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4マルセル

マルセル視点に変わっています。

久しぶりに、かなりハードな極秘の特別任務を、国からの依頼で請け負っていたので、職場に戻ってくるのは3カ月以上ぶりだ。


特別任務そのものは3カ月かからずに終わったのに、今回はあまりに色々あった任務だったので、報告やら何やらの後処理に半月ほどもかかってしまったのだ。


それで、その報告にかかった部分まで含めて特別任務という扱いになって、それからようやく休暇がもらえた。


仕事に復帰前の貴重な数日の休暇を、久しぶりに実家の伯爵領に帰ってゴロゴロしていたら、両親にすごくねちねちと嫌味を言われた。


「お前ももう33歳なのよ。私がその歳には、あなたが10歳だったわよ!」

「こんなことならリンダを嫁に出さずに、あの子に家を継がせることにすればよかったか…」

「念のために聞くけど。あなた、男色なのかしら?」

「私が元気なうちは、領地は私が見てやれるが、いつまでも生きているわけじゃないんだぞ」


まあ、こんなのが代表例だ。

男色についてだけは明確に否定できたけど、それ以外は言われたからってどうにもならない。


そもそも、極秘任務だったから両親にも言えないけど、今回は何度も命の危機を感じるほどの任務だった。


途中で、このままではダメだ、と、新しいメンバーを入れてからは、嘘のように順調に行ったけど、もしあの子をメンバーに加えていなければ、恐らく両親はこんなことを言うことすらできなかったはずだ。


遺体も回収できるかどうかというダンジョンの奥底にいる息子を思って、泣いていた未来もあったのだ。

…と教えてやりたい位だ。


まあ、それもできないのだが。


大変な仕事を終えてきたのだから、少しくらいゆっくりさせてくれよ、と内心思っても、どんな仕事だったのかを言うことができないために、聞き流す対応になる。

嘘が下手なので、余計なことを言うと、辻褄が合わなくなってしまうのだ。


そんな、休めたような休めなかったような実家での休暇も終えて、王都の自分の家に戻り、今日は久しぶりに職場に出勤したところだ。


魔術師の塔では、同じ研究室内で誰かと共同研究をしていることが多いのだけど、私のように塔に出勤しないことも多い相手とは共同研究は難しいため、私は基本的に一人で研究に取り組んでいる。


それでもたまには同僚の力も借りるし、同じように私が力を貸すこともある。


今日は久しぶりに戻ってきたあいさつ回りと、いなかった間の情報収集で一日を終える予定なので、あえて廊下で出勤してきた同僚達に顔をさらしている。


こうしておけば、私が戻ってくるのを待っていたような連中は、午後にでも私の研究室にやってくる。

午前中は私が目上にあいさつ回りに行くことを、皆分かっているからだ。


今日は直属の上役たちに挨拶をし終えたら、第2研究科のヴィリエ氏を捕まえたいと思っている。


今回の極秘任務ではダンジョンに入っていたのだけど、実はそのダンジョンの中で、伝説と言われていた蘇生薬を手に入れたのだ。


ダンジョンの中はダンジョンの外とはことわりが異なっていて、ダンジョンの中でだけは死んだとしても蘇生させることができる。

とはいえ、蘇生させるには蘇生術を使うことができる数少ない者達に頼らざるを得ず、その蘇生術を使うことができる者が死んだ場合は手詰まりだった。


でも、蘇生薬の研究が進めば、冒険者の死亡率はぐっと下がることになる。

まあ…材料が何かも今は見当もつかないし、高価なものにはなるだろうが…。


ヴィリエ氏にはその蘇生薬の件で相談に乗ってもらうつもりだ。


私は魔法薬の研究は専門外だが、一緒にダンジョンに入っていたオルガがヴィリエ氏と同じ第2研究科の所属で、オルガは休暇が明け次第、今まで取り組んでいた研究は棚上げして、蘇生薬の研究に取り組む、と鼻息が荒かった。


オルガは子どもがいるので、母親と子どもの時間は必要、ということで、ダンジョンから出た後の休暇を少し長めに与えられていて、まだしばらくは休暇中だ。


だから、オルガが復帰し次第ヴィリエ氏に話を持ち掛けるだろうから、私が先に少し話をしておいてやろうと思っているのだ。


ただ、ヴィリエ氏はこの世界で最高峰の魔術師の一人であるので…時間をとってもらえるかどうか…。



就業時間となり、『極秘任務だったので』の一言で何をしていたかを曖昧にして、私は予定通りあいさつ回りをこなした。


最後に、今回の特別任務で、魔術師の塔での担当者だったミルグさんのところにも顔を出した。

数少ない、『邪神の神殿に到るトラップダンジョンに挑んでいた』という極秘の特別任務の内容を詳しく知っている人だ。


「今日から通常勤務に戻ります。何かあれば第3にいますから声をかけてください」


「ああ、休暇が随分と短くてすまないね。ここでさらに長く休まれると、塔にいない期間がさすがに長すぎるということでね…。後日、オルガと君には改めて長期休暇を出すようにするから」


「ああ、それなら、カミーユ君の結婚式の辺りでお願いしますよ。来年の春だとかって話でしたよね?」


「もっと早い時期にそれとは別にとってくれて構わないんだが。あと陛下からの褒賞の件もあるから…」


「あー面倒くさいですね…。陛下も希望なんて聞いてくれなくていいのに」


「カミーユ君は自分の領地の何かの権利を貰うことにする、とか聞いたが」


「あの子は若いのにしっかりしてますよね。まあ、とにかく、今日から復帰ってことの報告だけだったので。では失礼しますよ」


事務方のミルグさんの仕事の邪魔をしてはいけないので、早々に切り上げる。


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