5. 格の違い
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なんで・・なんで・・なんで西山先生にあんな力があるんだよ!ただの地方公務員、ただの国語の教師だったはずの西山先生が!格闘技を極めたわけでもなく、不良の中学生相手に戦ったこともない西山先生が、なんで、あんなに強くなっているんだよ!
『それはあいつがズルをしたからさ』
西山先生がズル?どんなズルをしたらあんな風になれるんだよ?
『あいつはあんたを騙して神の力を手に入れた、騙されたあんたが『俺はBランクだー!』なんてはしゃいでいる姿を見て、なんて滑稽なんだろうと笑っているんだよ』
はあ?Bランクって凄いだろ?俺はルーベ周辺の魔獣を倒してあっという間にBランクへ昇格した男だぞ?
『あははっはは、ああ、おかしい、だからあいつにバカにされるんだよ』
何を言っている?何で西山先生が馬鹿にするんだよ!俺の方が体も鍛えているし!俺の方が強いはず!
『肩に大穴開けられてまだ言うか。あいつはね、冒険者ランクSランクすらも越えた絶界級になろうとしている男なんだよ。まだ絶界じゃないが、査問のために『この人』が付いている。さすが水の国、囲い込みが早いったらないよ』
絶界級?なんだよそれ?言葉の響き自体が意味わかんないって!
『ほら、悔しくなっている、ズルされて悔しいんだ。そりゃ悔しいよねえ、あの力は本来、お前の物だったんだからさ』
俺の物?
『ああ、だからさ、あいつからあの力を取り返すために協力してやろうじゃないか』
協力?奪い返すための協力をしてくれるのか?
『ああ、いいよ。お前に協力をしてやろう』
阪口翔平の心臓に幾つもの楔が打ち込まれ、燃えるような力が全身から溢れ出す。
高級カジノは宿泊施設も完備されているため、客室へと運び込まれることとなった翔平は、清潔なベッドに寝かしつけられていたのだが、彼の胸骨が外側へと割れ出し、開いた穴から血が溢れて、純白のシーツを染め上げていった。
「うわあああああああああ!」
激しい痛みと燃えるような力、飛び散る肉片を撒き散らしながら翔平の胸の穴から飛び出して来たのが女の頭で、
「ぎゃあああああああ!助けてくれーーーーー!」
翔平は絶叫を繰り返した。
自分の骨という骨が肉を突き破って外へ露出する様は狂気そのもので、力を求めるとは言ったけれど、そうじゃない、そうじゃないと、心が悲鳴をあげ続けている。
すると、大きな音を立てて寝室の扉が開き、室内を囲むようにして光が広がっていった。
「結界は充分に施しておいたのネ!」
まず、最初に部屋へと入ってきた狐の獣人がそう言うと、その後ろから白髪の女性が入って来た途端、
『ヒィイイイイイイイッ』
翔平の胸の中から飛び出してきた女の頭が悲鳴を上げる。
その悲鳴を聞き止めた様子の白髪の貴婦人は、血まみれの翔平の方を見て眉を顰め、
「あら!あら!あら!あら!私の不在の間に、勝手に入り込んで悪さをしていたのはカチェリーナちゃんだったのネ〜」
自分の頬に片手を当てながら微笑を浮かべる。
「カチェリーナは本来、カーンに向かって街を滅ぼす予定でいたんですけど、先生と同種族を完膚なきまでにやっつける為に、単独行動に出たということでしょうね」
白髪の貴婦人の後ろからやってきた少年が翔平の近くまでやってくると、漆黒のロープのような物を空中に出現させて、翔平と化け物ともども、ベッドの上にがんじがらめに縛り付けていく。
「えーっと、カーンの街を滅ぼすってなんなんですかね?」
一番最後に部屋へと入って来たのが西山先生で、その隣にいた大きな熊の獣人がもこもこした口を動かしながら答えている。
「吸血鬼王の復讐のために、吸血鬼卿たちがカーンの街に向かっているバウ」
「吸血鬼卿たち?吸血鬼王の復讐?」
「アロイジウスが残っているから大丈夫ネ〜」
狐が振り返って説明すると、西山先生が怪訝な表情を浮かべている。
「アロイジウスさんは、完成間際のプリンアラモードが食べたくって、僕らの同行を断ったと思うんですけど?」
プリンアラモードだって?
「プリンアラモードはプリン・ア・ラ・モードバウ。カーンの街では異世界食堂『三年二組』が連日満員御礼状態で、水の国ブルージュの食文化を塗り替えているバウ。デザート班が最近、丹精込めて開発しているのがプリンアラモードバウ」
クマが翔平の疑問に答えるように説明した。
「ああ〜ああ、やっぱり僕もプリンアラモード待ちでカーンに待機していれば良かったなー。なんで僕が試されるために、戦ったり、戦ったり、戦ったりしなければならないのかなぁ〜」
「だって先生、レベル上げたいな〜って言っていたネ」
「言ってない、言ってない」
「転移初日にアンギーユ(電気ウナギ百万ボルト)ギャング団をぶち倒し、三日目にはゴブリン千人斬りをしてゴブリンの直線襲撃を阻止し、英雄王と吸血鬼卿を倒した先生だもの、最近大物相手に出来なくてつまんネ〜って言っていたよネ〜」
「言ってない、言ってない」
「先生、我々は直接、先生の戦いを見たことがなかったから実際に戦うところを見たかったバウ。今回、仕掛けをしていたのは謝るバウ。だけど、先生の吸引力がどの程度かはまだ未知数バウ。ちょうど都合が良いことに吸血鬼卿が一匹、先生の同僚に取り憑いているバウから、是非とも吸引処置をして欲しいバウ」
「えーーーーー!」
つくづく嫌そうな顔をした西山先生は、最後の方では、
「せっかくエリクサーまで費やして救ったのに、ここで救わなかったら、何のためにエリクサーを与えたバウか?」
というクマの説得により、ようやっとやる気になったらしい。あれ?俺は西山先生にまた助けてもらうことになるのか?
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