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4. 嘘でしょう?

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 カーンの異邦人用の宿泊所に到着した日の夜に、さっさと班決めをしてしまった僕は、修学旅行実行委員である吉沢健と橋本由里子を呼び出した。


「悪いんだけど、修学旅行実行委員には、問題となる班の班長になってもらうから、何かトラブルが起こったら即座に先生に教えて欲しいんだ」


 率先して動いてくれる二人には、問題がある班を率いてもらう事にしたわけだ。


「冒険班も清掃班も個性豊かなメンバーで取り揃えているから、色々と揉める事も出てくるかもしれない。問題があれば先生はもちろんの事、ブランシェさんや息子さんもサポートしてくれるって言ってくれているから、声をかけてくれると有難い」


 うちのクラスの生徒たちは、何かの目標に向かって一丸となって進んでいける力があるとは思うんだけど、ある一定数の生徒は強く反抗するだろうし、三年二組という群れから飛び出して行こうとする奴らも出て来るだろう。

 そういった奴らにはある程度対策を打つとして、街の重役ともっと親密な関係を取らなくちゃならないわけで・・・


 実行委員の吉沢や高橋が部屋に戻った後も、夜更けまでぼんやりと食堂で考え事をしていたら、

「先生!先生!ちょっと困った事になったので出てきてくれませんかね!」

と、ブランシェさんの息子さんであるカジミールさんが声を掛けてきたのだった。



 カジミールさんは42歳、馬車を出して生徒たちを迎えに行ってくれた人となるのだが、干し草なんかを運ぶので使う巨大なサイレージフォークを片手に、殺気だった声をあげたのだ。


「異邦人が現れたのを嗅ぎつけて、どうやら余所者が潜り込んだようなんです」


 ブランシェさんの一族は狼の獣人なんだそうで、とってもとっても鼻が利く。


「この生臭い匂いは南のギャング団が紛れ込んだみたいだな」

「はあ?南のギャング団ですか?」


「カーンはリスカム山脈の麓に位置している事から湖と森に囲まれている土地柄になるんですけど、南方へ行けば一気に気温が上昇し、巨大な密林が広がり始めるんですよ。奴らはそこに住み暮らす魚人と呼ばれる種族で、異邦人を剥製や奴隷として売り出しているわけなんです」


「えーっと・・」

「増援を呼んだんですけど、奴らの進んでくるスピードが早すぎる。ブランシェ母さんの希望に沿って異邦人の子供たちを守ってやりたいんですけど、守り切る自信が正直に言ってないんです」

「ええええっと?」


「俺たち獣人も、かつてはその多くが連れて行かれてしまったと話には聞いているし、今回は目新しい黒髪の人族という事で、標本でも奴隷でも、高値で売れると思うんです」


「いやいやいや、生徒は標本候補でも奴隷候補でもないんですよ?困る!困る!困るんですけど〜!」


 僕の脳裏には校長、教頭、教育委員会、保護者各位の姿が思い浮かぶ。


「先生、先生の世界では破壊魔法とか、逆行魔法とか、そういうものとかないんですかね?」

「はあ?」


「いやね、最近、雷の国に現れた異邦人の集団が、自分達を捕獲しに来た千人部隊を皆殺しにしたっていう噂を聞いたんでね」


「物騒!皆殺しとか物騒すぎる!」


「ここはエレメント、イメージの世界なんですよ。先生も応援が駆けつけるまで相手の攻撃を防ぐことが出来る、物騒な魔法とか出来ないもんですかね?」


「無理でしょ!無理!無理!無理!無理!」


 ブランシェさんの一族としては、家族が死ぬような事があっては困る事から、責任者として立ち会いはカジミールさん一人だけとなるらしい。


 とりあえず応援要請を送っているから、時を待たずして誰かしらが駆けつけるとは思うけれど、そこまで時間稼ぎが出来ないものかと尋ねて来たようだ。


「生徒たちが剥製や奴隷候補っていうのも意味がわからないけど、生徒達を守るためにここで僕が何かしなければならないんですか?」


「敵を迎え討ったとしても俺がやれるのはせいぜいが三人とか四人まで、匂いで判断するに敵は三十人近く居るし、もしかしたら電気鰻の野郎が来ているのかもしれない」


「電気鰻の野郎ってなんなんですか?」

「体の中に電器官を持つ奴で、十万ボルトの発電攻撃しかけてくるから水属性と相性が物凄く悪いんですよ」


 え?なに?なんなの?十万ボルトってピ○チュウ的なアレがやってくるって事?


 異邦人を受け入れる宿舎は、街の中心地からは少し外れた場所にあるものの、周囲には白漆喰の家が建ち並んでいるし、花壇に植えられた花々が綺麗に咲き誇っている、田舎そのものの美しい風景が広がっていたわけだ。


 その日は満月で、夜空に浮かぶ三つの月が地上を照らしつけていたわけだけど、その月明かりに浮かぶ人影は異様な形にも見えるし、踏み荒らされる花壇の花々がジュウジュウ音を立てながら焼け焦げた匂いを発している事にも気がついた。


「ちなみに、僕らの前に来たっていうタコ型の異邦人は誘拐されたりしたんですかね?」

 暗がりに目を凝らしながら問いかけると、カジミールさんは答えた。

「あの時は護衛を揃えていたんですけど、3匹ほど連れて行かれた感じです」

「なんで僕らの時には護衛がいないんですか?」

「明日から来るはずだったんですけど」

「明日?」


 それじゃあ、護衛が配属される前に攫っちまえって感じでやって来たって事になるのかな?


ここまでお読み頂きありがとうございます!

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