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戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三


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本能寺燃ゆ!

勝手ですが、まもなく再開します



朝倉義景が去り 武田信玄が去った 本能寺 

その山門の横に急造の祠が建てられ 予め天女より入手した 数本の髪の毛が祀られ

[天女小堂]と名付けられ連日大勢の参拝者で賑わっている

実際に天女の奇跡に触れた者、その美しさに魅入られた者達が、お供えは食べ物がご利益があるという

噂を信じ 日参する者が後を立たない


「お市よ、あの天女殿の人気は、凄まじいな」信長が山門の方角を眺めながら 横に座る妹に話しかける

「誠にございますね 私もあの方の虜となってしまいました」少し頬を赤らめる お市

「人というのは、ほんの数日の邂逅で、これほどまでに人々の心を掴むものなのか?」

「あの方は、なんの見返りも求めず 民が幸せになるように導かれているように私には感じられます

 そしてこの国が安定するように武田信玄公を導かれているように。。。その無欲さと誠実さが人の心を掴むのではないでしょうか」

「わしも初めは、我が領民の為と戦ってきたつもりなんだがな 領民の為にと尾張を治め より良い暮らしをと

美濃をも治め 義昭公を将軍に据え それがいつの頃からか、自分の意に反する者共は、すべて滅ぼさなければ

ならないという強迫観念に支配されるようになった さらには、すべての権力を手に入れねば自分の存在意義が

無くなるという強迫観念にもな」

「兄上 市が兄上のお側にいた頃は、そのような気配など微塵も感じませんでしたが。。。領民にも私にも

 そして家臣にも優しい兄上でした」

「天女殿が言われたように あのマントを手に入れてから変わったのかもしれん 我が意に従わぬ朝倉を討ちに行き、それを諌めたお前の夫を裏切り者と激昂し滅ぼそうと心に誓った その為に比叡山の坊主も女子供まで

皆殺しにしてしまった 正直、自分が怖かった しかし喜びにうち震える自分も確かにいた お前の夫や、朝倉義景の頭蓋を盃にして酒を飲む自分を夢想して悦に入った事もある 自分で自分を止められなんだ 非難する家臣も

幾人も手に掛けてきた 幼い頃より可愛がってきた家康までもな。。。狂人だな」

「兄上 それも天女様が止めてくださいました 信玄公も手を差し伸べて下さいました 優しかった頃の兄上に戻られたと市には、わかっております これからは国の為、民の為に戦いましょう」

「そうだな、それで許されるとは思えんが もう天下統一を目指さなくてもよいのだな 正直ほっとしている」

そう言った兄の顔が、優しかった頃の兄に間違いなく戻ったと確信した お市

「兄上 山門がお供え物で溢れて大変な事になっています 少し手伝ってまいりますね」

「なにもお前が行かずとも」

「天女様を信じる民の顔を見るのが好きなのです」そう言うと山門に向かい駆け出す お市


『あっ 懐妊した事を伝えるのを忘れていました 後で伝えましょう きっと喜んで下さいますわ』


東の空から京を目指す 憎悪の塊と化したベヒーモスがこの世界では、ありえない速度で飛来する

それは、ベヒーモスだけの意思ではなく 新たにベヒーモスへと宿った物の意思が 自分を追い出した宿主を

滅せよと この国をあと僅かで手中に治めるはずだったという恨みを持って 新たなる宿主に行動を起こさせた

六角堂の上空で翼をゆっくりと羽ばたかせ滞空する ベヒーモスが口を大きく開き その口の前方で炎が渦巻きながら球形を形成していく さらに大きく口を開き螺旋を描くように、渦を巻きながら発射される巨大な火球が

本能寺の九つの塔の全てを焼き尽くさんと、青白い業火が広大な本能寺を舐めるように覆い尽くす

そこから北に大きく旋回しながら、己の魔力を炎へと変え 息の続く限りの業火を吐き出す

周辺の家屋もろとも二条城の本丸を飲み込み 内裏の一部を焼き払った火龍は、一息に速度を上げ 西の空に消えて行く


時間にして1分にも満たない 蹂躙であった



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