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橋本由里子の場合

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 修学旅行実行委員の橋本由里子は、非常に困惑していた。

 バスがいつの間にか草原に移動していて、異世界へ転移をしてしまったのだから困惑しないわけがない。


 幸いにも異世界の街は三十人の中学生を受け入れることが出来る状態となっていた為、次の日から班として活動を開始する事となったのだが、宿舎に到着したその日の夜、みんなが部屋に戻った後に、二人の修学旅行実行委員は先生から呼び出される事になったのだ。


「悪いんだけど、修学旅行実行委員には、問題となる班の班長になってもらうから、何かトラブルが起こったら即座に先生に教えて欲しいんだ」


 七歳の弟が居る由里子は子供班に配属されると思っていたのだが、何故か清掃班に回される事になったのだ。その理由が『修学旅行実行委員』だから。


 清掃班の班長となった由里子は、ブランシェさんの指示の元、宿泊所周囲の草むしり、ゴミ捨て、道路整備を始める事となったのだが、

「嫌だ!僕は草むしりなんかやりたくない!」

と、色白でぽっちゃりの久賀が文句を言い出した時には驚いた。


 清掃班は比較的おとなしい系男女で揃えられている為、

「俺だって掃除なんかしたくないよ〜」

「だけど、冒険班なんか入って危険な目に遭いたくないし」

「料理もできないし、子供用のおもちゃを縫うのも出来ないし」

「結果、掃除しか出来ないって感じだから仕方ないよね〜」

と、みんなが諦め切った様子で言い出したけれど、

「僕はヤダ!僕はヤダ!だったら死んだ方がいい!死にたい!」

と言って、久賀俊幸は腰に下げた鉈を自分の首に向けてブルブル震え始めたのだ。


 そこでバレー部の大野わたるが飛びかかって鉈を取り上げたから、怪我をするような事にはならなかったけれど、

「「「久賀・・マジでやべえ奴なんじゃないのか!」」」

と、班員全員の意見として一致する事になったのだった。


 中学生になってからというもの、

「友達に冷たくされた時には・・本当に死にたいと思ったんだよね・・・」

(うつ)が入った友達の話を一度や二度は聞いたことがある由里子だったけれど、

「死にたい・・死にたい・・死んでやる〜!」

と叫んで暴れ出すやつは見た事がない。


 やたらと死にたがる久我にはビニール袋を渡してゴミを集める仕事を任せる(一番楽な仕事と言える)事にして、ようやっと作業に加わるようにしたものの・・


「みんなに迷惑をかける僕なんて居ない方がいいんだ!死んだ方がいい・・死んだでやるーーー!」

と言い出す不安定な久賀を捕まえて、

「久我に死んで欲しいなんて誰も思っていないよ!みんな、久我には生きていて欲しいよ!」

と言って慰める男子は偉すぎる。


「由里子・・私、ちょっと久賀にはついていけないわ」

と、同じ清掃班の日下美帆が言い出した時には、由里子は大きく頷いた。


 そうして初日から西山先生に相談をする事になった由里子は、

「ああ〜やっぱりね〜、久賀のお母さんも久賀がすぐに死にたがるっていう事で、学校に相談に来られていたりしたんだよ〜」

と、言われる事になったのだ。


 両親が共働きだった久我は、小学六年生の時から不登校となり、

「死んでやる〜!」

と大騒ぎしたところ、両親がつきっきりでサポートしてくれるようになった事から、死んでやると騒げば両親に構って貰えると勘違いし、結果、『死んでやる詐欺』を発症することになったらしい。


 最近では落ち着いていたのだが、今回のような急な環境の変化から『死んでやる詐欺』が発症するだろうと思っていた所、早速発症したようだと西山先生は言い出した。


「いや・・でも・・本当に鉈の刃先を自分の首に当てて、マジで死んじゃうのかと思ったんですけど?」

「それが久賀クオリティなんだよ〜」


 『久賀クオリティ』それは実際に凶器を持ち出す事であり、家でも包丁やら草刈り鎌を持ち出して、何度も『死んでやる詐欺』をかましていたらしい。


死ぬと言いながら今のところ死んでいないので『詐欺行為』だと思うのだが、本当に死んだら困るから気をつけてくれと先生は言う。


「大野、あいつはああ見えてハートが熱い奴だから、久賀の自傷行為を阻止してくれると先生は思っている」


 大野わたるは三浦賢人と仲が良いので、一緒に冒険班に配属されるものと思っていたけれど、そういった事情で清掃班なんかに配属されてしまったわけだ。


 冒険班四人が厨房班の班長である石原芽美に洗濯物を押し付けた事により、罰金刑を命じられることになった日の夕食の席で、

「僕だってこんな生活したくないんだよ!だけど、先生がここに居た方がいいっていうから居るけど、このまま家に帰れないんだったら死んだほうがマシだよ!死ぬ!今すぐ死んでやる!」

ぽっちゃりとした久我俊幸は、小さなナイフを丸々とした手で握り込むと、自分の喉を突き刺そうと試みる。


「「「やめろよ!久我!」」」

「「「久我を止めろ!」」」


 清掃班の男子達が飛びかかり、ナイフを取り上げる。

同じく清掃班であり、修学旅行実行委員の橋本由里子は大きなため息をつきながら、日下美帆と共に、特に驚いた様子も見せずに暴れる久我を眺めている。


「はーー〜」


 ため息をつきながら食事を食べ終わった西山先生が立ち上がると、

「久我、僕は生徒の安全の確保を、校長先生、教頭先生、教育委員会、そして保護者の方々から頼まれているわけだよ。今みたいに君が騒いで自分の命を危機に陥らせるような事をするのなら、安全のために隔離処置を取らせてもらうよ」

と、言い出した。先生は久我を連れて外に行くと、夜中まで帰って来なかったという。


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