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戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三
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独鈷杵

丸太町を中心に本能寺、二条城、内裏の一部を焦土と化した業火は、ブルートの連れてきた雨雲の豪雨で鎮火することには成功した

八坂神社、下鴨神社、晴明神社等に集められていた

負傷者達は、天女の神聖魔法により治療を終えていた

日が暮れてから到着した 武田の騎馬隊により焼け跡の中を生存者を求めて必死に捜索を始めているが

ベヒーモスの襲来時、この範囲内に居た者の生存は、唯の一人も確認されていない

直接、業火に焼かれた者 荒れ狂う黒煙に巻かれ命を落とした者 その業火から逃れようと丸太町の東を南北に走る鴨川に身を投げた者

犠牲者の総数が把握されるのは、まだ先になるだろうが数万人 エヴァ達が居なければ死者数は10万人を超えていただろう

「こっちだ〜 誰か手を貸してくれ!!」鴨川を捜索していた 武田兵が助けを求め叫ぶ

戸板に乗せられ産衣に包まれた赤子が中洲の流木に引っかかり、今にも下流に流されかけている よく見なければ、家屋の残骸だと見落としていただろう

迷うことなく三条大橋から飛び込み 戸板から赤子を抱き上げる 本多忠勝

周囲から歓声が上がる 殺伐とした街で数少ない希望の光が差した瞬間である



晴明神社で治療を終えたエヴァが、残り少なくなった魔力を回復する為に神主に休息のできる場所をと、二の鳥居を潜った左手にある詰め所に案内され お茶を頂いている

「あの天女様、私は、晴明神社の神主をしております

安倍清親と申します

ここに居た500名にも上る負傷者を治療して頂いたこと それを我が祖先、安倍晴明の本宅であったここ晴明神社で行使された事に、感謝を申し上げます」

人当たりの良さそうな神主がお茶のおかわりを注ぎながら 感謝を述べる

「安倍晴明。。。あっ失礼しました ここは、この国で最高の陰陽師と名高い

安倍晴明様の生家だったのですね 治療に夢中で失念しておりました」

京菓子を頬張りながら、慌てて背筋を伸ばす エヴァ

「もう500年以上も昔の話です お恥ずかしい話ですが 陰陽師の技も今となっては

継承する者も居らず 頼って来られた市中の皆さんの力になる事も出来ませんでした

我が祖先、安倍晴明に変わりお礼申し上げます」

「はい 有り難いお礼 確かに頂きました ですから、それ以上お気になさらないで下さい 私達は、今朝現れたベヒーモスあの火竜を退治することが使命ですから」

「あの火竜を。。。人の手で倒せるモノなのでしょうか? それと天女様が使われていた並々ならぬ法力を纏わせていた杖ですが 砕けてしまったご様子」

「はい 私の拙い魔力を補ってくれていました 法力? そのように見えていたのですか?」

「私は、神通力は扱えませんが 見る力だけは、ご先祖様から受け継いでいたようです

そこで、これなのですが。。。」

懐から紫の布に包まれた30cmほどの棒状のものを取り出す

「これは?」

「この神社に伝わる宝具の1つなのですが、清明が最強の式神を使役する為の依り代と伝えられています これを杖の代わりに天女様にお持ちいただきたい きっと役に立つはずです」

そう言い 丁寧に包みを広げる 中から以前ルイに見せてもらったクナイの両刃になったような形状に中央が持ち手になっており武器というよりも

何らかの力を通すための触媒として使っていたようだ


「【独鈷杵】(どっこしょ)という法具の1つです 現在もこれから先も使いこなせる者は、現れないでしょう。。。ぜひ天女様に使って頂ければ 我が祖先、安倍晴明もお喜びになるはず」

【独鈷杵】を手に取るエヴァ 指先が触れた途端、雷が走ったような感覚に襲われる

「こ。。。これは、竜が宿っているのですね。。。樹木、生命を司る 緑色」

左手で取っ手の部分を持ち 右手で全体をなぞる

「ほぅ 十二天将で竜といえば青龍ですな 天女様との相性が良さそうに感じられます」

「では、お借りいたします この子でしたら、どれほど魔力を通しても壊れる事は、無いでしょうから 事が済み次第 お返しに上がりますので」

「返す必要などありませんが あの火竜を倒された話は聞いてみたいですな」

「はい 必ず」ニコリと笑い 最後の羊羹を口に放り込む




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― 新着の感想 ―
[気になる点] ここまで読んで陰陽師の字が前は陰陽「氏」になっていたのですが… 設定なのかと思い誤字報告出してませんでした。 修正するかの判断はお任せします。
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