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3. 憎いあんちきしょう

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

「先生!ストップ!ストップバウ!この吸血鬼を殺したらマズイバウ!」

「やめてネ!ストップネ!」

「マズイバウって、この吸血鬼は悪い奴なんでしょう?」

「違う違う違うネ!こっちの仲間として鞍替えしてくれる、親切な吸血鬼なのネ!」

「えええええ?それ本当なんですかぁ?」


 いつの間にか僕の周りに集まって、必死に止めに入る二人は怪我をした様子もなく、真っ黒な消し炭状態にもなっていなかった。


 バウさんがふわふわの指と長い爪を駆使してパチンと音を鳴らすと、瓦礫の山だった周囲の景色が変化する。確かに高級カジノは壊れたままなんだけど、周りの建物は被害を受けた様子もなく、子供たちも楽しそうに笑って遊んでいた。


 瓦礫を喰らって倒れたお母さんも、泣き叫んでいた子供も、慌てたように立ち上がって、

「私たちは大丈夫ですー!」

「ママも元気だよーー!」

と、こちらに向かって手を振っている。


「先生、怪我をしていた親子は仕込みなのネ。先生の本気を見たくてかましてみただけなのネ」

「なんですってーーー!!」


 僕が神の檻を消し去ると、少年の吸血鬼はぐったりした様子で倒れ込んでしまった。

「まずいバウ!魔力が足りなくなっているバウ!」


「バウ吉!先生の背負っているリュックからマジックポーションを出して飲ませなさいネ!でないと死んでしまうネ!」

「先生!リュック!背負っているリュックを貸してバウ!死んだら本当にまずいバウ!」

「えええええ!」


 僕のリュックの中にはジャメルとマチューが入れた回復薬が入れっぱなしになっている。その中からマジックポーションとやらを取り出したバウさんが、吸血鬼の少年の口を無理やりこじ開けさせながら飲み込ませている。


「先生!そこにあるエリクサーを飲ませれば先生のご友人は助けられるネ!飲ませるなら早く飲ませるネ!」

「ええええ!エリクサーをですかぁあああ!」


 確かにリュックの中には一本だけエリクサーが入っていた、秘伝のエリクサーを一本だけエルフどもは入れてくれていたらしい。


「僕、別に阪口先生と仲良くもなければ、いっつも反抗的な態度ばっかり取られていて!さっきだって刃先がキレッキレの剣で斬りかかって来たのは確かな事で!」

「紫斑らを放置したら、ゾンビ一択なのネ、先生がそれでいいって言うのなら何も言わないのネ」


「えええええ!」


 僕の頭の中で、校長先生、教頭先生、教育委員会、保護者各位が回り出す。

「「「先生は同僚を見捨てるんですか!」」」

 えええーーーー!勝手に怒って、勝手に襲いかかってきて、自分は悪くはないとかクソみたいなことを宣って、しかも、同僚である僕を殺しにかかって来たのは阪口先生ですよねぇ?ええ?わかりましたよ・・わかりましたよ!


「バウさん、このエリクサーをあのバカに飲ませてあげてください」


 僕は多分泣いていたと思う、悔しすぎて涙が・・血の涙が出ていたと思うもの。だってエリクサーって一本百万ミウするらしいんだよ?人によっては一本一億ミウでも払うって聞いたもの。


「先生、本当に飲ませていいバウね?」


 そこについてはバウさんも気が付いているようで、気遣うように問いかけてきた。

「失神している人にバウさん、飲ませるのがうまいじゃないですか?だからバウさん!僕の代わりにお願いします!」


 ジャメルみたいに口移しでだけは嫌だ!

 チキショーーー!阪口先生めっ!意識を取り戻したらどうしてくれようか!

 吸血鬼野郎も!絶対にタダでは許さないからなーーー!


「まあ、まあ、先生、情けは人の為ならずネ、人に与えた情けはいつかは巡り巡りって先生の元に戻ってくるのネ」


 狐の獣人である『この人』さんが、クルンと指先を潰れたカジノの瓦礫の山に向かって回すと、まるで時間を巻き戻しているように、あっという間に崩れ果てた高級カジノが元の姿形に戻ってしまった。


 お椀状の無数の屋根はエメラルドに輝き、白漆喰の壁が太陽の光を浴びてキラキラ光っているように見える。


「このカジノは復元魔法がかけられているのネ、コツさえ掴めば先生でもやれるようになるのネ」

と、驚いて硬直する僕にこの人さんが声をかけると、

「カジノでは怒りに任せて建物を倒壊させる奴がたまに居るバウ、カジノの建物は大概、こうやって復元魔法がかけられているバウ」

と、バウさんが坂口先生にエリクサーを飲ませながら言い出した。


 倒壊したカジノの建物が元に戻ると、表の大門とも言うべき豪奢な扉が左右に押し開かれ、白髪の髪を綺麗に結い上げた貴婦人が多くの美女を従えながらこちらの方へとやってきた。


 そうして僕やこの人さん、バウさんの前で恭しく辞儀をすると、

「我々の不手際ですわ!本当に申し訳ありません!」

と言って、吸血鬼の少年の頭を踏みつけながら平謝りに謝り出したのだった。


 この白髪の夫人、サリーのような衣服を身に纏っている方は高級カジノのオーナーであるハサウェイさんで、用心棒をまとめ上げていたハムダン(大トカゲの獣人)の非礼を侘びながらも、何故、容赦無く殺してしまったのだと怒りを滲ませながら『この人』さんを睨みつけたのだった。


ここまでお読み頂きありがとうございます!

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