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21マルセル

後から考えれば…あからさまにローズさんの手の上で転がされたと分かるのだが…。

あのタイミングでなければ、手遅れだったのだから、偶然とはいえ感謝すべきだろう。


そもそもあの日あのときの私は、まだ自覚がなかった。

しかし、あの日のうちに手を打ったから、間に合ったのだ。


あの日、私はミリアンが真っ赤になって硬直しているのを放置して、実家に手紙鳥を飛ばし、すぐさまミリアンの実家に婚姻の打診をする書類を送るように、と頼んだ。


私の実家では、私がミリアンの実家を探るように頼んだあたりで既に何かを察していたらしく、なんと婚姻の書類などの下準備がされていて、その日の明るいうちに我が家からの正式な使者が、ミリアンの実家を訪ねることができた。


ミリアンの両親は愚かではあっても悪い人たちではなかったようだ。


資金援助をしてくれる上に、冒険者としてそれなりに名もあり、さらに伯爵家という上位貴族の嫡男である私からの求婚であることに驚きつつも、我が家の当主からの正式な婚姻の打診に、その場ですぐに頷いたらしい。


ミリアンの婚姻の相手候補が子爵でしかなかったことも幸いだった。


まあ、ミリアンの実家を陥れたらしい黒幕とかはおいおい調べて、思い知らせてやるつもりだが、今はまだそれはいい。



電光石火でミリアンとの婚約をした私は、ものすごく驚かれた。


けれど、あの魔力暴走のときに手助けをした娘だった、と知れば、出会った切っ掛けはあれか、と、なんとなく理解もされたようだった。

まあ、それにしても短期間過ぎないか、という声は聞こえたけど。


でも、私としては、同期でもあり、5年も前からの知り合いだという認識だったのだけど、ミリアン含めて周囲はそうは思っていないらしい。

確かに名前は知らなかったが…。


ミリアンには結婚後も塔での研究は続けさせるつもりだ。

だから結婚した後も大きく生活が変化することはないはず。


それよりなにより、まずはこの珍しい生き物を私に慣れさせなければならない。


ミリアンの上司のルーエ室長に頼んで、毎日昼食は私のところに来させるように手配もしたのだけど…。

数日たつというのに、いまだに私がそばによると、真っ赤になって、がちがちになるのだ。


「いつになったら私に慣れるのだ?もう私はミリアンの婚約者だが?」


「無理、って最初に言ったじゃないですか!死んじゃいます、って!」


「そんなでは、後継ぎをもうけるときはどうするつもりだ」


「あ、あとつぎ…」


ぷしゅーっと音を立てそうな勢いで真っ赤になって、ミリアンは目を回した。


全く町娘たちならとっくに子どもの一人や二人はいるだろう年頃だというのに、ミリアンはどうなっているんだ。


ため息をつきつつ、そんなミリアンが面白くて可愛い、と思っている自分のことはちゃんと理解している。



あの時。

あの実験でおかしな副作用が出なかったら、私はミリアンの名前をいまだに知らなかったことだろう。

そして、気が付いたときには、いつの間にかミリアンは塔での仕事を辞めて、顔を見ることすらなくなり、いつしか記憶からも消えていたかもしれない。


そんなことを考えるだけで、今となってはぞっとするほどだ。


一緒に過ごす時間が長くなればなるほどに、どんどんミリアンへの愛しさが増していく気がする。



近い将来、ミリアンの嫁入り道具に自分の精密画と、自分の魔力が込められた魔石が封印された小瓶があることに気が付いて、ミリアンへの熱愛がさらに高まることは…今はまだ知らない。


おわり


最後までお読みいただいて有難うございます。

この二人の話は、ムーンライトノベルズ版ではもう少々続きがあります。

18歳以上の方で、ご興味ありましたら覗いてみてください。

今後も十月猫熊の作品を目にすることがありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。

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