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戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三
394/520

矢印 2

地下へと続く階段を1段また1段と降りていくと、数人の男たちの下卑た笑い声が聞こえる


「あのババァ、カバンだけは豪華だが、金目の物なんか何にも入っちゃいないぜ! 見ろよ 大事そうに布なんかに包んでいやがるから、金かと思えば手紙だとよ!!」

その手紙を取り出し、握り潰そうとした男の腕が“バキッバキッ”と音を立てて握り潰される


「なんだ!お前は!!」 「どこから入って来やがった!!」 「ここが、何処だか分かってのるか!?」 「生きて帰れると思うなよ!!」お決まりのセリフを一斉に叫ぶ、チンピラたち

その中の2mを超えていそうな大男に、右手をゴボウのように潰された男を投げつける 忠勝


それを、丸太のように太い腕で軽々と弾き返す 大男


「お前たちは、何の罪もない老婆から物を盗んだ上に、怪我をさせても笑っていられる 外道ということで間違いないな?」


「ここに居る5人は元C級冒険者で、この俺様は元B級冒険者だと知らずにノコノコと乗り込んできて偉そうな口を利きやがって、いまさら謝っても許さねえからな!!」

なんの武器も持たずに乗り込んできた忠勝を、6人の元冒険者たちが武器を手に囲む


「リーダー!あの娘は高く売れそうですぜ!!傷つけないようにとっ捕まえやしょう!!」

お約束のセリフを、両手に短刀を持った小男が吐いた瞬間 忠勝の指から放たれた小石が小男の額にめり込み 泡を吹いて倒れ込む


「貴様!何をしやがった!?」


「ん? ただの“指弾”だが?こうやって小石を指で弾いただけだ」 “ビシッ!”

甲高い音を立てて、大男の持つ鋼鉄製の盾に小石がめり込む


「父様、残りの5人は、イノリに任せてください。新しいスキルを試したいです!」

両手の指を“ポキポキッ”と鳴らす イノリ


「まぁ 大丈夫だとは思うが、危ないと思ったら手を出すぞ……」

忠勝が言い終わる前に、姿勢を低くして元冒険者へと向かっていく イノリ


「お嬢ちゃん!お前は大事な商品なんだからおとなしくしていろ!」

イノリを捕まえようと両手を広げ待ち構えていた男の顎が、大きく跳ね上がり、白目を剥きながら仰向けに倒れる

占い師のジョブで得たスキルの矢印に従い、さらに姿勢を低くしたイノリの頭の上を棍棒が掠め、床を滑るように右側から移動したイノリが、棍棒を戻し切れていない男の横腹に左肘を叩き込む “グシャッ!”身体を“く”の字に折り曲げ、顔面から崩れ落ちる 男


一歩身体を引いたイノリの鼻先を、鞭の先端ポッパーが音を立てて通り過ぎ 背面の壁を蹴り

反動をつけたイノリが、右にカーブを描く矢印通りに右の回し蹴りで、鞭使いの男の延髄を切る!意識まで絶たれた男の身体を盾にして、レイピアを持った男に突っ込んでいく

レイピアの高速の突きが、盾にされた男の身体を斬り刻み 支えを失った血まみれの身体が床に落ちると同時に、レイピアの男の頭上をイノリの踵が襲いかかる “ドゴッ!”鼻の穴から盛大に血を噴き出し、立ったまま気を失うレイピアの男


ここまでわずか5秒 


まったく息を切らすこともなく、大男の前に立ったイノリが、右手の人差し指を“クイックイッ”

と曲げ、掛かってこいと挑発する


「お前はいったいなんなんだ!? 挽き肉にしてやる!!」盾を押し出しながら、イノリへと

突進してくる大男

その時、イノリの目には、矢印がはっきりと見えていた 大男の盾を駆け上がるように上へと向かい 大男の頭上で一回転をし頭頂部へと続く矢印

それに従い、突進してくる盾に右脚で衝撃を吸収しながら上へと飛び、盾の上辺に手を掛けた反動で回転をすると、肩車のように大男の肩に乗り、両足で頸部を締めながら頭頂部に両肘を叩き込む “グシャッ!!”


「父様!終わりました!占い師のスキル凄いです!!!!!矢印が出て、その通りにズッキューンといくとドッカーーンです!」

イノリが満面の笑顔で倒れた男たちを指差す


「ああ……うん………そうみたいね……」



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