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戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三
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本多忠勝

三方ヶ原から浜松城に30余名の鎧武者が駆ける

騎乗した者3名 残りは徒歩であるが驚くほど早く健脚である

斥候が戻り、戦場の様子を告げる

「本陣は全滅、夏目吉信殿、鈴木久三郎殿、本多忠真殿 討ち死 甘利信忠の騎馬隊およそ50騎 

 こちらに迫っております 間もなく追いつかれるかと。。。その後 山県昌景の大軍が続いてきます」

「これほど早くか!? 叔父上 必ずや仇を。。。おのれ武田め!! 仁成瀬、日下部、菊丸 殿と城へと急げ

 残りはここで甘利を迎え撃つ 相手は騎馬隊だ、そこの林まで誘い込むぞ」

「忠勝 城の門は閉めずに待っているぞ!」 

「殿 お急ぎ下さい すぐに追いつきますゆえ」馬から降り、日下部に手綱を渡す


「弓を持つものは、木に登れ! 木に縄を張って馬の足を止めるぞ」街道を封鎖するように縄を張り

樹上に弓兵10人 20余名の忠勝の精鋭部隊が槍を持って街道を封鎖する。

蹄の音が近づいてくる 赤備えの甘利信忠を先頭にした騎馬隊50騎 

「これは甘利殿 お久しぶりにございます」3年前の駿河侵攻で2人は面識があった

武田徳川の連合で今川北条と闘い 徳川は駿河、浜松城を手に入れた

その後 武田、徳川間でいざこざはあったものの、当の2人は戦友として認め合っていた

「忠勝殿か 叔父上の忠真殿は、見事な最後でござった すでに勝敗は決している、そこを退いてくれることは、叶わぬか?」

「これは異なことを、叔父上も拙者も徳川が負けたとは思ってはござらん ここを通りたくば この首を取るよりありませぬ」そう言い“鹿角の兜”を叩き 通常の槍より、はるかに長く重い“蜻蛉切”を構える

「しからば、押して通る!!」馬から降り 名刀“峰光”を抜く

「殿にすぐに追いつくと約束しておりますゆえ」一息に間合いを詰め 中段に構えた甘利信忠の刀を払い上げ

石付きで胴鎧を叩き割り、3メートルも吹き飛ばす 6メートルの“蜻蛉切”を自在に操る姿は、まさに鬼神

味方には勇気を与え 敵に恐怖を植え付けるに十分な武勇であった 甘利信忠の喉元に穂先を突きつけ横に払う

せめて痛みを感じぬよう そういった心情が窺える 一瞬の勝負であった

忠勝の形相が鬼のそれへと変わり 黒甲冑の鬼神が赤備えの騎馬隊に切り込んでいく

樹上から矢が降りそそぎ 馬上で防戦する騎馬隊 数の利は、あるもののそれほど広くはない街道では

全員が通常より長い槍を持つ忠勝軍に対し反攻に出られず 徐々に数を減らしていく

「退却!!!!」 その声に残った20騎ほどが馬首を返し 街道を外れ散り散りに逃げていく

「よし! 馬を奪え!! 殿を追うぞ!!!」

逃げ遅れた数名にとどめを刺し 浜松城に向けて駆ける

忠勝軍の死傷者は無し 「退却!!!!」と叫んだのも忠勝の兵である

武力でも知力でも1枚も2枚も忠勝が上だった。


浜松城まで、あと数百メートルというところで無事に追いつく

薄闇に包まれ 篝火が焚かれ始めた城は、どこか儚さが漂っている

「殿 ご無事で何より」

「忠勝 お前は約束を違えたことはないのう 誠にワシには過ぎた家臣じゃ」

「その言葉、恐悦至極に御座います 山県昌景が迫っております 急ぎ城へ」

「そうじゃな 先にも申したが大手門は開け放しておけ 篝火をあるだけ焚かせるのじゃ 

 思慮深い 山県昌景の事じゃ 攻め込むのに戸惑うじゃろう これぞ空城の計じゃ ハッハッハ」

高らかに笑う家康 内心ではヤケクソであった 












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