血鬼卿の額を手で抑えた僕は魔力の吸い上げを行ったんだけど、阪口先生の魔力も含めて、どんどん吸い上げを行っていく。
ああ、まただ、ドロドロのヘドロを吸い込むような感覚、ヌチャッとしてべチョッとして悪臭漂う、気持ち悪いパワーが自分の体の中に吸い込まれている感覚。
「ぎゃあああああああああああっ!」
女吸血鬼卿は拘束から逃げ出す事もできず、最後の一滴まで魔力を吸い取られると、灰となって消えた。
阪口先生は力尽きたように失神しているけれど、胸の穴も塞がっているし、飛び出てグロさ満点だった骨も無事に元に戻っている。
「先生、ポーショーンが必要バウ、すぐさま用意した方が良いバウ」
なんてことをバウさんが言い出さないから良いんだろう。
僕はもう、阪口先生のために一本たりともポーションの類は使いたくない。
すると、僕の後ろから一部始終を見ていた一同が、
「「「すごい!凄い!すごい!」」」
と、拍手をし始めたのだが、同種が殺された吸血鬼二人はそれで良いのだろうか?
「へーー!魔力だけを吸引するだなんて初めて見たネ〜!おそらく自分よりレベルが遥かに上のものは吸引できなさそうだけど、かなり使える技なのネ!」
この人さんは感心した様子で声をあげ、
「こういうやり方をすれば周りに被害が一切かからないから無茶苦茶良いバウ!『この人』とは大違いバウ!」
と、バウさんが感嘆の声を上げる。
「『この人』にハムダンを殺させずに、先生に吸い上げて貰ったら良かったわー!あああ!残念!大蜥蜴を干からびさせて、天日干しにして、みじん切りに出来ただろうに!」
と、ハサウェイさんが悔しがり(お上品な割にやっぱり残虐なんですね)、
「怖――っ!もう二度と吸引されたくないーーっ!」
と、ショタが貴婦人の後ろで震え上がっている。
「先生、次は誰を吸引するバウか?」
「しないよ!絶対にしない!もうお腹いっぱい!これ以上やったら魔力を吸いすぎたカエルみたいに破裂して死んじゃうかもしれないし!」
「いやいや、先生がどこまで行けるか見てみたいものネ!人生、トライあるのみなのネ!」
「ヤダヤダヤダヤダ!アロイジウスさん!助けてーーー!」
僕は悲鳴をあげながら、なんでアロイジウスさんがここに来てくれなかったんだと!僕は心の底から文句を言い続けた。何気に常識人なアロイジウスさんだったら、きっと、この人さんや吸血鬼たちを止めに入ってくれたと思うもの!
◇◇◇
「クシュンッ!」
イエティのように巨大化したままのアロイジウスは大きなくしゃみを連発していた。
巨大な体は至るところ血まみれで、足元には巨大な蝙蝠がいくつも潰れている。
「先生が俺を呼んでいるような・・・」
夕方のブルージュ王国は、太陽の光が赤銅色となって空を真っ赤に染め上げていた。
カーンの街に襲撃を掛けようとしていた吸血鬼が二匹が結界に触れたため、食べ途中だったプリンアラモードが床に落下して、冒険者ランクSランクのアロイジウスは激怒した。
ようやっと完成したプリンアラモードは、メロンマシマシ、クリームマシマシ、プティングはプルンプルンの芸術的な出来であり、
「ヨシモッちゃん!ワカくんも!君ら天才だ!」
と、感無量で目をうるうるさせて感動しきりとなっていたところに来ての、プリンアラモ―ドが落下、これが激怒へ繋がらないわけがない。
冒険者ギルドから飛び出してきたカミーユさんをも振り解いて、街の外へと飛び出したアロイジウスはあっという間に巨大化を果たすと、空を飛んできた巨大な蝙蝠を拳で叩き落とし、襲いかかる巨大な闇を捻り潰し、地中から湧き出た山のような蝙蝠の群れを踏みつけにして皆殺しにしたのだ。
宵闇に紛れて街への侵入を果たそうとした二匹の吸血鬼卿は、怒れるアロイジウスによって瞬殺されてしまった。
アロイジウスは氷の国クリフトオフ、トウムバ王家の第三王子、クリストオフの次期『その人』と言われる膨大な魔力の持ち主でもあるのだ。
膨大な魔力の壁に包まれているアロイジウスは、巨大化すると毛むくじゃらの化物となるのだが、吸血鬼卿といえども歯向かうことは難しい。エレメントの屈指の使い手なだけに、彼と対等に戦うのならば吸血鬼王を連れて来なければならないだろう。
『チキショーーー!俺のプリンアラモードを返せーーーーー!』
プリンアラモードが食べたい欲求に勝てず、ルーベまでの同行を見送ったアロイジウスの地団駄によって、大きな地震がカーンの街を襲った。そのせいで、せっかく作ったプリンアラモードが五つほどテーブルから落下したらしい。
プリンアラモードを落としたことへの怒りが落ち着いた時に、何故かアロイジウスの脳裏に先生の姿が浮かんだのだが、
「きっと、気のせいだな・・・」
と、断言して、粛々と宿舎への道を帰り始めたのだった。
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