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戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三
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策略

薄闇の迫る 琵琶湖西岸

小谷城の監視についていた響談の新頭領 新井一慶が索敵の

足を伸ばし 小谷城から湖岸沿いに南下していた

生い茂るブナの原生林に目を遣り 人が足を踏み入れるとは

思えない一帯で 人が通った足跡 枝が折れ頻繁に往来があった

形跡が湖岸へと続いている

『我らのような忍びの者が身を隠すには、適した場所か。。。』

細心の注意を払い、残った足跡の上を慎重に歩く


ブナの林を抜け 角の取れた石が敷き詰められた湖岸を見渡す

陽の落ちかけた湖岸にぼろを纏った人影を確認する

『俺の勘は、よく当たる。。。さて敵なのか? ただの宿無しか? 1人なのか? まだ潜んでいるのか?』

袖の中でクナイを握りしめ 様子を窺おうと姿勢を低くしようと腰を落とそうとしたとき 耳元に声が響く

「おい 聞きたいことがある」

ばっと頭を上げ 辺りを窺う ぼろを纏った人影までは20メートル以上離れているが、他に人の気配は無い

「ここから北に5キロ程の所に大勢の人の気配がするが、なにかあるのか?」また耳元で声が響く 脳に直接なのか?

そう言いながら、こちらにゆっくりと顔を向ける 

『男か。。。一体こいつは?』背を向け逃げ出したい衝動を抑え

足を踏み出す

「おらは、近くの村の者だが」

「芝居はいい 知っていることを話せ」男の目に射抜かれる

「お前は、誰なのだ? 武田の手の者か?」

「武田? それが誰か知らぬが 俺はこの湖底に封印した化け物を封じ込めているだけだ 大勢の人の動きがこいつを刺激するので、その原因を知りたいだけだ」

「化け物? 封印? お主は、陰陽師なのか?」

「陰陽氏。。。この国にも化け物を封印出来るものが居るのか?」

「我らの先祖の代の話だ 今では廃れてしまったようだ

 化け物自体が、居なくなったのでな」

「ほ〜化け物を根絶やしにしたということか で? なにが起きている?」

逃げることも、語らぬことも出来ぬと悟った新井一慶

「ここより北にある小谷城に3万の兵が集っている

 東にいる織田勢5万と近々合戦となるだろう」

「8万か。。。不味いな ここから離れた土地でやってくれ」

「そんな事を決めれるほど 偉く見えるか?」

「見えんな 一応言ってみただけだ」

初めて男の端正な顔が崩れ 笑みをつくる

「悪いが、先を急ぐ この服をお前にやる そのボロでは、人前に出れぬだろう」そう言うと、来ていた百性の服を脱ぎ 忍者装束に着替える

「ありがとう 貰っておく それと俺がもし、こいつを抑えておく事が出来なくなったら 出来るだけ遠くに逃げる事を勧める」

「そいつは、それほどの化け物なのか?」

「そうだな 逃げることも容易ではないな」


月明かりだけを頼りに大垣城へと急ぐ 新井一慶

路程の地蔵の首に白い布が巻かれている事に気付き足を止める

これは、響談の仲間が助けを求めているときの合図である

辺りを見廻し 深田の淵に人の気配を感じる

「誰かいるのか?」

「ここ」力のない声が返ってくる

急いで深田に飛び込み 声の正体を確かめる

「お前は、お雪ではないか 沓掛城下で殺されたものだと」

「皆 本多忠勝に殺されたわ 私だけ捕らえられ 家康の葬儀で手薄になった隙に逃げ出したのだけど。。。足が」

見ると右足の脛に布が巻かれ、ひどく出血しているのか赤く染まっている

「そうか大垣城まで連れて行ってやる 立てるか?」

「それよりも先にお城に伝えて、鳴海城に武田、徳川軍が集まり5日後に大垣城に向けて出陣すると その数5万 急いで伝えて

その後に迎えに来てくれたらいいわ」

「なに! それは間違いないのだな!?」

「間違いないわ 真田幸隆と酒井忠次が話しているのを聞いたから」

「それは、一刻も早く伝えねばならぬが 朝まで待てるか?」

「大丈夫 それより早く行って」







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