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7マルセル

ローズさんの持ってきた新しい魔力回復薬に関する資料を読むと、今のところ被験者の数はまだ20名ほど。

女性が室長だからなのか、被験者も女性に偏っている。

男性はほんの数人だ。


彼らの服用量と、時間経過による魔力の回復量、そして副作用が発生する時間と症状などなど、詳細まで記載されているものだったので、まあ、体に害はないと言っていたことに嘘は無さそうだ。

使われている材料と製作手順をみても、大丈夫なように思える。


ダンジョンで飲んだやつは、即効性があり、まとまった量の魔力が回復する代わりに、まるで魔力の先食いをしたかのように、しばらく魔力の自然回復がなされない、というものだった。


副作用としては、数時間から数日の魔力が自然回復しない間、頭痛や強い吐き気、だるさに悩まされる。

まあ私の場合は吐き気とだるさが強く出たが。


今回の新しい魔力回復薬は、この世界に存在する魔素…魔力の元のようなもので、ありとあらゆるものに含まれている…その魔素を取り込んで回復させよう、という考え方で作られている。


外部から取り込むので、確かに魔力の自然回復が止まる、という今までの欠点は無くなっている。

その代り、魔力の回復に即効性がなく、時間がかかるようだ。

そして、その回復にかかる時間も個人差がある。

今のところ把握されている主な副作用は、発熱、手の震え、頭痛。


発熱は全員に見られているものの微熱ということなので、もし戦闘中でも無視できる範囲か。


でも魔力の回復にこんなに時間がかかっていては、戦闘中では使い物にならない…と思ってから、戦闘開始時に飲めばいいのか、と気が付く。


副作用に苦しんだものの、あの即効タイプの魔力回復薬のお陰でなんとか生き延びることが出来たのは紛れもない事実であるので…やっぱり実験台になってやるか、という気になった。


実際に飲むのは、結果の測定などで長時間拘束されることになるわけだから、明日の午後でどうか、と返答をした。


私が被験者になってもいい、という返事にもなっていたので、大喜びされて、その時間に実験することになった。



次の日の午後、約束の時間に実験室に赴いた。


まずは、ローズさんの研究室で用意してくれた、魔道具に使う魔石に、片っ端から魔力を流し込んでいく。


魔力回復薬の効果を見るのだから、まずは魔力を消費して、減らさなくてはいけない。

だからといって、得意の魔法をここでぶっ放すわけにもいかないので、こうして魔石に魔力を補充するという形で減らしていくのだ。


その魔石のいくつかはこの実験の計測器で使うので、一石二鳥でもある。


「わーさすがマルセルちゃんね、これでもまだ随分と魔力が残ってるのね」


「まあ、私を上回る魔力持ちは世の中にはまだまだいるが」


「そんなのヴィリエ一族とか規格外の人達でしょうが。あなたも規格外のうちの一人よ」


「一般的にはそうなるのかもしれんが…」


「マルセルちゃんの魔力を空っぽにするまで待ってられないし、この試作品で回復する予想量程度は消費できたから、早速飲んでみてもらっていい?」


いかにも試作品というシンプルな瓶に詰められたそれは、薄紫色をしていて、特に匂いもしない。

計測器が自分に向けられて準備が整っているのを確認したところで、一気にあおった。


「うっ、まずい!」


ダンジョンで飲んだやつは飲むと酒を飲んだような感覚があり、でも味というのをあまり感じなかった。

でもこれは、はっきりと苦く、その上ほんのりと甘みがあるのだ。


「そうなのよー、味を調えるところまではいけてないのよね。でも、飲めないほどではないでしょ?」


「どうだろう。あらかじめ知ってしまうと、躊躇する味だな。苦いだけの方がマシな気がするが」


「まあ、そっちの改良も乞うご期待ということで。あら、早速回復し始めたわよ。どうやら回復が早いタイプみたいね」


「私はただ座っている以外は何をしてもいけないのだな?」


「悪いけどそうしてもらえる?条件を一緒にしたいから」


周りをローズさんの部下の研究員たちと計測機器に取り囲まれながら、椅子に座って動くなというのだから、自分の研究のための資料を読むことにする。


暫くすると、熱っぽくなってきた。


「ああ、どうやら私も御多分に漏れず、発熱するようだな」


「そうね、でも、ちょっと高め…?大丈夫?気分悪くない?」


「今のところは大丈夫だ」


熱っぽくなるにつれて、魔力がじわじわと回復している実感がある。

魔力枯渇に近いときに食事をとって、だんだんと魔力が回復するときの感覚に近いが、それよりは断然回復が早い。


このペースなら、戦闘開始で飲めば、補助魔法を仲間に一通り使って、それから私も攻撃、の頃には最初の頃に消費した分くらいは回復していて…。


まあ、実用に耐えるかもしれない。


そんなことを考えているうちに、読んでいた資料に集中してしまっていた。


急に周りが騒がしくなり、資料から顔を上げると、研究員たちがバタバタしている。


「そんな…」


「こんなことは初めてです」


「どうしたら…魔石、まだありましたっけ」


明らかに動揺している様子なので不安になる。

と同時に…自分の魔力の様子がおかしいのに気が付いた。


自分の魔力がいっぱいまで回復しているという感覚になっているのに、まだ増えているようなのだ。


「マルセルちゃん、大変なの、なんでだか予想量を凌駕して魔力が増え続けているのよ。このままでは魔力が多くなりすぎて魔力暴走を起こしてしまうわ!とりあえずこの魔石に魔力を注いでくれる?」


言葉の途中で、すぐに目の前に差し出された魔石に魔力を注いだのだけど、消費するより増える方が多い。


「ダメだ!これでは間に合わない!みんな一旦部屋から出てくれ!魔力暴走の対応ができる人を連れてきてくれないか」


まだ制御できるうちに、と、自分の周りに多重に結界を張り始めた私を見て、皆、意味が分かったらしい。

躊躇せずにすぐに部屋から出て行ってくれた。


自分の周囲に耐魔法結界を張って、ああ、カミーユ君の結界には程遠いな、と思う。

これでは、私の得意の雷魔法が魔力暴走で漏れ出てしまったら、一回で結界が壊れてしまう。


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