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戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三
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京都御馬揃え

晴天に恵まれました 1573年4月1日午前8時

かの源義経公が駿河の国で行ったとされる 御馬揃えが

ここ日の本の都 京都にて執り行われようとしております

その観兵式を一目見ようと京都近郊より集まった市民

その数30万人が沿道に詰めかけており、京都御馬揃えの開催を今や遅しと待ちわびております

実況は、京の街で愛され続ける瓦版職人·弥次北馬右衛門がここ本能寺前よりお送り致しております

まず簡単に会場をご紹介いたしましょう ここ本能寺を起点といたしまして

京都市中を練り歩く御馬揃え その数、増えに増え6万騎と聞き及んでおります

そこから室町通りを北上し、一条通りを曲がって入った内裏の馬場が終点です。

本来、内裏の東側の陣中は、牛車を乗り入れる許可を持たない者は、馬を含む一切の乗り物で入ることを禁じられていましたが、今日この日ばかりは許可されたようです

そして内裏の東側に幅109メートル、長さ872メートルの馬場や、正親町天皇が観覧するための豪華絢爛な御座所が造られました 

本能寺大手門がざわついて参りました バンッバンッバンッバンッバンッバンッ沢山の爆竹が鳴らされております

京都御馬揃え 最初に本能寺から出て参りましたのは、かの源頼朝より授かったという[三盛木瓜]の旗印

朝倉義景率いる 越前の騎馬隊が金糸銀糸を贅沢にあしらった幟に旗印 揃いの陣羽織を身に着け

本能寺参道を練り歩きます 注目すべきは、騎馬の面に被せられた金色の面に馬鎧まさに勇壮の一言に尽きます

事前の情報では「余は、派手な事は、あまり好みではないが 朝廷へのお披露目であれば致し方なし」

と言う、朝倉義景公の言葉でしたが 目の肥えた京の民も目を剥くほどの贅を尽くした御馬揃え

続いて姿を現しましたのが[三盛亀甲花菱]お隣近江より馳せ参じました 若き戦国武者·浅井長政の騎馬隊です

質実剛健、派手さはないが黒一色で統一され、磨きこまれた鎧兜 見るものを圧倒させる迫力を感じさせます

そしてなんと! 浅井長政本人の騎馬に並走する美しき女武者は、織田信長の妹にして浅井長政の愛妻·お市の方様

沿道より一際大きな歓声が挙がっております

そして姿を現しましたのが、この御馬揃えの実行委員 明智光秀を先頭に尾張の織田軍団が本能寺参道を練り歩きます 形容するならば派手!派手!!派手!!! 武将にも馬にも金銀赤黄色に青に緑と色彩豊か この御馬揃えの注目度

一番 沿道が更に盛り上がっております いよいよ姿を見せる 織田信長公 決して期待を裏切らないその装備は

見事な体躯の黒馬に跨り、頭には唐冠、白地の唐草模様に紅梅をあしらったものに唐綿の小袖を重ね、紅緞子ドンスに桐唐草の肩衣と袴の姿 ヤクのしっぽの腰蓑に、金銀飾りの太刀・脇差を差し、手には白革に桐の紋の入った手袋を着用し梅の生花をあちらこちらにあしらっております 京のご婦人の黄色い声援を一身に受ける織田信長 

絶大な人気を誇ります 

事前の情報によりますと「この4国が一丸となり、日の本の和平に尽くす」あまりにもらしくない言葉を頂いております

そして最後は、甲斐の虎 日の本最強の騎馬軍団 京の都に初見参となります 武田信玄公が率います

ついに京の町に武田菱の旗印のお目見えです 風林火山の幟が風になびく

赤備えの山県昌景を先頭に馬場信春、諏訪勝頼、真田幸隆と続き あまりの迫力に京の民も息を呑んで見守っております 一際大柄な若武者·本多忠勝に続き姿を現す武田信玄公 その横を並走する巫女姿の女性

この方が、京の街でも噂になっております天女様ということですが 噂に違わずあまりにも美しく、あまりに可憐

沿道の民衆に手を降っております あまりの美しさにため息に包まれる民衆

事前にお言葉を頂いております「都の名物料理はなんでしょう?」なるほど冗談の心得もお持ちということですね


「エヴァ アランの治療に専念するんじゃなかったのか?」

「このような楽しそうな催しに参加しないわけには参りませんでしょう アランは、ブルートが見ていますから大丈夫です

それに天皇や将軍にも会ってみたかったですから」

沿道に手を振りながら、子供のように笑う エヴァ


天女を間近に見ようと押し合う観衆 その一角が人々の圧力に負け参道に崩れそうになるのを ルイが、右の手の平をカザし風魔法で優しく押し返す

沿道へと誘導する 兵の目から逃れた幼い少女が参道に1人ポツリッと取り残され右手に握りしめた一輪の黄色い花を、エヴァに差し出す 母親と思われる女性が幼女を連れ戻そうと駆け寄るのを目で制し 

馬から降り立ち幼女の視線まで身を屈め 花を受け取る

「ありがとう とてもきれいな花を あなたのお名前は?」

幼女はニコニコとしながら、両手を使い何かを伝える仕草を懸命に続ける

「すいません天女様 この娘は、生まれつき聴くことも、話すことも出来ないのです」

両手を広げ エヴァの目を真っ直ぐに見つめる幼女

彼女を抱き上げ 呪文を言の葉に乗せ、幼女へと吹き掛ける

「私は、天女です」 幼女の口が動く「て。ん。。。にょ。。」

一瞬唖然とする 母親と観客たち ざわざわとざわめきが伝播し やがて徐々に歓声へと変わっていく













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