表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/21

16ミリアン

ドキドキしながらダンジョンに足を踏み入れたら、髪の毛がぞわわっと逆立つような感覚があった。


話には聞いたことがあったけど…違う神様の管轄で、ダンジョンの中は、ダンジョンの外とはことわりが違う、というのを、肌で感じる。


入ってすぐに、隠蔽を見破る魔法を自分とローズ室長にかけ、それから魔力痕が見えるようになる術を展開して、魔力痕を探し始めたのだけど、入り口はもうたくさんの人が入った後だったので、ぐちゃぐちゃになって分からなくなってしまっていた。


ただ、幸いなのは、私は前回マルセルさんの魔力を辿った経験があるので、マルセルさんの魔力がどんなものかを知っているということだ。


「ローズ室長、このあたりはぐちゃぐちゃすぎてわかりません…」


「そうね、前回入った時とすでにマップが変わっちゃってるから、とりあえず歩くしかないわね」


ローズ室長が歩き出したので、そのあとについて歩く。

一階層は魔物がほとんど狩りつくされていると聞いているので、不安はあるけれどそんなに怖いとは感じない。


「マルセルさん、一人で大丈夫でしょうか…」


「ん?魔物にやられちゃうんじゃ、って心配してるの?」


「え?ローズ室長は心配じゃないのですか?」


「ふふふ、そうねえ、私は魔力暴走の心配はしてるけど」


「そうですよね!大丈夫だといいんですけど…そっちも、もちろんすごく心配です」


私は、マルセルさんが魔力暴走で苦しんでいるところに、魔物が襲い掛かっているところを想像して、想像しただけで涙がにじんでしまった。


「そんなに心配なのねえ」


「あの、…はい…」


「マルセルちゃんと私って幼なじみってやつになるんだけどね。マルセルちゃんの小さい頃の話、聞きたい?」


「きっ、聞きたいです!!!!」


「マルセルちゃんに興味あるのねえ」


「そ…ええと、その、色々活躍なさって有名な方ですし…あ、あと一応同期的な感じですし…」


私がしどろもどろになっていたら、ローズ室長が爆弾を落とした。


「ミリアンちゃんは、マルセルちゃんのこと、好きなの?」


「すっ!?」


私が真っ赤になって、うろたえて、返事もできずにいたら、何故か大笑いされてしまった。


「ごめんごめん。あんまり可愛いからつい…そっか、マルセルちゃんのこと好きなのねー」


「!!あ、あの、あの、マルセルさんには内緒にしてくださいね?私、遠くから見てるだけでいいのですから」


「分かったわよ、言われなくても言わないわ……って!すごい!もう階段見つけたわ!ミリアンちゃん、ダンジョンの運、凄く良いのかもよ」


「これ…この階段、降りればいいのですか…?」


ローズ室長の後ろにぴったりくっついて、階段を降りていくと、次の階層に出た。


「あ!ローズ室長!痕跡ありました!これ、マルセルさんの魔力です!」


「あー良かった。ちゃんと二階層に進めていたのね」


「あ。あそこで盛大に魔力を使っていますね。時間もあまり経ってないですね。多分魔物と戦ったんだと思います。わあー…すごーい、綺麗…」


マルセルさんが放った魔法の軌跡がそのまま残っているので、光で描かれた絵画みたいになっている。


「じゃあ、ようやくここからは辿っていけそうかしら?」


「はい、マルセルさん、早く見つけてあげないと。一人でダンジョンだなんて…どうなってることか…」


「ふふ。ね、マルセルちゃんのこと呼んでみたら?」


「え?」


「ここからそう遠くないところに居そうなんでしょ?」


「そんなことして大丈夫なんですか?」


「うんうん。いいから、呼んでみて。ミリアンちゃん、強運の持ち主みたいだもの」


そうして私はマルセルさんのことを精一杯の大声で呼んでみた。


数度呼びかけた結果、来たのは魔物だった。


一階層では魔物に出会わなかったから、人生で初めて見る魔物だ。

四つ足の頭のない獣のような魔物が、結構素早い動きで迫ってくる。


「ひいぃ!」


私は怖くて、膝が震えて、動けなかった。


緊張感が高まって、心臓がバクバクいう音が頭の中で鳴り響き、怖い!マルセルさん、助けて!とロッドを握りしめることしかできない。


魔物の爪が私を切り裂こうとしたのを、ローズ室長がはじき返して、火球をぶつけた。


魔物が焦げて痙攣しているので、やっつけたのかと思ったのに…。


もう一体魔物がいることに気が付いた直後、急に私の目の前でローズ室長がぐらり、と体を傾げ、私に倒れ掛かってきた。


倒れていくローズ室長の体を支えられるほどの力が無くて、ローズ室長が頭を打たないように、ゆっくりとローズ室長と一緒に私も座り込むことになってしまった。


「ローズ室長、大丈夫ですか?」


慌てて顔を覗き込むと、息はしているけど意識がない。


私一人で、あの魔物たちの相手をしなくてはならないようだ。

私はもちろん、戦闘の経験など、人生で一度もない。


恐ろしさのあまりに頭が真っ白になって、学院時代に習ったはずの、攻撃系の魔法の数々が、全く思い出せない。


情けないことに、ただ恐ろしさにガタガタと震えることしかできない。


さっきローズ室長に黒焦げにされた魔物にくっついていたぶよぶよした魔物が、さっきから盛んに魔法を使っているのが分かる。


そして、みるみるうちに焦げていた魔物が元気を取り戻して、また襲い掛かってきた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ