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戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三
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制圧2

「ほぅ お主が、傾奇者と噂の前田慶次郎か」

前田利家の甥で、本多忠勝にも劣らぬ体躰を誇る 前田慶次郎

「慶次郎か 一騎打ちは止めておけ、悔しいがこの男 人の枠の外の生き物のようじゃ

理屈の通らぬ強さじゃ わしを置いて逃げるがよい」腰から小太刀を抜く 前田利家

「叔父上 拙者にも昔同じ事を言われましたな 人の枠の外の強さだと あれから更に強くなっております

 負ける道理がありませぬな」楽しそうに笑う 慶次郎

「すまぬが時間がないのでな、まとめて」忠勝が言い終わる前に 地面の土を蹴り上げ 

一息に間合いを詰めながら 左手に持った短槍を横に払い 同時に右手の太刀を上段から振り落とす

それを後ろに飛び躱すと 【指弾】で小石を飛ばす

額を狙った飛礫を太刀の鍔で受ける 慶次郎

「驚いた! 見えていたのか!! 覚えたばかりの技だが、防がれたのは、初めてだ」こちらも楽しそうに笑う

「人外だと言ったろ 見えるさ!」得意気に胸を張る 慶次郎

『本当は、見えていないけどな 嫌な予感に頭を守っただけ。。。次が来たら 防げる気がしないな 化け物め』

鍔の壊れた太刀を捨て 胸元から吹き矢を取り出し 横に走りながら吹くやいなや叫ぶ 「今だ!!!」

吹き矢を穂先で叩き落とした忠勝の足元に 前田慶次郎の背後から投じられた煙玉が4つ転がる 立ち昇る煙を割いて 慶次郎の短槍が飛んでくる

それを額に触れる寸前で左手で掴み止め 気配を頼りに投げ返す 「うっ!」

煙から飛び出し 声のした方を見る 肩口に短槍の刺さった前田利家を慶次郎が担いで

燃え盛る二の丸へと飛び込み逃げていく 追う態勢になる忠勝だが思い留まる

『かすり傷も火傷も負うわけにいかぬ 天女様に心配をかける故 この業火の中 無傷では助かるまい』


大半の兵たちが武器を捨て 投降していく織田勢

武田軍に制圧された中庭を横切り 本丸へと向かおうと気配察知を使うが 投降した織田勢の人の流れが

大手門、搦手門へと向かい 本丸方面には疎らな気配しか見当たらない

北東に意識を向けると 密集した気配を察知した 「向こうか。。。蔵があるようだな」

逃げ落ちていく人の群れを風のようにすり抜け 北東を目指す


焼け落ちた建物に囲まれ 火の手を逃れた2つの蔵 手前の大きな座敷蔵の分厚い扉を蹴り上げる

蝶番が捻れ扉が歪む 両手に渾身コンシンの力を込め重い扉を押し倒す ドスンッと重い音が響く

槍を構えた兵たちが忠勝に穂先を向け構えている その奥を伺うと 50人ほどが火の手を逃れ 

ここに詰めていたようだ 女、子供の姿も伺える

「我は本多忠勝 向かってくる者は容赦なく切り捨てる 武器を捨て投降する者の命は保証しよう

 すでにほとんどの者が投降している ここで抗ったところで命を捨てるだけだ」

ソレガシは、佐久間信盛だ その言葉 誠であろうな ここは、女、子供が大勢居る

武器を捨てるので、この者らの命は保証してくれるのだな」

「この本多忠勝 嘘偽りは申しませぬ 武器を捨てられましたら 搦手門まで誘導いたします」

「わかった 皆のもの槍、刀を捨てよ」 そう言うと 佐久間信盛が忠勝の元へと歩み寄る

「本多殿 家康殿の事は、誠に残念であった この戦 我らに義は無い 皆の事は頼む この首 跳ねるが良い」

「佐久間殿 拙者が望むのは、織田信長の首ただ一つ お命は大切になされよ」

後のことは頼むと 配下の者に搦手門まで誘導させ 残った米蔵へと向かう


米蔵の前で仁王立ちで立ちはだかる羽柴秀長 ゆっくりと近づいていく本多忠勝

槍の届く距離で歩みを止める 

煙を多く吸ったせいか満身創痍に見える羽柴秀長が一歩間合いを詰め 槍を扱き、忠勝の胸へと槍を滑らせる

それを右手一本で払い上げ 左手で胴金を掴み強く引く

堪らず前へと転がる 羽柴秀長

「中に居るのは、羽柴秀吉ですな?」 力なく 首を横に振る 秀長

米蔵の扉がゆっくりと開き 顔を出す 羽柴秀吉








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